俳優やくしや)” の例文
仕打は蟷螂かまきりのやうな顔のつぽけな俳優やくしやだなと思つた。俳優やくしやはまた蟋蟀こほろぎのやうな色の黒い仕打だなと思つた。仕打はとうと切り出した。
パンテオン附近とちがつて学者や学生風の人間は少しも見当らず、画家(ことに漫画家)や俳優やくしやや諸種の芸人が多く住んで居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
夜店よみせのさかりにては、屈竟くつきやうわかものが、お祭騷まつりさわぎにてる。土地とち俳優やくしや白粉おしろいかほにてことあり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
持病といふのは夫れかと切込まれて、まあ其樣な處でござんせう、お醫者樣でも草津の湯でもと薄淋しく笑つて居るに、御本尊を拜みたいな俳優やくしやで行つたら誰れの處だといへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
狂言きやうげんのあらましを面白おもしろさうに話して、だん/\取入とりいり、俳優やくしや表方おもてかたの気にも入り、見やう聞真似きゝまね発句ほつく狂歌きやうかなど口早くちはや即興そくきようにものするに、茶屋ちやや若者わかいものにはめづらしいやつと、五代目白猿はくゑん贔屓ひいきにされ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「そりや女将さん、仮令たとへ芸妓だからつて可哀さうですよ、当時流行の花吉でせう、それに菊三郎と云ふ花形俳優やくしやが有るんですもの、松島さん見たいな頓栗眼どんぐりまなこ酒喰さけぐらひは、私にしてもいやでさアね」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なしければこゝろあるひとみな爪彈つまはじきしてわらふ者多く此妻の渾名あだな一ツ印籠いんろうのおつねと云て世間せけんに誰知らぬ者も無りしとかやれば女の子は父親ちゝおやより母の教方をしへかたにて志操みさをうつくしかるべきにかゝはゝゆゑ幼少えうせうよりそだちもいやしく風俗ふうぞく芝居しばゐ俳優やくしや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さうですとも。僕が俳優やくしやになつた動機は、唯女に惚れて貰ひたかつたからです。その外の事は、みんな後から附けた理窟でさ。」
「ではうしてれ給へ。ゆうべ隣のKがうしたのか帰つて来ない。知つてる独逸ドイツ人の紹介で俳優やくしやなんかの来る宴会へ出掛けたのだが。もつと昨日きのふ銭が届いたからね。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
持病といふのはそれかと切込まれて、まあそんな処でござんせう、お医者様でも草津の湯でもと薄淋うすさびしく笑つてゐるに、御本尊を拝みたいな俳優やくしやで行つたら誰れの処だといへば
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
贅沢ぜいたくはして見せる、其れに貴郎、やもめと云ふ所を見込んでネ、丁度俳優やくしやとドウとかで、離縁されてた大洞の妹を山木さんにくつ付けたんですよ、ほんたうにまア、ヒドいぢやありませんか、其れが
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
玉のかひなは真の玉よりもよく、雪のはだへは雨の結晶せるものよりもよく、太液たいえき芙蓉ふようかんばせは、不忍しのばずはすよりもさらし、これをしからずと人に語るは、俳優やくしやに似たがる若旦那と、宗教界の偽善者のみなり。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
原敬氏なぞも自分が評判を取らうとしないで、同じ閣員の花形俳優やくしやを引立てるやうにしたら、内閣も割合に無事に持続ける事が出来よう。
持病ぢびやうといふのはれかと切込きりこまれて、まあ其樣そんところでござんせう、お醫者樣ゐしやさまでも草津くさつでもと薄淋うすさびしくわらつてるに、御本尊ごほんぞんおがみたいな俳優やくしやつたられのところだといへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
芝居まへのキヤツフエ・ド・ラ・レジヤンスは俳優やくしやと芝居がへりの客とで一ぱいであつた。ムネ・シユリイはその左に梅原を右に僕を坐らせた。前には三人の女、僕の隣にはドリヷルが坐つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
好き嫌ひはその人の自由だから、氏が芸者と俳優やくしやとを好かなかつたからといつて、別段結構だとも、不都合だとも言はうとするのではない。
成程聞いてみると、結構な訳だが、唯それだけの事なら、いつそ英吉利の俳優やくしやと同じやうに、自分とこの雛児を盗み出したが、一番手つ取早い。
同じ俳優やくしやではあるが訥子の舌は藤十郎のやうに賢くない、何処の水であらうと平気で咽喉を鳴らしながら飲む事が出来る。
先日こなひだ亡くなつた喜劇俳優やくしや渋谷天外は、何処へくのにも、紫縮緬むらさきちりめんの小さな包みを懐中ふところにねぢ込むで置くのを忘れなかつた。
「ムツ五郎ですか。」主事は空つぽの頭を仔細らしくかしげた。「それは三津五郎のなまりでせう、三津五郎なら居ますよ。舞踊をどりの達者な俳優やくしやでしてね。」
とりわけ脚本が書卸かきおろものの場合になると、あらかじめ役どころの見当がつかないだけに、俳優やくしやは物言ひばかり多くて、なかなか役を引請ひきうけようと言はない。
夏目漱石は、色々なものを嫌つたが、そのなかで芸者と俳優やくしやとは一番嫌ひなもののうちかずへてゐたらしかつた。
延若はかう言つて、薬の効力ききめでも見るやうに、じつとこのぼけやつし専門の俳優やくしやの顔に見入つた。
日本では俳優やくしや興行元しうちも成るべく脚本に金を払ふまいとするから、脚本家として生活くらしを立てるのはなかなかむつかしいが、西洋では脚本を一つ書いて、それが当つたとなると