便所べんじよ)” の例文
病症びやうしやう脊髓腦膜炎せきずゐなうまくえんとかいふ劇症げきしやうで、二三にち風邪かぜ氣味きみてゐたが、便所べんじよつたかへりに、あらはうとして、柄杓ひしやくつたまゝ卒倒そつたうしたなり
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まくにてかへらんとせしに守る者木戸をいださず、便所べんじよは寺のうしろにあり、空腹くうふくならば弁当べんたうかひ玉へ、取次とりつぎ申さんといふ。我のみにあらず、人も又いださず。
とこよろひかざつてあつて、便所べんじよとき晃々ぴか/\ひかつた……わツて、つたのをおぼえてないかい。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りの玄竹げんちく相手あひてに、けるのをわすれてゐた但馬守たじまのかみは、いくんでもはぬさけに、便所べんじよへばかりつてゐたが、座敷ざしきもどたびに、かほいろあをみがしてくるのを
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
梯子段はしごだんあがると、廊下らうか片側かたがはかほあらなが便所べんじよ杉戸すぎどがあり、片側かたがはには三でふと六でふ座敷ざしき三間みまほど、いづれもきやくがあるらしくつたふすまそとにスリツパがてゝある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
畜生ちくしやう! やい毆殺ぶちころしてしまへ! ころしてもるものか、便所べんじよにでも敲込たゝきこめ!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「こんで同胞きやうでえのえゝはなしくなわるかねえもんだよ、有繋まさか自分じぶんばかしよくつてほか同胞きやうでえにやかまあねえつちいものもねえかんな」といつてには便所べんじよつてそれからふたゝあががまちこしおろした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まくにてかへらんとせしに守る者木戸をいださず、便所べんじよは寺のうしろにあり、空腹くうふくならば弁当べんたうかひ玉へ、取次とりつぎ申さんといふ。我のみにあらず、人も又いださず。
うらには敷居しきゐくさつた物置ものおきからまゝがらんとつてゐるうしろに、となり竹藪たけやぶ便所べんじよ出入ではひりにのぞまれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ玄關げんくわんから下駄げたげてて、すぐにはりた。えんさき便所べんじよまがつてしてゐるので、いとゞせま崖下がけしたが、うらける半間はんげんほどところ猶更なほさら狹苦せまくるしくなつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)