おおせ)” の例文
槇君と私とは別に天幕を張る積りであったが、殿下のおおせの儘に同じ天幕に泊めて戴くことになったのは誠に思い設けぬ光栄であった。
「はッ、おおせ一応御道理ごもっとも御言おことばを返しましては恐多くござりまするが、あれが死にましたは何も金次の知ったことではござりませぬ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうぞ今お二人がおおせられたお心持で行って下さい。後の事はどうぞ決して気に懸けて下さいますな。私は小児を大切に育てます。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
柴田殿のおおせ御尤のようではあるが、信孝殿御利発とは申せ、天下をお嗣参らせる事は如何いかがであろう。信長公の嫡孫三法師殿のおわしますからには、この君を
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
晏子こたえて「おおせの通りで御座ります。近来はようの価がたかく、の価がやすくなりましたように存じまする」と申上げた。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
兄九郎兵衛一友かずともは景一が嫡子にして、父につきて豊前ぶぜんへ参り、慶長十七年三斎公に召しいだされ、御次勤おんつぎづとめおおせつけられ、後病気により外様勤とざまづとめと相成り候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それがわからぬ者は国賊だ、天子様のおおせにそむく不忠者だ、私たちはその不忠者を討つためにたたかっているんだ。
梟谷物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「はいはい早速おおせのままに、迎えの駕籠を差出しました。もう押付おっつけお春どのもお見えになるところでございます」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
おおせのごとく近来和歌は一向にふる不申もうさず候。正直に申し候えば『万葉』以来、実朝さねとも以来、一向に振い不申候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
特別の恩命をもって洋行をおおせつけられた二年の倍を義務年限とすると此四月で丁度ちょうど年期はあける訳になる。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
修理主人真田信濃守応接所警衛おおせ付けられ、修理儀も人数に加わり出張致しおり候に付き、通弁のため漢文にてしたため置き候書翰草稿に添刪てんさんを乞い、その書翰に曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
夫人がかたわらから「それでも狆はこんなに貌のしゃくんだ方が好いのだと申ます」トおっしゃると、昇も「成程夫人おくさまおおせの通り狆はこんなに貌のしゃくんだ方が好いのだと申ます」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
おおせの趣は承り候、さりながら敵地に入り、敵を目近に置きながら留まるべくも候わねば、明日は我が人数を先へ通し候べし、御養生候て後より御出候え、と穏やかな挨拶だ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ピシアスは、それではおおせのままに殺しておもらいしましょうと言いました。しかし、そのまえに一つお願があります、私は希臘ギリシヤに土地を持っており、身うちのものもおります。
デイモンとピシアス (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
是れ女子第一のつとめ也。夫の教訓有らば其おおせそむくべからず。疑敷うたがわしきことは夫に問ふて其下知げぢに随ふべし。夫問事とうことあらば正しく答べし。其返答おろそかなるは無礼也。夫若し腹立はらだちいかるときは恐れてしたがうべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
良精君近頃健康不宜よろしからず候こと承候へども、おおせのとほり存外険悪に及ばずして長生せられ候事も可有之これあるべしと頼み居候。又々牛の舌御恵贈の由、不堪感謝かんしゃにたえず候。翻訳材料となるべき書籍二三、別紙にしたたあげ候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
おおせだぞ。遠慮なく這って出て
斯う云うおおせでございました
錦木 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
加賀国富樫とがしと言う所も近くなり、富樫のすけと申すは当国の大名なり、鎌倉殿どのよりおおせこうむらねども、内々用心して判官殿ほうがんどの待奉まちたてまつるとぞ聞えける。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大殿おおとのより歌絵うたえとおぼしく書たる絵をこれ歌によみなしてたてまつれとおおせありければ、屋のつまにおみなをとこに逢ひたる前に梅花風に従ひて男の直衣のうしの上に散りかかりたるに
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
一望して原だよと澄ましていればそれまでの事で、おおせのごとくたいらにも見えるが、いざ時間に制限を切って、突切つっきって見ろと云われると、恐ろしく凸凹でこぼこができてくる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寛永元年五月安南船あんなんせん長崎に到着候節、当時松向寺殿は御薙髪ごていはつ遊ばされそろてより三年目なりしが、御茶事ちゃじ御用おんもちいなされそろ珍らしき品買求め候様おおせ含められ、相役あいやくと両人にて、長崎へ出向き候。
これはおおせとも覚えませぬ。一晩御帰邸相成りませぬで一統の者の心痛いかばかり、まずは御安泰にて恐悦に存じまする。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ触れろ触れろとおおせがあっても、触れる見当けんとうがつかなければ、作家は途方に暮れます。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我等この度おおせを受けたるは茶事に御用に立つべき珍らしき品を求むるほか他事なし、これが主命なれば、身命にけても果たさでは相成らず、貴殿が香木に大金を出す事不相応ふそうおうなりと思され候は
おおせごとく近来和歌は一向に振ひ不申もうさず候。正直に申し候へば万葉以来実朝さねとも以来一向に振ひ不申候。実朝といふ人は三十にも足らで、いざこれからといふ処にてあへなき最期を遂げられ誠に残念致し候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
お夜食が済むと、奥方のおおせに因り、お嬢さんのお伴をして、薬師の縁日へ出たのであった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寒さも忘れるし、娘の顔も遠慮なく見るし、もう思いおく事はないと考えていると、御休みなさいましと云うので、旅のつかれもある事だから、おおせに従って、ごろりと横になると
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寛永元年五月安南船あんなんせん長崎に到着候時、三斎公は御薙髪ごていはつ遊ばされ候てより三年目なりしが、御茶事おんちゃじ御用おんもちいなされ候珍らしき品買い求め候様おおせ含められ、相役あいやく横田清兵衛と両人にて、長崎へ出向き候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
秋葉の旦那だんな、つむじが曲つた。颶風はやての如く、御坊ごぼうの羽黒と気脈を通じて、またゝくの今度のもよおし拙道せつどうは即ちおおせをうけて、都鳥の使者が浜松の本陣へ着いたところを、風呂にも入れず、縁側から引攫ひっさらつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翌朝五百は貞固をうて懇談した。大要はこうである。昨日さくじつおおせは尤至極である。自分は同意せずにはいられない。これまでの行掛ゆきがかりを思えば、優善にこの上どうして罪をあがなわせようという道はない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
図書 おおせの通り、真綿よりも。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おおせに従うと、口のまわりが……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けだし無理ならぬおおせなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)