あず)” の例文
旧字:
わたくしはジャズ模倣の踊をする踊子の楽屋で、三社祭さんじゃまつりの強飯の馳走にあずかろうとは、全くその時まで夢にも予想していなかったのだ。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
燃焼のような物化学的変化に際してそれにあずかる物質の重さは全体としてはその前後において少しも変らないとうことが確かめられた点です。
ラヴォアジエ (新字新仮名) / 石原純(著)
血が血だけに胡風こふうになじむことも速く、相当の才物でもあり、常に且鞮侯そていこう単于ぜんう帷幄いあくに参じてすべての画策にあずかっていた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
れから前にもう通り、江戸に来て徳川の政府に雇われたからといった所が、れはわば筆執る飜訳ほんやくの職人で、政治にあずかろうけもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今やこの開校の期にい、親しくその式にあずかる。故にいささか余が心情と冀望とを述べ、以てこの開校を祝するのことばと為す。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
その代りこの趣は彼ら作家のいまだかつて知らざる興味に属している。また彼らのけっしてあずからざる境地に存している。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男性はその凡ての機関の恰好な使用者であるけれども、女性がそれにあずかるためには、或る程度まで男性化するにあらざれば与かることが出来ない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
借金を返すことのできない貧乏人は、金持の奴隷となって、毎年の土地の分配にもあずからない。そして犬と一緒になって主人の意のままに働いている。
奴隷根性論 (新字新仮名) / 大杉栄(著)
それから又一部の霊媒達は、その性質が善良で慈悲深い為めに、霊界の選抜にあずかる彼等は多くの場合において、物理的心霊現象の用具とはなり得ない。
その主たる問題はその心理的効果が漸次美はしく権威ある恋愛生活を創造するにあずかつて力あるといふ点である。
恋愛と道徳 (新字旧仮名) / エレン・ケイ(著)
が、実際に文庫の編輯にあずかっていたのは楽屋がくや小説の「紅子戯語こうしけご」に現れる眉山びざんさざなみ、思案、紅葉、つきまどか香夢楼緑かむろみどり、及び春亭九華しゅんていきゅうかの八名であった。
百千万の貧民孤児は彼の施餓鬼にあずかりしならん、しかれども「ヤコブの井戸の清水を飲むものはまた渇かん」
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
すべて父母の随意に出るもので子女はその相談にもあずかることが出来ない。また其事それくちばしれる権利もない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
餓死にすらあずかる六百万の婦人、閣下、これ以上の事がありませうか? さうです、人生のあらゆる道程にあつて最高な頭脳の労働から鉱山或は鉄道の労働
結婚と恋愛 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
それには月々の勘定をきちんとすると云う事実があずかって力あるのは、ことわるまでもない。「岡田さんを御覧なさい」と云うことばが、屡々しばしばお上さんの口から出る。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
伝わっているようにもうけたまわるのはかたじけないことで、少なくとも是は一国の古事を学ばんとする者に、或る方法を設けてあずかり知らしめておくべきとうとい事実であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伽話おとぎばなしにある「舌切雀したきりすずめ」の葛籠つづらにいかなるものが潜在してあるかは、もらう人のあずかるところでないようなものの、その根本をただせばもらう人が入れ込むのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「幸子を姉さんのような不注意者にあずけて置いたということが、こんな罪悪を造ってしまったのだ。」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
夫人はここに居るかどうか、教えてくれないですか? 夫人は僕を陥れることにあずったのですか?
国体も仏教の擁護によりて鞏固きょうこなりき、忠孝の思想は仏教の涵養によりて堅実となれり、仏教は文学を生み、美術を生み、その他の学術の進歩にあずかりて甚だ力ありきとは
仏教史家に一言す (新字旧仮名) / 津田左右吉小竹主(著)
けだし松陰をして天下に紹介したるもの、その革命的気熖を煽揚せしめたるもの、即ち松陰をして松陰たらしめたるもの、彼が雄文勁筆の力あずかりて多きにおらずんばあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
爾して謡う声も鶯喉おうこうに珠を転すとやら東洋の詩人なら評する程だ、満堂又も割れる許りの喝采が起った、今度の喝采は全く怪美人の芸を褒めるので、主人男爵はあずからぬのだ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
また仏国のくんに土国人の宗教にあずかるの権利ありとは、土国の君もたえて想像せざりしところなり。わが先官「レ、マルキス、デ、ボンネ」氏、このことの建言中に云えることあり。
そこで、われこそは幸運にあずからんものと、正直なもので、数百の警官がまるで宝探しでもするように、この、金儲けになる福の神みたいな子供の行方ゆくえを眼の色を変えてさがしまわった。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
否、虚偽を以て真実をもてあそびつくすのでありますから、この人等をこそ悪魔と呼ぶべきではありますまいか。何等社会にあずかるところなくして、社会からあらゆるものを奪い取るからであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
儀十 帰りには是非寄ると約束だ、では、お振舞いにあずかろうか。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
しかしここは受の弥左衛門に扮せる松助もおおいあずかりて力あり。
おもうに、し隈公にしてわれのこれにあずかるを許さず、諸君にして余を擯斥ひんせきするあるも、余はみずから請うてこの事に従い、微力ながらも余が力を尽し
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
当時の一般読者が『あいびき』の価値をほぼ了解してツルゲーネフを知り、かつ二葉亭の訳文の妙を確認したは忍月居士こじの批評があずかっておおいに力があった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
行蔵こうぞうは我に存す、毀誉きよは他人の主張、我にあずからず我に関せずとぞんじそうろう各人かくじん御示おしめし御座ござそうろうとも毛頭もうとう異存いぞん無之これなくそうろうおん差越之さしこしの御草稿ごそうこう拝受はいじゅいたしたく御許容ごきょよう可被下くださるべく候也そうろう
この四人の中でもやはり一番早くその官に就いた者にその主権があるので、他の三人はただ相談にあずかるだけでもっぱらその相談を決定するのは先任の総理大臣である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
はたまた会社員でも官吏かんりでも、月給を得んがために、礼をもらわんがために、ボーナスにあずからんがために、その他なんらかのためにする手段として職務に従事することは
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
罪人のあの柔和なレシグネーションの中に、昂然こうぜんとして何物にも屈しまいとする強さを私は明かに見て取ることが出来る。神の信仰とは強者のみがあずかり得る貴族の団欒だんらんだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
余ノコレニ銘スルニ非ラザレバ誰カあずカランヤ。元治甲子ノ歳余江戸ヨリ郷里ニ帰省ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは、もちろん彼の生まれつきのすぐれた性質によるのですが、それと共に、上にもちょっと記したように彼の母からの感化も大いにあずかって力があったことは確かであります。
メンデレーエフ (新字新仮名) / 石原純(著)
しこうして問題は何ゆえに菅江真澄の著作ばかりが、ただひとり百年を隔てて今にその価値を認められるかであるが、それにはもとより学問と文章との、大きな力もあずかっている。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼の気分を変化するにあずかって効力のあったものは京都の空気だの宇治の水だのいろいろある中に、上方かみがた地方の人の使う言葉が、東京に育った彼に取っては最も興味の多い刺戟しげきになったらしい。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日の金港堂は強弩きょうどすえ魯縞ろこう穿うがあたわざる感があるが、当時は対抗するものがない大書肆だいしょしであった。その編輯へんしゅうに従事しその協議にあずかるものは皆錚々そうそうたる第一人者であった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
基督は与えざる一つのものもない。しかも何物をも失わず、凡てのものを得た。この大歓喜にお前もまたあずかるがいい。基督のお前に要求するところはただこの一つの大事のみだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)