一歩いつぽ)” の例文
宗助そうすけしろすぢふちつたむらさきかさいろと、まだらないやなぎいろを、一歩いつぽ遠退とほのいてながはしたこと記憶きおくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかるに第二だいに方面ほうめんおいては、歐洲おうしゆうとくにドイツへん優秀ゆうしゆう學者がくしやおほあらはれ、近年きんねんわがくに此點このてんについてかれ一歩いつぽゆづつてゐたかのかんがあつたが、大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしん以來いらい
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
が、大牛おほうしる、つまとらはれたしろである……よしそれ天狗てんぐでも、らすところでない。こゝ一刀いつたうろすは、かれすく一歩いつぽである、とさはやかに木削きくづらして一思ひとおもひにきざみてた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なに艦長かんちやうめいかんとて、姿勢しせいたゞしててる三四めい水兵すいへいは、先刻せんこくより熱心ねつしん武村兵曹たけむらへいそうかほ見詰みつめてつたが、そのうち一名いちめい一歩いつぽすゝでゝ、うや/\しく虎髯大尉こぜんたいゐ艦長かんちやうとにむかひ、意味いみあり
それはなんぞのお間違まちがひなるべしわたくし客樣きやくさまにお懇親ちかづきはなしいけはたよりおともせしに相違さうゐけれど車代しやだいたまはるよりほか御用ごようありとはおぼえず其譯そのわけおほせられて車代しやだい頂戴ちやうだいねがくだされたしと一歩いつぽうごかんとせぬ芳之助よしのすけ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其間そのかんたゞ一歩いつぽだ。なるほど黎明しのゝめ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
彼は此次このつぎちゝに逢ふときは、もう一歩いつぽあとへ引けない様に、自分の方をこしらえて置きたかつた。それで三千代と会見する前に、又ちゝから呼び出される事を深く恐れた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つまり百千ひやくせん空外からはづしにたいしてわづか一回いつかい實彈じつだんすくらゐのことであるから、かような副原因ふくげんいんだけを研究けんきゆうしてゐては、豫知問題よちもんだいほう一歩いつぽ進出しんしゆつすることが出來できないような關係かんけいになるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かたをはつて一歩いつぽ退しりぞいた。