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一歩
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いつぽ
宗助は
白い
筋を
縁に
取つた
紫の
傘の
色と、まだ
褪め
切らない
柳の
葉の
色を、
一歩遠退いて
眺め
合はした
事を
記憶してゐた。
然るに
第二の
方面に
於ては、
歐洲特にドイツ
邊に
優秀な
學者が
多く
現れ、
近年わが
國は
此點について
彼に
一歩を
讓つてゐたかの
感があつたが、
大正十二年關東大地震以來
が、
大牛が
居る、
妻の
囚はれた
魔の
城である……よし
其が
天狗でも、
気を
散らす
処でない。
爰に
一刀を
下ろすは、
彼を
救ふ
一歩である、と
爽かに
木削を
散らして
一思ひに
刻果てた。
何か
艦長の
命を
聽かんとて、
姿勢を
正して
立てる三四
名の
水兵は、
先刻より
熱心に
武村兵曹の
顏を
見詰めて
居つたが、
其中の
一名、
一歩進み
出でゝ、
恭しく
虎髯大尉と
艦長とに
向ひ、
意味あり
氣に
それは
何ぞのお
間違ひなるべし
私お
客樣にお
懇親はなし
池の
端よりお
供せしに
相違は
無けれど
車代賜るより
外に
御用ありとは
覺えず
其譯仰せられて
車代の
頂戴お
願ひ
下されたしと
一歩も
動かんとせぬ
芳之助を
其間唯一歩だ。なるほど
黎明と
彼は
此次父に逢ふときは、もう
一歩も
後へ引けない様に、自分の方を
拵えて置きたかつた。それで三千代と会見する前に、又
父から呼び出される事を深く恐れた。
つまり
百千の
空外しに
對して
僅に
一回の
實彈が
飛び
出すくらゐの
事であるから、かような
副原因だけを
研究してゐては、
豫知問題の
方へ
一歩も
進出することが
出來ないような
關係になるのである。
と
語り
終つて
一歩退いた。