“ゆたか”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
45.2%
18.3%
8.7%
7.7%
4.8%
1.9%
富裕1.9%
1.0%
多饒1.0%
富有1.0%
浴衣1.0%
1.0%
豊富1.0%
豊穣1.0%
豊艶1.0%
豊饒1.0%
豐饒1.0%
1.0%
1.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ゆたかにまろらかな立唄たてうたの声と、両花道からしずしずとひれをふりながらあらわれる踊り子の緋鯉ひごいの列と……とりわけあざやかに幻に残ってるのは
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
聲をあはせて、汝等の尋ぬるものこゝにありと叫べる處にいたれる時、日はわがしらざる間にゆたかに五十をのぼりたればなり —一八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
正にこれ、はてしも知らぬ失恋の沙漠さばくは、濛々もうもうたる眼前に、うるはしき一望のミレエジは清絶の光を放ちて、はなはゆたかに、甚だあきらかに浮びたりと謂はざらん
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
厚塗あつぬりの立烏帽子に平塵ひらぢりの細鞘なるをき、たもとゆたかに舞ひ出でたる有樣、宛然さながら一幅の畫圖とも見るべかりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
貧富同じく其製をゆたかにすると云い、富める者は産業を傾け、貧者は家資を失う、と既に其弊のあらわるるを云って居る。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この時保と脩とは再び東京にあって母の膝下しっかに侍することを得たが、独り矢島ゆたかのみは母の到著するを待つことが出来ずに北海道へ旅立った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
仙さんは多少たしょう富裕ゆたかな家の息子の果であろう。乞食になっても権高けんだかで、中々吾儘である。五分苅頭ごぶがりあたま面桶顔めんつうがお、柴栗を押つけた様な鼻と鼻にかゝる声が、昔の耽溺たんできを語って居る。仙さんは自愛家である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ことごと窓帷カアテンを引きたる十畳の寸隙すんげきもあらずつつまれて、火気のやうやく春を蒸すところに、宮はたいゆたか友禅縮緬ゆうぜんちりめん長襦袢ながじゆばんつま蹈披ふみひらきて、紋緞子もんどんす張の楽椅子らくいすりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たいのまたゆたかなるをさへ感ずるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
復次また、阿難のいう。譬うれば長者、財産多饒ゆたかにして、諸子息なく、ただ一女あるのみ。この時、長者百歳を過ぎ、みずから朽邁して死なんとすること久しからざるを知る。
人種さへ変りが無くば、あれ程の容姿きりやうを持ち、あれ程富有ゆたかな家に生れて来たので有るから、無論相当のところへ縁付かれる人だ——彼様あんな野心家のゑばなぞに成らなくてもむ人だ——可愛さうに。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
方々かた/″\様子やうすみなほゞわかつた、いづれも、それ/″\お役者やくしやである。が、白足袋しろたびだつたり、浴衣ゆたかでしよたれたり、かひくちよこつちよだつたり、口上こうじやう述損のべそこなつたり……一たいそれはなにものだい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
満枝は如何なる人かとちらと見るに、白髪交しらがまじりのひげは長く胸のあたりに垂れて、篤実の面貌痩おもざしやせたれどもいやしからず、たけは高しとにあらねど、もとよりゆたかにもあらざりし肉のおのづかよはひおとろへに削れたれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
白痴ばかじゃ狂人きちがいじゃと仲間の者からは軽蔑さげすまれてはおりますが私の眼から見ますと、決して白痴でも狂人でもなく、一風変わった不思議な男で、それになかなか金山については豊富ゆたかな知識を持っておる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんな苛責くるしみに会いながら、病気一つせずに、日にし丸々と肥って、康強すこやかに、美しくそだって行くのです、この島の清らかな風と、水と、豊穣ゆたか食物かてと、美しい、楽しい
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
肩と頸筋くびすじとはかえってその時分より弱々しく、しなやかに見えながら、開けた浴衣の胸から坐ったもものあたりの肉づきはあくまで豊艶ゆたかになって、全身の姿の何処ということなく
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうして、その時、十一歳であった私と、七ツになったばかりのアヤ子と二人のために、余るほどの豊饒ゆたかな食物が、みちみちておりました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いかなる事を書けるにかと、心せはしく讀みもて行くに、先づ空想のゆたかにして、章句の美しかりしをたゝへ、恐らくは是れパンジエツチイの流をめるものにて、摸倣の稍〻甚しきを嫌ふと斷ぜり。
辰野ゆたか先生の「仏蘭西フランス文学の話」という本の中に次のような興味深い文章がある。
女人訓戒 (新字新仮名) / 太宰治(著)