“とばり”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:トバリ
語句割合
38.2%
28.5%
12.4%
陣幕5.6%
帷帳3.7%
帷幕1.9%
戸帳1.9%
1.1%
1.1%
几帳0.7%
(他:13)4.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
微かな火光も洩らすまいと、船窓にも入口にもとばりを垂れているが、時折どうと船体をうつ波音に灯も揺れ、杯の酒も揺れる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑えるははたとやめて「このとばりの風なきに動くそうな」と室の入口まで歩を移してことさらに厚き幕を揺り動かして見る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしその間に金花の夢は、ほこりじみた寝台のとばりから、屋根の上にある星月夜へ、煙のやうに高々と昇つて行つた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ガヴローシュの寝床はすっかり整っていた。すなわち、敷き蒲団ぶとんと掛け蒲団とまたとばりのついた寝所とをそなえていた。
福島市松は、おもしろくない。隊を解いて、部下へも、休めを令し、自分はいているとばりへ入って、ごろりと寝ていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と答えてくる。どこを駈けている者も味方ばかりだった。平家の旗やとばりはあるが、敵らしい者には誰も出会わなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——美しい垂衣たれぎぬの女性が、一少年をつれて、柳堂の陣門をみちびかれ、直義の陣幕とばりのうちへ入って行った、と——。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腰を放されて、泳ぐように陣幕とばりのうちへよろけ込んだ丑蔵は、相木熊楠の厳しい眉を仰ぐと、あわてて逃げかけた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郎女は目を瞑つた。だが——瞬間眶の間からうつつた細い白い指、まるで骨のやうな——帷帳とばりを掴んだ片手の白く光る指。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
行手の連峯は雨雲の底面で悉くその頂を切り取られて、山々はたゞ一面に藍灰色の帷帳とばりを垂れたやうに見えてゐる。
雨の上高地 (新字旧仮名) / 寺田寅彦(著)
薬師堂の階段を上ると、中央には香の燃滓が山のように堆積している護摩壇があり、その背後が厨子形の帷幕とばりになっている。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼らは作曲する時、自分の楽想に弱音器をはめ、また外界の音響が伝わって来るのを、帷幕とばりによって防いでいたのだ。
目を上げて見ると、見渡す限り、山はその戸帳とばりのような色になった。が、ややつややかに見えたのは雨が晴れた薄月の影である。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
登り詰めたるきざはしの正面には大いなる花を鈍色にびいろの奥に織り込める戸帳とばりが、人なきをかこち顔なる様にてそよとも動かぬ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その頼みの言葉のおわらないうちに、珊瑚がとばりの中から出て来た。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
四郎は閻の手をとってとばりの中へ入っていった。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
われはむねの跳るを覺えて、そと人々に遠ざかり、身を長きとばりの蔭に隱して、窓の外なる涼しき空氣を呼吸したり。
南に廊下ありて、北面の壁は硝子ガラス大窓おおまどなかばを占められ、隣の間とのへだてには唯帆木綿ほもめんとばりあるのみ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ながやかな黒髪とその姿を、匂いの糸がゆるく巻いてくるにつれ、蕭条しょうじょうと、遠い夜雨やうの声も几帳とばりの内に沁み入ってくる。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みかどがよる御殿おとどにいることなく、栄子の几帳とばり后町きさきまち局々つぼねつぼねを、毎夜毎夜かえておいでであろうと、帰るところは自分のほかにないものときめていた。
へやの両側は四扇しまいびらき隔子とびらになって、一方の狭い入口には青いきぬとばりがさがっていた。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
へやの両側は四扇しまいびらき隔子かくしになって一方の狭い入口には青いきれとばりがさがっていた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
船楼せんろうをつつむ軍幕とばりには、杜若かきつばたの大紋がはためき、武者囲いの蔭には、銃身や槍の穂先が林立していた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直義は、あらい息のまま、軍幕とばりを払って、さし覗いた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
醜いものは、すべて垂帷とばりで隠してありました。
もし、その消え得べき時ありとなさば、そは、唯だ、われにして君をわがアルコーブの帳幕とばりの陰に引入れしめ、わが手わが唇をして、親しく君が肉の上に触れしめん夕べのみ。
舞姫 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
静かな玄関の座敷、周囲には東洋で製作きた炎えたつような美しい帷張とばりがかかっている。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
公事くじ根源』を見るに中朝この遊び盛んに、円融帝寛和元年二月十三日に行われたのは殊にふるった物だったらしく、とばりの屋を設けまくを引き廻らし、小庭とて小松をひしと植えられたりとある。
幔幕とばりをうしろの床几しょうぎに腰かけて、直義が、たむろの佐野十郎を振向いての言。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何か、ここまでの間には、言い出しかねていたことらしい。そういうと、正季は、いちど自分の幕舎とばりのほうへ帰って行った。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠方此方おちこち幕舎とばりで、はや、将士の起き出る気配がする。正行は、どこかで顔を洗ってもどって来た。深くは眠れずに過ごしたのだろう。今朝もまた、瞼は赤くれあがっている。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出雲人いづもびとつくつた、幾重いくへにもまはす、屏風びようぶとばりるいよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あゝ、その幾重いくへ屏風びようぶとばりよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
戸張とばりを垂れた御廚子みずしわきに、造花つくりばな白蓮びゃくれんの、気高くおもかげ立つに、こうべを垂れて、引退ひきしりぞくこと二、三尺。心静かに四辺あたりを見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今、仙台の第二高等学校にゐる登張とばり竹風は、酒に酔ふと、筆を執つて其辺そこらへ落書をする。