“とばり”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:トバリ
語句割合
37.7%
28.6%
11.8%
陣幕5.4%
帷帳3.7%
戸帳2.0%
帷幕2.0%
1.0%
1.0%
軍幕0.7%
几帳0.7%
0.7%
0.7%
0.7%
幕舎0.3%
垂帳0.3%
垂帷0.3%
帳台0.3%
帳帷0.3%
帳幕0.3%
帷張0.3%
幔幕0.3%
戸張0.3%
登張0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
窓の隙間から内へ伸びて、その先が灯台へ近づいたと思うと、ふッと、ひとりでみたいに灯が消えた。とばりの内では気がついた風もない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうするとあれはとばりの向うに瞬いている星をみつめて、にこにこと嬉しそうに聞きながらやがてスヤスヤと眠りに就いていたのです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
出外れると加藤大蔵おおくら、それから先は畦のような一本路が観音かんのん浄正じょうしょうの二山へ走って、三川島村の空遠く道灌山の杉が夜のとばりにこんもりと——。
陣幕とばりの外の士卒に、駒をあずけて、相木熊楠はずかずかと入って来た。鎧の鍛具うちものや太刀の柄に、雨のしずくが燦々きらきらと溜っている。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからその仏壇の奥の赤い金襴きんらん帷帳とばりを引き開いてみると、茶褐色に古ぼけた人間の頭蓋骨が一個ひとつ出て来たので皆……ワア……と云って後退あとしざりした。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三階にあがる。部屋の隅を見ると冷やかにカーライルの寝台ねだいよこたわっている。青き戸帳とばりが物静かに垂れてむなしき臥床ふしどうち寂然せきぜんとして薄暗い。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼らは作曲する時、自分の楽想に弱音器をはめ、また外界の音響が伝わって来るのを、帷幕とばりによって防いでいたのだ。
「へえ、憚かりさん。おほけに。」と優しく言つて太政官は、ツカ/\と宿直室の隣りの御宸影奉安所の前へ進むと、白いとばりの前に立つて、稍暫く祈念を凝らしてゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そのあかい色が美しいので衣桁いこうの上にかけて置くと、夜ふけて彼が眠ろうとするときに、ひとりの美しい女がとばりをかかげて内を窺っているらしいので、周はおどろいてとがめると、女は低い声で答えた。
直義は、あらい息のまま、軍幕とばりを払って、さし覗いた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みかどがよる御殿おとどにいることなく、栄子の几帳とばり后町きさきまち局々つぼねつぼねを、毎夜毎夜かえておいでであろうと、帰るところは自分のほかにないものときめていた。またそう信じていいだけの理由もある。
公事くじ根源』を見るに中朝この遊び盛んに、円融帝寛和元年二月十三日に行われたのは殊にふるった物だったらしく、とばりの屋を設けまくを引き廻らし、小庭とて小松をひしと植えられたりとある。
夜は眞暗で暗黒な兇行には持つて來いの朦朧さが四下にとばりを下ろしてゐる。被害者は若い強力なヘラキュレスの如き筋骨を持つ男ではあつたが一切が思ひがけなく起つた事だし且無手ではある。
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
へやの両側は四扇しまいびらき隔子とびらになって、一方の狭い入口には青いきぬとばりがさがっていた。小婢は白娘子に知らすためであろう、その簾を片手で掲げて次の室へ往った。許宣はそこに立って室の容子を見た。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
が、そこへ兵糧の朝餉あさげが運ばれて来たのをしおに、正成はそれ幸いに、さいごの貧しい野戦食を正行と向いあってりながら、幕舎とばりの外へ命じていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつは心がかりのまま、昨夜、み幕舎とばりの外にいて、委細は伺うておりました。……よほど私からも、共々お願いを
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、ふと内陣の壇を仰ぐと、御厨子みずしのうちには本尊仏もなかった、香華こうげびんもない、経机きょうづくえもない、がんもない、垂帳とばりもないのである。吹きとおる風だけがさわやかであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炉の上の棚には、目のさめるような刺繍をしたきれが敷いてあり、二三の置物が飾ってありました。醜いものは、すべて垂帷とばりで隠してありました。美しい扇や壁掛が、鋭い鋲で壁にとめてありました。
何気なくいて行ってみると、そこには男の飲みちらした卓があり二つ枕が帳台とばりに見える。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窓に帳帷とばりはとざすとも
艸千里 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
もし、その消え得べき時ありとなさば、そは、唯だ、われにして君をわがアルコーブの帳幕とばりの陰に引入れしめ、わが手わが唇をして、親しく君が肉の上に触れしめん夕べのみ。
舞姫 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けれどそれもしばし、彼女はやがてまた元の夢に返った。静かな玄関の座敷、周囲には東洋で製作きた炎えたつような美しい帷張とばりがかかっている。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
幔幕とばりをうしろの床几しょうぎに腰かけて、直義が、たむろの佐野十郎を振向いての言。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸張とばりを垂れた御廚子みずしわきに、造花つくりばな白蓮びゃくれんの、気高くおもかげ立つに、こうべを垂れて、引退ひきしりぞくこと二、三尺。心静かに四辺あたりを見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今、仙台の第二高等学校にゐる登張とばり竹風は、酒に酔ふと、筆を執つて其辺そこらへ落書をする。障子であらうと、金屏風きんびやうぶであらうと一向いとはないが、とりわけ女の長襦袢ながじゆばんへ書くのが好きらしい。