几帳とばり)” の例文
ながやかな黒髪とその姿を、匂いの糸がゆるく巻いてくるにつれ、蕭条しょうじょうと、遠い夜雨やうの声も几帳とばりの内に沁み入ってくる。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みかどがよる御殿おとどにいることなく、栄子の几帳とばり后町きさきまち局々つぼねつぼねを、毎夜毎夜かえておいでであろうと、帰るところは自分のほかにないものときめていた。またそう信じていいだけの理由もある。