駕籠屋かごや)” の例文
片口は無いと見えて山形に五の字のかれた一升徳利いっしょうどくりは火鉢の横に侍坐じざせしめられ、駕籠屋かごやの腕と云っては時代ちがいの見立となれど
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
殺し金百兩奪ひ取りしとて御所刑おしおきに成しとの噂を聞權三助十の兩人は怪敷あやしく思ひ橋本町八右衞門たなにも駕籠屋かごや仲間なかまる故彦兵衞が樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
伝吉でんきち駕籠かごなかはなあたまッこすってのひとり啖呵たんかも、駕籠屋かごやにはすこしのもないらしく、駕籠かごあゆみは、依然いぜんとしてゆるやかだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
夏は素裸、ふんどし一つ、冬はどてら一枚で、客があると、どんな寒中でも丸裸になって、ホイかごホイ籠とかけ出す駕籠屋かごやなぞはもはや顔色がない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
香以を得意の檀那としていた駕籠屋かごやは銀座の横町にある方角と云う家で、郵便のない当時の文使ふみづかいに毎日二人ずつの輿丁よていが摂津国屋に詰めていた。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前に立ち塞がってこもごも詰問する二人の高圧には、駕籠屋かごやは、もう駕籠を地べたへ伏せて、すくんで尻ごみのていです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
坂をおりて、ごみごみした狭い横丁をぬけて出ると、その角に駕籠屋かごやがあり、おけいは駕籠屋に栄三郎を紹介すると、独りでそこから戻っていった。
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ち、ち、ちげえねえ。——急ぎだよ! 駕籠屋かごや! 待っておれといったのに、どこをのそのそほつき歩いているんだ。牢屋へ行きな! 牢屋へ!」
前途ゆくてはるかに、ちら/\と燃え行く炎が、けぶりならず白いしぶきを飛ばしたのは、駕籠屋かごや打振うちふ昼中ひるなか松明たいまつであつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
林「く処へ往けば分らア、黙っていろ、金藏、この近所に駕籠屋かごやがあるだろう、一挺いっちょう雇って来い」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしの家の裏から出てゆく露地の入口に、むかしは山の井という駕籠屋かごやで、今はおかみさんが女髪結かみゆいをしている家の奥の間を借りている、さださんという板木屋はんぎやの職人があった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこは、御成街道おなりかいどう広小路ひろこうじにかわろうとするかどであった。一方に、湯島天神ゆしまてんじんの裏門へ登る坂みちが延びていた。そこのところに、つじ待ちの駕籠屋かごやが、戸板をめぐらして、股火またびをしていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
物馴ものなれた旅人が狐の尻尾を腰さげにして、わざとちらちらと合羽かっぱの下から見せ、駕籠屋かごや馬方うまかた・宿屋の亭主に、尊敬心を起こさせたという噂は興味をもって迎えられ、甚だしきはあべこべに
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「おかみさんの方は何ともないよ、足の筋なんか、駕籠屋かごやより丈夫だ」
それからまたややしばし、郡上街道ぐじょうかいどうの真只中にその姿を見せたと思うまもなく、三本松の夜明しのあぶれ駕籠屋かごやの小屋へ、外から声をかけた者がある。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「急用じゃと申しまして、ただいま駕籠屋かごやがこの書面を持ってまいりました。どのだんなさまでござります」
物語りしに後藤先生は其若者そのわかもの不便ふびんなれば助けてつかはさんと云れて熊谷くまがや土手どて追駈おつかけゆき駕籠屋かごや惡漢わるもの共をたゝちら此衆このしう夫婦ふうふを御助けなされ八五郎が家へ連て來り疵所きずしよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
明るい街へ出ると二人は離れた。駕籠屋かごやの角を曲るときには、おつるは顔をそむけて走りぬけた。
扇野 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
駕籠かごを一ちやう駕籠屋かごやが四にんたふげ茶屋ちやややすんだのが、てく/\とかへつてた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おや駕籠屋かごやさん。左様さようにいうたら、江戸えどのおかたにくまれまッせ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
得物えもの得物えものを持った駕籠屋かごやと馬方は、土のようになって、ヘタヘタと土下座をきってしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それだッ。なぞは解けたぜ。今夜は最後の令の字人形ののろいの晩だ。伏せ網はあとの一つの三ツ又稲荷いなりと決まったよ。駕籠屋かごやッ。ひと飛びに湯島まで飛ばしてくんな」
うかゞふに是もしづかなれど昨日きのふ駕籠屋かごや善六に頼まれしわかき女なればとあんじて座敷へ入り見れば無慚むざんあけそみて死しゐたり扨こそ彼侍かのさむらひが女を殺して立退たちのきしとにはかに上を下へと騷動さうどう追人おつて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お前様が行く気でも、わしが留めます。お嬢様の御用とって、お前、医者じゃあなし、駕籠屋かごやじゃあなし、差迫った夜の用はありそうもない。大概の事は夜が明けてからする方が仕損じが無いものじゃ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駕籠屋かごやさん。まんが、いそいどくれやすえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
関の宿で悪い駕籠屋かごやに苦しめられたのを見兼ねて追い払ってくれた旅の武士さむらいはあの人であった。
「よし、わかった。口外するでないぞ。——駕籠屋かごや! 伝通院裏じゃ」
駕籠屋かごや建場たてばを急いでいます、早く飲もうと思ってね。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「か、駕籠屋かごや。か、茅場町かやばちょうだ。——」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
お角さんは、それをせせら笑いながら、手廻りのものを押片附けて、待たしてある駕籠屋かごやを呼ぼうとすると、この時、店の一方でにわかに、すさまじい物争いが起りました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
不思議なことにも、駕籠屋かごやの受け取りなのです。
竜之助がはじめて京都へ上る時に、同じこの国の鈴鹿峠すずかとうげの下で、悪い駕籠屋かごやからお豊が責められて、そのとき詮方せんかたなくお豊が駕籠屋に渡そうとした簪がこの簪と同じ物でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駕籠屋かごや駕籠屋。墨田までとっぱしるんだよ
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
駕籠屋かごや、もういいから、根岸へ戻せ、築地へ行くのは止めだ、根岸へ戻せ、戻せ」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
女は駕籠屋かごやから刀箱を受取って、それを改めて竜之助の前に置いて
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おい、駕籠屋かごや
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)