香水こうすい)” の例文
おばあさんは、いい香水こうすいにおいが、少女しょうじょからだにしみているとみえて、こうしてはなしているあいだに、ぷんぷんとはなにくるのをかんじました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると店の灯も、町の人通りも香水こうすいの湯気を通して見るようになまめかしく朦朧もうろうとなって、いよいよ自意識をたよりなくして行った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ありゃさっきお絹ちゃんが、持って来た香水こうすいいたんだよ。洋ちゃん。何とか云ったね? あの香水は。」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「旦那、まあ、あら、まあ、あらにおい、何て香水こうすいしたんでございます。フン、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おれは美人の形容などが出来る男でないから何にも云えないが全く美人に相違ない。何だか水晶すいしょうたま香水こうすいあっためて、てのひらにぎってみたような心持ちがした。年寄の方が背は低い。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
開けたとたんに、ぼくは吃驚びっくりしました。内田さんがたった一人で、それもシュミイズ一枚で、横坐よこずわりになり、かみいていたのです。白粉おしろい香水こうすいにおいにむっとみちた部屋でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
紐育の中央郵便局に居りましたのはその途中で逃げ出していた時分の事で、頭髪かみを酸化水素で赤く縮らして、くろ香水こうすい身体からだに振りかけて、白人と黒人の混血児あいのこに化けていたのです。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
香水こうすいぶろと、王さまがお召しになるような金のぬいとりのある着物と、自分のお供をする四十人のどれいと、お母さんのお供をする六人のどれいと、王さまのお馬よりもっと美しい馬と、そして
「そうよ、のあるのは、ヒヤシンスなのよ。」すると、いもうとは、テーブルのうえにのせてあった香水こうすいのびんをとりあげました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、まち香水製造場こうすいせいぞうじょうやとわれています。毎日まいにち毎日まいにちしろばらのはなからった香水こうすいをびんにめています。そして、よる、おそくうちかえります。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるになると、はなやかな電燈でんとうが、へやのなか昼間ひるまのようにあかるくらします。そこへ、おんなのおきゃくさまがあると、へやじゅうは香水こうすいにおいでいっぱいになります。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしかんがえますのに、三げんが、おなじく八せんにすれば、やはりおなじことです。わたしは、いままでどおり拾銭じっせんにして、仕事しごとをていねいにして、あぶら香水こうすい上等じょうとう使つかいます。
五銭のあたま (新字新仮名) / 小川未明(著)
うみなかにすんでいるけだものきばや、金色きんいろをしたとりたまごや、香水こうすいれるくさや、よるになるといいこえして、うたをうたうかいなどがあるということをいていましたから
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その香水こうすいにおいが、たいへんに、いいにおいだったとみえてせいさんは、運転うんてんしながら、ゆめるような気持きもちになって、どこをはしっているのだか、ぼんやりしました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
自動車じどうしゃはしっているあいだに、うつくしいおじょうさんは、さげをあけて、香水こうすいのびんをしました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
香水こうすいのにおいがただよい、南洋なんようできのらんのはながさき、うつくしいふうをしたおとこおんながぞろぞろあるいて、まるでこのなか苦労くろうらぬひとたちのあつまりのようでありました。
田舎のお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんど、子供こどもたちは、みんな、このやすいほうのみせへやってきました。主人しゅじんは、五せん値下ねさげをしたかわり、ろくろく石鹸せっけんもつけなければ、香水こうすいなどは、まったくつけませんでした。
五銭のあたま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「かわいそうに、花園はなぞのおもって、香水こうすいや、電気でんきにだまされたんだわ。」
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、ヒヤシンスや、リリーや、アネモネや、そののいろいろな草花くさばなからはっする香気こうきがとけって、どんなにいい香水こうすいにおいもそれにはおよばないほどのかおりが、きゅうに、かおからだおそったのでした。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)