トップ
>
逭
>
のが
ふりがな文庫
“
逭
(
のが
)” の例文
「この難場を
逭
(
のが
)
れることができるなら、これ以上おやじやおふくろを泣かせたかあねえさ、本当のところせっぱ詰ってるんだから」
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
爾
(
そ
)
う云う時勢であるから、私は
唯
(
ただ
)
一身を
慎
(
つつし
)
んでドウでもして
災
(
わざわい
)
を
逭
(
のが
)
れさえすれば
宜
(
よ
)
いと云うことに心掛けて居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
宮はこの散歩の間に
勉
(
つと
)
めて気を
平
(
たひら
)
げ、色を
歛
(
をさ
)
めて、ともかくも人目を
逭
(
のが
)
れんと計れるなり。されどもこは酒を
窃
(
ぬす
)
みて酔はざらんと欲するに
同
(
おなじ
)
かるべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
若し運悪く現場を誰かに見られたとしても、そんな場所であれば、鳥か
獣
(
けだもの
)
か、何かを射とうとして誤って殺したとでも何とでも言い
逭
(
のが
)
れる
途
(
みち
)
があるのです。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
されば彼等の仲間にて、賤しき限りなる業に墮ちぬは稀なりとぞいふなる。エリスがこれを
逭
(
のが
)
れしは、おとなしき性質と、剛氣ある父の守護とに依りてなり。
舞姫
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
主人の蔭多き大柳樹の下にありて、
誂
(
あつら
)
へし
朝餉
(
あさげ
)
の支度する間に、我等はこの
烟煤
(
えんばい
)
の窟を
逭
(
のが
)
れ、
古祠
(
ふるほこら
)
を見に往くことゝしたり。
委它
(
いだ
)
たる細徑は
荊榛
(
けいしん
)
の間に通ぜり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
大正二年「みみずのたはこと」の出版をさながらのきっかけに、日一日、歩一歩、私は死に近づいて来ました。死にたくない。
逭
(
のが
)
れたい、私は随分もがきました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「では君は、君が犯人でないと言う証拠を提出しない限り当面の容疑者たらざるを得ない。又池内君は、完全なるアリバイがない限り、又被疑者たるを
逭
(
のが
)
れないだろう」
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
其は知らねど、政治小説でも書く人ならば、見
逭
(
のが
)
すまじき
場
(
シーン
)
なるべしと思ひたりき。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
假令
(
たとひ
)
監視
(
かんし
)
の
目
(
め
)
から
逭
(
のが
)
れて
女
(
をんな
)
に
接近
(
せつきん
)
したとしても、
打
(
う
)
ち
込
(
こ
)
んだ
女
(
をんな
)
の
情
(
じやう
)
が
強
(
こは
)
ければ
蛸壺
(
たこつぼ
)
の
蛸
(
たこ
)
が
騙
(
だま
)
される
樣
(
やう
)
にころりと
落
(
おと
)
す
工夫
(
くふう
)
のつくまでは
男
(
をとこ
)
は
忍耐
(
にんたい
)
と
寧
(
むし
)
ろ
危險
(
きけん
)
とを
併
(
あわ
)
せて
凌
(
しの
)
がねば
成
(
な
)
らぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
祖「エーイ黙れ、確かの証拠あって知る事だ、天命
逭
(
のが
)
れ難い、さ
直
(
すぐ
)
にまいれ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三膳出しましたと
云
(
いっ
)
て、
却
(
かえ
)
ってこの男を
怪
(
あやし
)
んだ、
爰
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
てこの男は主人の妻子が
付纏
(
つきまと
)
って、こんな不思議を見せるのだと思い、
迚
(
とて
)
も
逭
(
のが
)
れぬと観念した、
自訴
(
じそ
)
せんと
取
(
とっ
)
て
返
(
か
)
えす途上
捕縛
(
ほばく
)
されて
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
「明朝になればできるんだが……」と私は当座
逭
(
のが
)
れを言う。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それにしても辛いことです、怠惰を
逭
(
のが
)
れるすべがない!
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
身をもだえながら、その夢から
逭
(
のが
)
れようとして、思わず叫んだ。その声で眼はさめたが、同時に自分が誰かに抱かれているのを知った。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
竟
(
つひ
)
には
溜息
(
ためいき
)
呴
(
つ
)
きてその目を閉づれば、片寝に
倦
(
う
)
める
面
(
おもて
)
を
内向
(
うちむ
)
けて、
裾
(
すそ
)
の寒さを
佗
(
わび
)
しげに
身動
(
みうごき
)
したりしが、
猶
(
なほ
)
も
底止無
(
そこひな
)
き思の
淵
(
ふち
)
は彼を沈めて
逭
(
のが
)
さざるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
されば彼等の仲間にて、
賤
(
いや
)
しき限りなる業に
堕
(
お
)
ちぬは
稀
(
まれ
)
なりとぞいふなる。エリスがこれを
逭
(
のが
)
れしは、おとなしき性質と、剛気ある父の守護とに依りてなり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
人々は我齡を算へ、我がために
作
(
な
)
さでかなはぬ事を商量したり。その何事なるかは知らねど、善きことにはあらず。
奈何
(
いかに
)
してこゝをば
逭
(
のが
)
れむ。われは
穉心
(
をさなごころ
)
にあらん限りの智慧を絞り出しつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
野武士
(
のぶし
)
のポチは郎等のデカとなって、犬相が大に良くなった。其かわり以前の強味はなくなった。富国強兵兎角両立し難いものとあって、デカが柔和に即ち
弱
(
よわ
)
くなったのも
逭
(
のが
)
れぬ処であろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
よき機会があり、それを
逭
(
のが
)
さなければ、それは重要な価値を生ずる。ことによれば、雅楽頭を取って押えることができるかもしれない。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
赤坂氷川
(
あかさかひかわ
)
の
辺
(
ほとり
)
に写真の
御前
(
ごぜん
)
と言へば知らぬ者無く、
実
(
げ
)
にこの殿の
出
(
い
)
づるに写真機械を車に積みて
随
(
したが
)
へざることあらざれば、
自
(
おのづか
)
ら人目を
逭
(
のが
)
れず、かかる
異名
(
いみよう
)
は呼るるにぞありける。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
玄機は
逭
(
のが
)
るべからざる規律の
下
(
もと
)
にこれを修すること一年余にして
忽然
(
こつぜん
)
悟入する所があった。玄機は真に女子になって、李の林亭にいた日に知らなかった事を知った。これが咸通二年の春の事である。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
素姓を隠して、こんな山の中へ
逭
(
のが
)
れて来て、ひっそりと病を養っている、訪ねて来る者もないらしい、家族なども有るのか無いのか。……
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おみきは二人を出してやったあと、むだな思案から
逭
(
のが
)
れるため、仕事に没頭した、そしてそこへ、その男がたずねて来たのだ。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
利き腕を掴まれた侍はじたばたするが、どうしても伊兵衛の手から
逭
(
のが
)
れることができない。これを見て
伴
(
つ
)
れの四人は怒って
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いっとき
逭
(
のが
)
れに云ったまでであるが、するとその日の午後、もう陽が傾きかけたじぶんに、野だての席へ足助がやって来た。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
右のように周到な手順と力闘の労によって、私たちはようやく一本のビールと食事だけで難を
逭
(
のが
)
れることができた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
右のように周到な手順と力闘の労によって、私たちはようやく一本のビールと食事だけで難を
逭
(
のが
)
れることができた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
小次郎が神童と云われて、どんなに人々の賞讃を集めるとしても、宗利に受けた恩典から
逭
(
のが
)
れることはできない。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それは
逭
(
のが
)
れることのできないものですか」と主水が初めて口をきった、「なにか逭れる方法はないのですか」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汐の退くときに汐が退くことをど忘れして、気がついてみると干潟の中の汐溜りに残されてしまい、そこから
逭
(
のが
)
れ出ようとしていたずらにあばけるのだという。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「待て」と主計は云った、「おれはまる腰だ、そうでなくともこれだけの人数では
逭
(
のが
)
れることはできない、みれんなまねはしないからおれの云うことを聞いてくれ」
失蝶記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「もしも貴女が、柿崎どのの手から
逭
(
のが
)
れて、平安な暮しにはいりたいと思うなら」と玄四郎が云った。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「この機を
逭
(
のが
)
してはならない」と安芸は続けた、「酒井侯に対立する勢力があって、そのため評定が中途半端にされたり、ごまかして
遷延
(
せんえん
)
されたりしてはならない、 ...
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「きさまは黙れ、中の者に用があるのだ」と同心態の男はどなり返し、ふところから朱房の十手を出した、「もはや
逭
(
のが
)
れぬぞ、紬屋藤吉、てまをかけずに出てまいれ」
秋の駕籠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうすればこの苦しみから
逭
(
のが
)
れられる、でもそうしたらお母上はどうなさるだろう、あんなによろこんでいらっしゃるお母上はどうあそばすか、……云ってはならない
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「お下屋敷へ伺候したときのことです、幸い供の者と、良源院どのの機転で、危ういところを
逭
(
のが
)
れましたが、その人間がなぜ私を刺そうとしたか、おわかりでしょうか」
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
泣こうと喚こうと
逭
(
のが
)
れるすべのないことは三歳の童でも知って居りましょう、多少なり御国のために働くほどの者が、其の場に臨んで、命が惜しくて泣くと思召しますか
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そんなにまで清七と夫婦になりたいというのか、本心からそう望んでいるのか、それともまた清七と夫婦になることで、なにか面倒なことから
逭
(
のが
)
れるつもりではないのか。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
船岡はいま家中からにらまれており、いかなる動静もその注目から
逭
(
のが
)
れることはできません、また、一ノ関さまについてどう陳弁するかは、船岡がよく心得ていると存じます。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのこと自身には意味がなくとも、それを
逭
(
のが
)
さずにあじわう、という気持は大切なのだ。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だがどんな幸福も決して永遠ではない、人間は不幸や悲嘆から
逭
(
のが
)
れることはできない。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私にしても、仮にふところがもっとあたたかであったら、容易にかれらの手から
逭
(
のが
)
れがたかったろうと思う。人は
黄白
(
こうはく
)
の前には、しばしば恥を忍んで屈しなければならないものだ。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私にしても、仮にふところがもっとあたたかであったら、容易にかれらの手から
逭
(
のが
)
れがたかったろうと思う。人は
黄白
(
こうはく
)
の前には、しばしば恥を忍んで屈しなければならないものだ。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「事が危なくなったので、御自分だけ身を
逭
(
のが
)
れて、安楽に暮そうと仰しゃるのですか」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
どんな幸福も永遠ではない、
慥
(
たし
)
かなのは人間が不幸や悲しみを背負っているということだ。多くの史書が証明しているとおり、誰一人としてそれを
逭
(
のが
)
れることができないということだ。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「七人と一人では」と又三郎は頭を垂れて云った、「……とうてい
逭
(
のが
)
れるみちは」
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
殆んど世間を知らず、十六といってもおくてのわたくしには、ただもうあの方が
怖
(
おそ
)
ろしく、あの方から
逭
(
のが
)
れるためには、死ぬよりほかにみちはない、としか考えられなかったのだと思う。
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その胸のむかつきから
逭
(
のが
)
れるように、十兵衛のようすを診よう、と彼は云った。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
たまたまそうでなく、二人だけ特に親しいとか、水道端のパーティーを好まないような者がいれば、「おへんじん」とか「おきちさん」などという悪評から
逭
(
のが
)
れるすべはないのであった。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
逭
部首:⾡
12画