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もろて
ふりがな文庫
“
諸手
(
もろて
)” の例文
立待岬
(
たちまちさき
)
から
汐首
(
しほくび
)
の岬まで、
諸手
(
もろて
)
を擴げて海を抱いた七里の砂濱には、荒々しい磯の香りが、何
憚
(
はばか
)
らず北國の強い空氣に
漲
(
ひた
)
つて居る。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
この間に、帆柱からやや離れて
上手
(
かみて
)
へ廻った背の高いのが、
諸手
(
もろて
)
に斧を振り上げて、帆柱の眼通り一尺下のあたりへ、かっしと打ち込む。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この時マリイは
諸手
(
もろて
)
を巨勢が項に組合せて、身のおもりを持たせかけたりしが、木蔭を
洩
(
も
)
る稲妻に照らされたる顔、見合せて
笑
(
えみ
)
を含みつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
諸手
(
もろて
)
をば
縛
(
いまし
)
められたり。我
身上
(
みのうへ
)
は今や
獵夫
(
さつを
)
に獲られたる獸にも劣れり。されど憂に心
昧
(
くら
)
みたる上なれば、苦しとも思はでせくゞまり居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「あたしが、こんなふうに、
諸手
(
もろて
)
で抱えこんでしまいますから、あなたはバットを
握
(
にぎ
)
る要領で、グイと掴んでくだされば、それでいいんです」
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
諸手
(
もろて
)
を胸に加え厳かに省みたもうことなり、静かにおのが心を吟味したもう事なり、今われ実にかの人を愛するや否やと。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
が、いきなり居すくまった茸の一つを、山伏は
諸手
(
もろて
)
に掛けて、すとんと、笠を下に、
逆
(
さかさ
)
に立てた。二つ、三つ、四つ。——
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこを
流石
(
さすが
)
は忠三郎氏郷だ、戦の門出に全軍の気が
萎
(
な
)
えているようでは宜しく無いから、
諸手
(
もろて
)
の士卒を緊張させて其の意気を振い立たせる為に
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「いや、斬らせんっ」覚明は、師の善信が
叱咤
(
しった
)
することばに耳をかさないで、板縁から飛び降りた。そして彼らと善信のあいだに、
諸手
(
もろて
)
をひろげて
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
当たって砕けろ! と三蔵は、うんと
諸手
(
もろて
)
で突いて出た、そこを小野派の
払捨刀
(
ふっしゃとう
)
、ピシッと横から払い上げ、体の崩れへ付け込んで、真の真剣で
顎
(
あご
)
へ
発止
(
はっし
)
!
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、同時に、トランクの中の男が、ビックリ箱を飛び出す蛇みたいに、突然ニョッキリと立上がったかと思うと、
諸手
(
もろて
)
を拡げて総監に飛びかかって行った。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
万歳万歳のあっちこっちでは黒のコサック帽の、緋の上衣の、青ズボンの、髯むじゃ露助の助けて助けてに真向、拝み討ち、
唐竹
(
からたけ
)
割り、逃げる腰から
諸手
(
もろて
)
突き
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
窖
(
あなぐら
)
から姿を消したお初、危なかしい
吊梯子
(
つりばしご
)
を、スルスルと見事な足さばきで上ってしまうと、
諸手
(
もろて
)
で、うんと突ッ張って、揚げ蓋をあげて、庫裡へ出ると、そこに
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
弦三は、それを聞くと、ムクムクッと起きあがって、
諸手
(
もろて
)
で受信機を頭上高くもちあげると
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いい気味! と光代は
奪上
(
とりあ
)
げ放しに枕の
栓
(
せん
)
を抜き捨て、
諸手
(
もろて
)
に早くも半ば押し
潰
(
つぶ
)
しぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
ぬき足さし足和尚の
背後
(
うしろ
)
に忍び寄り、腰の
錆脇差
(
さびわきざし
)
をソロソロと音のせぬように抜き放ち、和尚の背中のマン中あたりにシッカリと
切先
(
きっさき
)
を狙い付け、矢声もろとも
諸手
(
もろて
)
突きに、
柄
(
つか
)
も
透
(
とお
)
れと突込めば
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「コ、コイッ! うるせえ
真似
(
まね
)
をしやあがる!」とにわかに攻勢に出てその時
諸手
(
もろて
)
がけに突いてきた栄三郎をツイとはずすが早いか、乾雲丸の
皎閃
(
こうせん
)
、刹那に虹をえがいて栄三郎のうえへくだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
秋晴や
諸手
(
もろて
)
重ねて打ち
翳
(
かざ
)
し
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
我が
諸手
(
もろて
)
は常に高く張り
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
諸手
(
もろて
)
をうちて笑ひつゝ
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
諸手
(
もろて
)
に
腕
(
かひな
)
を
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
立待崎
(
たちまちさき
)
から
汐首
(
しほくび
)
の
岬
(
みさき
)
まで、
諸手
(
もろて
)
を拡げて海を抱いた七里の砂浜には、荒々しい磯の香りが、何
憚
(
はばか
)
らず
北国
(
ほくこく
)
の強い空気に漲ツて居る。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
試みに、草むらの中へ分け入って、その袋に
諸手
(
もろて
)
をかけてみました。重い。幸いにしてこの男は稀代の怪力を持っている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると、
諸手
(
もろて
)
にさしあげていた城太郎のからだを、武蔵が、宙天から落すように相手の者へ向って抛りつけたので
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「黙れ!」と、山口という武士は、紙帳に映っている影を目掛け、
諸手
(
もろて
)
突きに突いた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鼻を仰向け、
諸手
(
もろて
)
で、腹帯を
掴
(
つか
)
むと、紳士は、ずぶずぶと沼に潜った。次に浮きざまに
飜
(
ひるがえ
)
った帯は、翼かと思う波を立てて消え、紳士も沈んだ。三個の赤い少年も、もう影もない。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
諸手
(
もろて
)
を挙げて加はらう。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
白髮茨の如き痩せさらぼひたる斃死の
状
(
さま
)
の人が、吾兒の骨を
諸手
(
もろて
)
に握つて、キリ/\/\と噛む音を、現實の世界で目に見る或形にしたら
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
諸手
(
もろて
)
をかけてウンウンと力を入れて
手繰
(
たぐ
)
った時は、自分のしている残忍そのものの興味をも忘れているようであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さらに
諸手
(
もろて
)
を開いてみせながら「身に寸鉄も帯びてはいません。いやいや、とばかりではまだ信じてはいただけますまい。これを御一見くださいましょう」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
續
(
つゞ
)
いて
一人
(
ひとり
)
の
美少年
(
びせうねん
)
、
何處
(
いづこ
)
より
落
(
お
)
ちたりけん、
華嚴
(
けごん
)
の
瀧
(
たき
)
の
底
(
そこ
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、
巖
(
いは
)
の
缺
(
かけら
)
と
藻屑
(
もくづ
)
とともに、
雲
(
くも
)
より
落
(
お
)
ちつと
覺
(
おぼ
)
しきが、
助
(
たす
)
けを
呼
(
よ
)
ぶか
諸手
(
もろて
)
を
上
(
あ
)
げて、
眞俯向
(
まうつむ
)
けに
流
(
なが
)
れ
來
(
き
)
しが、あはよく
巖
(
いは
)
に
住
(
とゞ
)
まりて
妙齢
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
白い
諸手
(
もろて
)
を
細杖
(
ほそづゑ
)
の
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
先鋒は、猛夫の
李逵
(
りき
)
だ。なんでただ見ていよう。例の二
挺
(
ちょう
)
斧
(
おの
)
を
諸手
(
もろて
)
に、濠へ下りて、浅瀬から馳け渡らんとする様子に、楊雄はおどろいて、連れもどした。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一方の足を抜けば、また一方の足——足が抜けたかと思うと、
諸手
(
もろて
)
がそれよりも深くハマリ込んでいる。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、叱りながら、城太郎の腰帯へ
諸手
(
もろて
)
をかけて、武蔵は、自分の頭の上に、高々と差し上げてしまった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして
諸手
(
もろて
)
の
櫂
(
かい
)
の木剣が、風を起してうごいたのと、巌流の長剣が、切っ下がりに、彼の
真眉間
(
まみけん
)
を割って来たのと、そこに差というほどの差は認められなかった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
巌流は、その武蔵に直面し——また、前面の大海原に対して、長剣物干竿を
諸手
(
もろて
)
に
振
(
ふ
)
りかぶっていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さては
横
(
よこ
)
にひく
車戸
(
くるまど
)
かと、
諸手
(
もろて
)
をかけて
試
(
こころ
)
みたが、ぎしッといっただけで一
寸
(
すん
)
も
開
(
ひら
)
かばこそ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三宅は自己の勝利を信じて、中段に構えを変え、機を見て
諸手
(
もろて
)
に突いてゆくと、武蔵は
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とつぜん、宮のうしろから鬼のような固い具足の
諸手
(
もろて
)
が組みついて来た。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それには日本左衛門にも、
頷
(
うな
)
ずかれる節がある。
真土
(
まつち
)
の上の黒髪堂で、突然、かれが斬りつけてきた抜きうちは
諸手
(
もろて
)
をかけてきたのであって——今思えばあの時面箱を持っていた様子はなかった。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又八の襟がみを
諸手
(
もろて
)
につかんで、婆は振りうごかすのであった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
諸
常用漢字
小6
部首:⾔
15画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“諸手”で始まる語句
諸手突