表情へうじやう)” の例文
來年らいねんになれば、やすさんのはううか都合つがふしてあげるつて受合うけあつてくだすつたんぢやなくつて」といた。小六ころく其時そのとき不慥ふたしか表情へうじやうをして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一體きれの長い、パツチリした眼で、表情へうじやうにもむでゐた。雖然智識ちしきのある者と智識のない者とは眼で區別することが出來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そのまましばらくことば途切とぎれた。青木さんもおくさんも明るい、たのしげな表情へうじやうで、身動みうごきもせずにかんがへこんでゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれ蕎麥そばつかむのをめておつたのはういた。かれしがめてかほすこきまりの惡相わるさうな一しゆ表情へうじやううかべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
哀楽あいらく表情へうじやうもなくしたしげに畜類ちくるゐならびつつなにをか凝視みつむ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼等かれら各自めい/\つて種々いろ/\かくれた性情せいじやう薄闇うすぐらしつうちにこつそりとおもつて表現へうげんされてた。女房はようばう言辭ことば悉皆みんなかほたゞ驚愕おどろき表情へうじやうもつおほはしめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
御米およねそむいてゐたから、宗助そうすけにはかほ表情へうじやう判然はつきりわからなかつたけれども、其聲そのこゑ多少たせうなみだでうるんでゐるやうおもはれた。いままで仰向あふむいて天井てんじやうてゐたかれは、すぐさいはうなほつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
青木さんはちよつとさびしさうな表情へうじやうでいつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
卯平うへいくぼんだしがめて一しゆあたゝかな表情へうじやうしめして與吉よきち後姿うしろすがたた。勘次かんじつたまき草刈籠くさかりかごれてかまどまへいて朝餉あさげぜんむかつて、一わんつた。おつぎはがついたやう
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なに不景氣ふけいきかほさへしなければ、何處どこつたつて驩迎くわんげいされるもんだよ」と學友がくいう安井やすゐによくはなしたことがあつた。實際じつさいかれかほは、ひと不愉快ふゆくわいにするほど深刻しんこく表情へうじやうしめためしがなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)