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へうじやう
彼は
蕎麥を
攫むのを
止めておつたの
方を
向いた。
彼は
蹙めて
居た
顏に
少し
極りの
惡相な一
種の
表情を
浮べた。
哀楽の
表情もなく
親しげに
畜類の
眼と
並びつつ
何をか
凝視む。
彼等の
各自が
持つて
居る
種々な
隱れた
性情が
薄闇い
室の
内にこつそりと
思ひ
切つて
表現されて
居た。
女房の
言辭は
悉皆の
顏を
唯驚愕の
表情を
以て
掩はしめた。