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笞
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むち
ふりがな文庫
“
笞
(
むち
)” の例文
自分自身を
鞭
(
むちう
)
たなければならないはずであったのに、その
笞
(
むち
)
を言葉に含めて、それをおぬいさんの方に投げだしたのではなかったか。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一たんそうした心理が、芽ばえてきたが最後、もうどうすることもできなかった。細君の一挙一動が、彼にとっては拷問の
笞
(
むち
)
になった。
二人の盲人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
鶴見はここで彼をたしなめる
笞
(
むち
)
の音をはっきり聞いた。なるほどそうである。贖物を
供
(
そな
)
えずにいて、それなりに若返るすべはない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
子に良縁ありてよき嫁を娶り、孫を生まずとてこれを怒り、その嫁を叱り、その子を
笞
(
むち
)
うち、あるいはこれを勘当せんと欲するか。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「こういたせ」「こう仲直り」「それは甲が悪い、
笞
(
むち
)
を打って放せ」「これでは乙が
不愍
(
ふびん
)
である、丙はいくらいくらの損害をやれ」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
またそうした先輩達の
笞
(
むち
)
から、いつも
庇
(
かば
)
ってくれるコオチャアやO・B達に対しても、ぼくの過失はなお済まない気がします。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
古エジプト人これを飼い教えて
無花果
(
いちじく
)
を集めしめたが、今はカイロの町々で太鼓に合わせて踊らされ、少しく間違えば用捨なく
笞
(
むち
)
うたるるは
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この
囚人
(
めしうど
)
はおよそ十人ばかりであろう。そのあとから二、三十人の男が
片袒
(
かたはだ
)
ぬぎで長い鉄の
笞
(
むち
)
をふるって追い立てて来た。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
晩には、汗まみれになり疲れはてて、緑の帽子を目深にかぶり、監視の者の
笞
(
むち
)
の下に、海に浮かんだ徒刑場の
梯子段
(
はしごだん
)
を二人ずつ上ってゆくのだ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「あんなやつは
笞
(
むち
)
でひっぱたいてやってもあきたりないわ、
処刑台
(
だい
)
へのせて、首切り役を使って、大ぜいの前で……!」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しかしコラムは立ち上がって壁にかけてあった
笞
(
むち
)
をとった。しぶい微笑がその黒い髭の中に巣くう鳥のように動いた。
魚と蠅の祝日
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
「あなたが予審判事にわれわれのことで苦情を言ったものだから、われわれは
笞
(
むち
)
で打たれなけりゃあならないんです」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
過酷な労働が強制され、白人監督に
笞
(
むち
)
打
(
う
)
たれる黒色人褐色人の悲鳴が日毎に聞かれた。脱走者が相継ぎ、しかも彼等の多くは捕えられ、或いは殺された。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
が、この苦悩は巨人を殺すために与えられた
笞
(
むち
)
ではなかった。絶望と孤独が、
散々
(
さんざん
)
に大きな魂をさいなみ続けた末、巨人は
豁然
(
かつぜん
)
として大悟したのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
たとえば五十の
笞刑
(
ちけい
)
という判決であれば、カッツァーンがこれに従って被告をば会堂の中で五十
笞
(
むち
)
打ったのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
そして松林の中の粉つぽい白い砂土の
小径
(
こみち
)
を駅の方へとぼ/\歩いた。地上はそれ程でもないのに空では
凄
(
すさま
)
じい春風が
笞
(
むち
)
のやうにピユーピユー鳴つてゐる。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
わたしはあえてがたがたするひとびとにわざわざ
笞
(
むち
)
打ってまでふぐの
提灯
(
ちょうちん
)
持ちなんかしやしない。
河豚食わぬ非常識
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「女の
許
(
もと
)
へ行くか。
笞
(
むち
)
を忘るるな{11}」とは老婆がツァラトゥストラに与えた勧告であった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
今は時も
艱
(
かた
)
い上に、軽いものは
笞
(
むち
)
、
入墨
(
いれずみ
)
、追い払い、重いものは
永牢
(
えいろう
)
、打ち首、獄門、あるいは家族非人入りの厳刑をさえ覚悟してかかった旧時代の百姓
一揆
(
いっき
)
のように
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これもまた牛馬が用いられた世の事で何の不思議もないことであった。牛は力の限りを尽して歩いている。しかも牛使いは
力
(
つと
)
むること
猶
(
なお
)
足らずとして、これを
笞
(
むち
)
うっている。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さながら皇天ことにわれ一
人
(
にん
)
をえらんで
折檻
(
せっかん
)
また折檻の
笞
(
むち
)
を続けざまに打ちおろすかのごとくに感ぜらるる、いわゆる「泣き
面
(
つら
)
に
蜂
(
はち
)
」の時期少なくとも一度はあるものなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
むかし耶蘇教の
弟子
(
でし
)
パウロは新しき宗教を奉じた
咎
(
とが
)
をもって
捕縛
(
ほばく
)
せられ
笞
(
むち
)
うたれ、
獄
(
ごく
)
に投ぜられ種々の苦を受けたが、ついに国王の前に呼び出され、御前裁判を受けたとき
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
それは、ただ神の
笞
(
むち
)
を受けるために、うなだれて審判の台に向う事のような気がしているのでした。地獄は信ぜられても、天国の存在は、どうしても信ぜられなかったのです。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
小さな鬼のやうに
跳
(
と
)
び出して顫へる私の
掌
(
てのひら
)
やすくめた頸すぢを
笞
(
むち
)
打たうと待ちかまへて、何時もそこに忍んでゐたあの昔恐れた鞭の細長い形を見ることを半ば豫期して、私は
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
寧
(
むし
)
ろ必要とするところでもあったので、
笞
(
むち
)
を嬉ぶ
贖罪
(
しょくざい
)
者の気でじっと辛抱して勉強した。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
実に一瞬ではあったけれど、私の
絶々
(
たえだえ
)
な気持ちによく
笞
(
むち
)
打ってくれるものがありました。その恋愛は、私との愛情がまだ終りをつげないうちにほろんで亡くなってしまいました。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
笞刑は言ふ迄もなく、
尻
(
しり
)
つ
辺
(
ぺた
)
を叩くので、それに用ひられる
笞
(
むち
)
が新しく買ひ込まれた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
探索隊の役人たちは、やむなく老夫婦を
縛
(
しば
)
り上げ、
笞
(
むち
)
うち、責めさいなんで、山から引きずりおろして来た。里に出て宿を取るときには、逃亡を怖れて老夫婦に
磨
(
す
)
り
臼
(
うす
)
を背負わせた。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
人を喜ばせるためにのみ努力した結果がこんなことになるなど、しかもそれは、全然予期しなかったことではなかった筈なのに。貞子のあの含みのある言葉の数々が、
笞
(
むち
)
となってこたえる。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
重敲
(
じゅうたたき
)
というから百の
笞
(
むち
)
、その上伝馬町御牢門前から江戸払いに突っ放された。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
次郎は、いきなりぴしりと胸に
笞
(
むち
)
をあてられたような気がした。かれの眼には、大河の、今朝のしずまりきった静坐の姿がひとりでに
浮
(
う
)
かんで来た。むろん、先生に返す言葉は見つからなかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
第二は神より人に下る
懲治
(
こらしめ
)
としての苦難である。これ愛の
笞
(
むち
)
である。恵の鞭である。これまではエリパズも知りヨブもまた認めている。しかるにここにヨブもエリパズも他の二友も知らぬ苦難がある。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それも多く
笞
(
むち
)
や棒でなぐる、しかもそこが国民的なんだよ。わが国では耳を釘づけにするなんてことは夢にも考えない。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
譬えば某国の律に、「金十円を盗む者はその刑、
笞
(
むち
)
一百、また足をもって人の面を
蹴
(
け
)
る者もその刑、笞一百」とあり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
あああなたは
生々
(
なまなま
)
しい真実を好まれないのです。がキリストはそれを好んでいた。キリストは
笞
(
むち
)
を取ってエルサレムの寺院から
奸商
(
かんしょう
)
らを追い放った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
江戸町奉行所の前で、百の
笞
(
むち
)
に打叩かれた果て、罪の
莚
(
むしろ
)
から
放逐
(
ほうちく
)
された——あの時の姿のままの又八である。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
聖徳太子四歳の
御時
(
おんとき
)
のことと伝えられている。みずからその
笞
(
むち
)
をうけんと、父皇子の前に進んで出られた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
一方、投獄された酋長達が毎日
笞
(
むち
)
打
(
う
)
たれているという噂もあった。こうした事を
見
(
み
)
聞
(
きき
)
するにつけ、スティヴンスンは、自らを、何の役にも立たぬ文士として責めた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
次に上帝
驢
(
ろ
)
を招き、汝は苦労せにゃならぬ、すなわち、常に重荷を負い運び、不断
笞
(
むち
)
うたれ叱られ、休息は
些
(
ちと
)
の間で
薊
(
あざみ
)
や
荊
(
いばら
)
の粗食に安んずべく、寿命は五十歳と宣う。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
弁護士はブロックの望みをかなえてやったのではなくて、
笞
(
むち
)
で打つぞとでもいうようにおどしたのだ、と思えそうだった。今やブロックがほんとうに震えはじめたからである。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
軽いものは
笞
(
むち
)
、
入墨
(
いれずみ
)
、追い払い、重いものは
永牢
(
えいろう
)
、打ち首のような厳刑はありながら、進んでその苦痛を受けようとするほどの要求から動く百姓の誠実と、その犠牲的な精神とは
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
専門の陶家は
固
(
もと
)
より、陶家を贔屓にしておられる方々などから憎悪の
笞
(
むち
)
を以て打たれるのでありますが、私はその犠牲を払って憎悪をものともせず、その答を多年に渉って
潜
(
くぐ
)
り抜けして
近作鉢の会に一言
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
と言つても、背に
笞
(
むち
)
してひたすら学業にいそしむことを怠りはしなかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
五里霧中で、そうして時たま、虎の尾を踏む失敗をして、ひどい痛手を負い、それがまた、男性から受ける
笞
(
むち
)
とちがって、内出血みたいに極度に不快に内攻して、なかなか
治癒
(
ちゆ
)
し難い傷でした。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
笞
(
むち
)
うちたいほどに罵り悔まずにいられなかった。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
叩
(
たた
)
くに
都合
(
つごう
)
のよい
笞
(
むち
)
だ
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
百姓はそれを打つ、猛烈に打つ、ついには自分でも何をしているのかわからないで、打つという動作に酔ってしまって、力まかせに数知れぬ
笞
(
むち
)
の雨を降らすのだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
かつて
長安
(
ちょうあん
)
都下の悪少年だった男だが、前夜
斥候
(
せっこう
)
上の手抜かりについて
校尉
(
こうい
)
・
成安侯
(
せいあんこう
)
韓延年
(
かんえんねん
)
のために衆人の前で
面罵
(
めんば
)
され、
笞
(
むち
)
打たれた。それを含んでこの挙に出たのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
自分たちの
莚
(
むしろ
)
の前に、小さい手桶に
竹柄杓
(
たけびしゃく
)
が添えてある。この手桶は、
笞
(
むち
)
で打ちすえる奉行所にも、一
掬
(
きく
)
の情けはあるのだぞというように、無言の
相
(
すがた
)
を持ってそこにあった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わが家財を盗まんとする者あらば捕えてこれを
笞
(
むち
)
うち、差しつかえなき理なれども、一人の力にて多勢の悪人を相手にとり、これを防がんとするも、とても叶うべきことにあらず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
笞
漢検1級
部首:⽵
11画
“笞”を含む語句
笞刑
笞打
笞刑吏
笞懲
笞責
鞭笞