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漸々
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ようよう
ふりがな文庫
“
漸々
(
ようよう
)” の例文
など話しながら、足は
疲労
(
くたび
)
れても、
四方
(
あたり
)
の風景の
佳
(
い
)
いのに気も代って、
漸々
(
ようよう
)
発光路に着いたのがその日の午後三時過ぎでありました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
事務所から疲れ切って道子は義兄と会食の約束があった竹葉へかけつけ、折角であった御馳走も今
漸々
(
ようよう
)
胸に落付いたような工合である。
築地河岸
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、
漸々
(
ようよう
)
ブランコに這上ることは出来たが、もうとても、葉子の手にぶら下って、元のブランコに飛び帰る事は出来なかった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
世の中は不患議なもので、わたしもそのまま死にもせず、あれから
幾十
(
いくそ
)
の寂しさ
厭苦
(
つら
)
さを
閲
(
けみ
)
した上でわたしは
漸々
(
ようよう
)
死にました。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
昨日
(
きのう
)
私が越した時は、先ず第一番の危難に逢うかと、
膏汗
(
あぶらあせ
)
を流して
漸々
(
ようよう
)
縋
(
すが
)
り着いて
上
(
あが
)
ったですが、何、その時の親仁は……平気なものです。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
私はここまで来て
漸々
(
ようよう
)
奥さんを説き伏せたのです。しかし私から何にも聞かないKは、この
顛末
(
てんまつ
)
をまるで知らずにいました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「おや何かしらん」と
怪
(
あやし
)
みつつ
漸々
(
ようよう
)
にその
傍
(
わき
)
へ
近付
(
つかづ
)
いて見ると、岩の上に若い女が
俯向
(
うつむ
)
いている、これはと思って横顔を
差覘
(
さしのぞ
)
くと、
再度
(
ふたたび
)
喫驚
(
びっくり
)
した。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
夜が
更
(
ふ
)
けるにつれ、
夜伽
(
よとぎ
)
の人々も、
寝気
(
ねむけ
)
を
催
(
もよお
)
したものか、
鉦
(
かね
)
の音も
漸々
(
ようよう
)
に、遠く消えて行くように、
折々
(
おりおり
)
一人二人の叩くのが
聞
(
きこ
)
えるばかりになった。
子供の霊
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
御旗本ヘ対シテ不礼言語同断ノ故
咎
(
とが
)
メシナリ、講中
漸々
(
ようよう
)
広クナラントスル時ニ、最早心ニ
奢
(
おご
)
リヲ生ジタ故、右ノ如ク不礼アリ、随分慎ンデ取続ク様ニトテ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
母「本当にまア私はどんなに案じたか知れないよ、
何所
(
どこ
)
に何うして居るかと思ったうち
漸々
(
ようよう
)
天神山に居ることが知れてねえ、手紙を出したが知れましたろう」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それが
漸々
(
ようよう
)
とその議論を聴き、
技倆
(
ぎりょう
)
を認め、ついに崇敬することとなりこちらから降服したという姿です
子規と和歌
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
漸々
(
ようよう
)
のおもひで、金を貰ひに行つたのさへ、たゞ母親の不機嫌な顔を見るのが嫌なばかりなのに、さうして、どうにか持つて帰つて、まだ座りもしない前からいきなり
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
お勢はその頃になッて
漸々
(
ようよう
)
起きて来て、入ろうとする、——縁側でぴッたり出会ッた……はッと
狼狽
(
うろた
)
えた文三は、
予
(
かね
)
て
期
(
ご
)
した事ながら、それに引替えて、お勢の澄ましようは
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それで
漸々
(
ようよう
)
真相
(
こと
)
が解かりましたわい。実は私も見付の在所で、お下りのお客様からそのお噂を承りまして
聊
(
いささ
)
か奇妙に存じておりましたところで……と申しますのはほかでも御座いませぬ。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
漸々
(
ようよう
)
二人が近寄って
遂
(
つい
)
に
通過
(
とおりす
)
ぎる途端、私は思わずその
煙草
(
たばこ
)
を一服強く吸った拍子に、その火でその人の横顔を
一寸
(
ちょいと
)
見ると驚いた、その
蒼褪
(
あおざめ
)
た顔といったら、
到底
(
とうてい
)
人間の顔とは思われない
青銅鬼
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
この事は非常に秘密に
致
(
いたし
)
をり候やうに
承
(
うけたまわり
)
をり候が実は今度東京の慶応義塾にてその文学部を大刷新しこれより
漸々
(
ようよう
)
文壇において大活動を
為
(
な
)
さむとする計画これありそれにつき文学部の中心となる人物を
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「それで二人は」と岡本が平気で語りだしたので
漸々
(
ようよう
)
静まった。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
秋も
漸々
(
ようよう
)
終ろうとする頃
母へ
(新字新仮名)
/
長沢佑
(著)
これから
漸々
(
ようよう
)
そのことについて語り、生活のよりよい建設に参加する意志に立つ文学を生み出すことを、どうして期待せずにいられよう。
明日咲く花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
漸々
(
ようよう
)
人の手に
扶
(
たす
)
け
起
(
おこ
)
されると、合羽を解いてくれたのは、五十ばかりの肥った
婆
(
ばあ
)
さん。
馬士
(
まご
)
が一人
腕組
(
うでぐみ
)
をして
突立
(
つッた
)
っていた。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これが彼が北の
田舎
(
いなか
)
から始めて
倫敦
(
ロンドン
)
へ出て来て探しに探し抜いて
漸々
(
ようよう
)
の事で探し
宛
(
あ
)
てた家である。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ノキ場所ヲ見附ケルニ
折悪
(
おりあ
)
シク脚気ニテ、久シク煩ッテイタ故、歩クコトガ出来ヌカラ、人ニ頼ンデ
漸々
(
ようよう
)
入江町ノ岡野孫一郎トイウ相支配ノ地面ヘ移ッタガ、ソノ時オレハ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彦七が
漸々
(
ようよう
)
其の長屋の前まで歩いて来ました時に後ろから瓦屋の隠居が声をかけました。
火つけ彦七
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
私
(
わっち
)
も
怖
(
おっ
)
かねえから真堀の定蓮寺へ逃込んで
漸々
(
ようよう
)
の事で助かったが
家
(
うち
)
を出る時ア兄貴と喧嘩アして
兄弟
(
きょうでえ
)
の縁を切る、二年越も世話になった女と一緒になるも厭になって、まごつき出した日にゃア
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜伽
(
よとぎ
)
の人々が
集
(
あつま
)
ってる座敷の方へ、フーと入って行った、それが入って行った
後
(
あと
)
には、例の薄赤い
灯
(
ひ
)
の影が、
漸々
(
ようよう
)
と暗く
蔭
(
かげ
)
って行って、真暗になる、やがて
暫時
(
しばらく
)
すると、またそれが奥から出て来て
子供の霊
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
「ですから三円だけ
漸々
(
ようよう
)
作
(
こし
)
らえましたから……」
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
昨日夕方の六時頃
漸々
(
ようよう
)
自分は此丈は間違わずにやってしまい度いと思って居た、「黄銅時代」の第一部の初稿を終った。
日記:07 一九二一年(大正十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「覚えがあるのでございますもの。
貴下
(
あなた
)
が気をつけて下すって、あの苫船の中で
漸々
(
ようよう
)
自分の身体になりました時も、そうでした、……まあ、お恥かしい。」
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
漸々
(
ようよう
)
切先ガ一寸半モカカッタト思ッタ、大勢ノ混ミ合イ場ハ長刀モヨシワルシダト思ッタ、多羅尾ハ禿頭故ニ
創
(
きず
)
ガツイタ、ソレカラ段々喧嘩ヲシナガラ、両国橋マデ来タガ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
であるから近頃に至って
漸々
(
ようよう
)
運動の功能を
吹聴
(
ふいちょう
)
したり、海水浴の利益を
喋々
(
ちょうちょう
)
して大発明のように考えるのである。吾輩などは生れない前からそのくらいな事はちゃんと心得ている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『これで散々待たされた挙句に、
漸々
(
ようよう
)
面会して五分と話が出来ないんだから嫌んなちやふよ。
碌
(
ろく
)
に話も何んにも出来やしねえ。五分や十分会はしたつて罰も当らねえだらうがなあ。』
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
真堀の定蓮寺に海禪さんが留守居をして独りで居るから
彼所
(
あすこ
)
へ行って炉の
傍
(
はた
)
に己が寝て居るから知れねえように中へ
這入
(
へえ
)
れ、
左様
(
そう
)
すれば
篤
(
とっく
)
り寝物語にしてやろうと
漸々
(
ようよう
)
欺
(
だま
)
して
私
(
わっち
)
は一足先へ来たが
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
日本の文芸批評は、十年ほど前に鑑賞批評、印象批評から発展して、
漸々
(
ようよう
)
社会的文学的にある客観的な意義をもった評価を試る段階にまで達した。
作家に語りかける言葉:『現代文学論』にふれて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
今だってやっぱり、私は
同一
(
おなじ
)
この国の者なんですが、その時は
何為
(
なぜ
)
か家を出て一月
余
(
あまり
)
、山へ入って、かれこれ、何でも生れてから死ぬまでの半分は
徜徉
(
さまよ
)
って、
漸々
(
ようよう
)
其処
(
そこ
)
を見たように思うですが。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
漸々
(
ようよう
)
二叉
(
ふたまた
)
に到着する時分には満樹
寂
(
せき
)
として
片声
(
へんせい
)
をとどめざる事がある。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
近頃、
漸々
(
ようよう
)
一体の注意を呼び始めた、ロシアの大飢饉と云うことに対しても、真の意味で、友誼的であるべき諸邦の愛が、私は、余り鈍っていると思う。
アワァビット
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
急にものもいわれなんだが
漸々
(
ようよう
)
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分が人及び女性として、
漸々
(
ようよう
)
僅かながら立体的の円みをつけ始めると、同性の生活に対して、概念でない心そのもので対せずにはいられなく成って来た。
概念と心其もの
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
僅か十四五の時、両親には前後して死去され、
漸々
(
ようよう
)
結婚が未来の希望を輝せ始めると、思いもかけず長年の婚約者との間に、家族的な障碍が
横
(
よこた
)
えられました。
ひしがれた女性と語る:近頃思った事
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
頭の中も
漸々
(
ようよう
)
まとまりかけ、体も熟して来た今になって、近い内に、そのすべてがこの地上から消滅して仕舞うのだと思うと、人々の記憶に残るほどの仕事も
ひととき
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
漸々
(
ようよう
)
肉体の表現にも美をみとめるところまで来たロマンティシズムが、『明星』特に晶子の芸術において
婦人と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
二日経って
漸々
(
ようよう
)
保が発見された時、猛毒アリと大きく書いた紙が貼ってあって半地下室へ入れず、外から僅にガラスを破壊して一刻も早く空気交換をせんとすれども
おもかげ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それから一時期、沈み切らないで、今
漸々
(
ようよう
)
又自分でもやっと力の出し切れそうに思われる沈潜性が、粘りが、絡みが、生じはじめている。何と時間がかかるでしょう。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この頃
漸々
(
ようよう
)
、学校の休になって、長い間かかって居たものを二三日前に書きあげたけれ共、それにつける丁度いい題に困りきって、
昨夜
(
ゆうべ
)
も今もいやな思いをしつづけて居る。
草の根元
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
漸々
(
ようよう
)
、炬燵部屋まで持って来は来ても、早速読む気になれずに、幾度も幾度も、自分で妙だと思う程繰返して、My dearest love! と云う一字丈をながめる。
日記:06 一九二〇年(大正九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それだのに、「女大学評論」の公表されたのは
漸々
(
ようよう
)
明治三十二年になってからであった。
婦人と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私たちの文化も、
漸々
(
ようよう
)
これから私たちのものとして成長しはじめようとしている。
木の芽だち:地方文化発展の意義
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
漸々
(
ようよう
)
新婦人協会が治安警察法第五条の改正を議会に請願し、世界の社会情勢に押されて一九二二年(大正十一年)その改正建議案は貴衆両院を通過したが、その三年後には当時の内閣が
現実に立って:婦人が政治をどう見るか
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そのやって見てわかるところが
漸々
(
ようよう
)
身について来たようなところがあるのです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
先頃までは鈍かった感触が此頃
漸々
(
ようよう
)
有るべき発育を遂げたらしい心持がする。
追慕
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
漸
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
々
3画
“漸々”で始まる語句
漸々的