すく)” の例文
旧字:
しかれども人情の表裏を察し、大勢の機微を射り、立談の際に、天下の時艱じかんすくうの大作用に至りては、いまだ彼に許さざるものあるが如し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
禅家で点心てんじんというが、一片の食を投じて、霊肉の腐乱ふらんすくうという意味通りの役を、この一口の湯が、兵馬のすべてに向って与えたようです。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「世の政党内閣を主張する者は輿論を代表する党派をもって政弊をすくうの謂にあらず、むしろ党派の勢いを仮りて政権を奪わんと欲するのみ」
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
ほどこして必ずほうある者は、天地の定理ていりなり。仁人じんじんこれを述べてもっひとすすむ。ほどこしてほうのぞまざる者は、聖賢せいけん盛心せいしんなり。君子くんしこれそんして以てすくう」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この食糧品の暴騰から来る生活難をすくふには、朝鮮米をき渡らせるのもよからうし、方針をあやまつた仲小路なかこうぢ氏を農相の椅子から引きずりおろすのもよからうが
念仏または題目の力で苦艱くかんすくってやったというのとあるが、いずれにしても満足に依託いたくを果した場合には、非常に礼を言って十分な報謝をしたことになっている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
互いに相扶導輔翼ふどうほよくしてその困難をすくい、その誤謬をただし、各々その本性を発揮しつつあることも、文明の統一、人道の活躍、教育の独立に偉大なる効果の有ることである。
日本の文明 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
太昊たいこう景竜の瑞あり、故に竜を以て官に紀す〉、また〈女媧じょか黒竜を殺し以て冀州きしゅうすくう〉、また〈黄帝は土徳にして黄竜あらわる〉、また〈夏は木徳にして、青竜郊に生ず〉など
この頃の旱魃かんばつと虫害で、米価があがり、隣境からいりよねがこなくなって、餓死人が出来たので、倉を開いて賑わしたが、元価を取りて利益を取らず、また粥を焚いて貧民をすくったので
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さもなければわたくしなどはまだなかなかすくわれる女性じょせいではなかったかもれませぬ……。
幾度いくたびと無くおそるべき危険の境を冒して、無産無官又無家むか何等なんらたのむべきをもたぬ孤独の身を振い、ついに天下を一統し、四海に君臨し、心を尽して世を治め、おもつくして民をすく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
若し英雄ありて時をすくはずんば天下の乱近くぞ見へにける。是より先き定信安田家より出でゝ白河の松平氏を継ぎ、賢名あり、年ゆるに及んで部内の田租を免じ婢妾を放ち節倹自ら治む。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
「僕は真の政治家になってこの不幸な世をすくいたいと思います」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
詭弁きべんである、虚偽である、夢想である。世をすくう術数である。
二つの道 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
当世はまず人気をあおって、しかして後に事を行わんとするの風がある、これ冠履顛倒かんりてんとうで、余弊すくうべからざるものがある、よろしく人気の根元を問うべし
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
正しい学問ばかりが国をすくうことを得るのであるが、現在まではまだ誰が出てその任務に当るという者も無かった。そうして人は個々の奮闘に疲れようとしている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
現代人の多くは神経衰弱症にかゝつてゐる、そしてその神経衰弱は大抵眼から来てゐるのだから、現代人を救ふには、も一つ大きく言ふと、現代文明の廃頽的傾向をすくふには
彼れ年少気鋭、頭熱し意あがる、時事の日になるを見て、身を挺して国難をすくわんとするの念、益々ますます縦横す。おもうにその方寸の胸間、万丈の焔炎、天をく大火山の如くあるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
洪水こうずい天にはびこるも、の功これを治め、大旱たいかん地をこがせども、とうの徳これをすくえば、数有るが如くにして、しかも数無きが如し。しんの始皇帝、天下を一にして尊号そんごうを称す。威燄いえんまことに当るからず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その卵敗れてかえらずと、プリニウス説にこれを防ぐには卵の下草の下に鉄釘一本、またはすきのサキですくげた土を置けばやぶれずと、コルメラは月桂の小枝とニンニクの根と鉄釘を置けと言った。
こちらの世界せかい事情じじょうすこわかってると、それがいかに浅墓あさはかな、勝手かってかんがえであるかがよくわかりますが、あの時分じぶん私達わたくしたち夫婦ふうふはまるきりまよいのやみにとざされ、それがわがすくわれるよすがであると
史学に非んば何ぞ之をすくふに足らん。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
これは藩主にして、彼は世臣せいしんの相違はあれども、薩長二藩の関原以来蓄積したる活力を擢揮てっきし、大勢の趨向すうこう指点してんし、時艱じかんすくうの人物を鼓動したるは、実に二人先導の功に帰せざるを得ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あべこべにわたくしども夫婦ふうふはわがすくわれました。