もっと)” の例文
しかるにケーポンは施術後一年かあるいは十五か月位に至ってもっと美味びみな肉になるのでその点だけでも養鶏家には非常の利益がある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
もっともその三味線を弾く時、母親の歌った声は、まだ娘の耳に残っている。その歌は、その頃、よく分らなかったから覚えている筈がない。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「少し違うぜ、春のが、山姫のおつかわしめだと、向うへ出たのは山の神の落子おとしごらしいよ、がらゆきが——もっとも今度の方はお前にはえんがある。」
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが、半聾者にとると、もっとも不安な時で、つまり、欧氏管から入る外部の音響が、唇で遮断されてしまうからなんだよ
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ソログーブの最大傑作さいだいけっさくは『小悪魔しょうあくま』とされているが、われわれにもっと愛着あいちゃくかんじさせる、したしみぶか作品さくひん短篇たんぺんこと少年少女しょうねんしょうじょ主題しゅだいにした短篇小説たんぺんしょうせつである。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
さら彼女かのじょはその生涯しょうがいもっと重要じゅうようなる時期じき、十七さいから三十三さいまでを三浦半島みうらはんとうらし、四百ねんぜん彼女かのじょ守護霊しゅごれいしたしめる山河さんが自分じぶんしたしんだのでありました。
アンドレイ、エヒミチはこう病院びょういん有様ありさまでは、熱病患者ねつびょうかんじゃ肺病患者はいびょうかんじゃにはもっともよくないと、始終しじゅうおもおもいするのであるが、それをまたどうすることも出来できぬのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
然るに北多摩郡でももっとも東京に近い千歳村の僅か五百五十町歩の畑地はたちの中、地味ちみも便利も屈指くっしの六十余町歩、即ち畑地の一割強を不毛ふもうの寺院墓地にして了うのは、惜しいものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
みぎ御鏡みかがみ早速さっそく岩屋いわやおくの、ほどよきたかさのかべ凹所くぼみえられ、わたくし礼拝らいはいもっと神聖しんせい目標もくひょうとなりました。
何故なぜと申すでもありませんがな……先ず当節のお若い方が……というのでござる。はははは、近い話がな。もっともそう申すほど、わたくしが、まだ年配ではありませんけれども、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれもっとこのところ書物しょもつは、歴史れきし哲学てつがくで、医学上いがくじょう書物しょもつは、ただ『医者ヴラーチ』とう一雑誌ざっしっているのにぎぬ。読書どくしょはじめるといつも数時間すうじかん続様つづけさまむのであるが、すこしもそれで疲労つかれぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かみとしてもっといましむべきは怠慢たいまん仕打しうち同時どうじもっとつつしむべきは偏頗不正へんばふせい処置しょちである。怠慢たいまんながるるときはしばしば大事だいじをあやまり、不正ふせいながるるときはややもすれば神律しんりつみだす。
向うの山かけて映る工合ぐあいき目の前で燃している景色——もっともやに包まれながら——
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
故意こいならず犯罪はんざいすことがいともわれぬ、ひと讒言ざんげん裁判さいばん間違まちがいなどはありべからざることだとはわれぬ、そもそも裁判さいばん間違まちがいは、今日こんにち裁判さいばん状態じょうたいにては、もっともありべきことなので
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「さようで、もっと古歌こかでありますそうで、小野小町おののこまちの、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)