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放恣
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ほうし
ふりがな文庫
“
放恣
(
ほうし
)” の例文
その
旺盛
(
おうせい
)
な性欲的能力を他の労働もしくは精神的作業に転換するように努力すればその
放恣
(
ほうし
)
を防ぎ得るものであろうと私は想像する。
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
やはり前述のごとき個性の
放恣
(
ほうし
)
なる狂奔を制御するために個性を超越した外界から投げかける
縛繩
(
ばくじょう
)
のようなものであるかと思われる。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『西遊記』と限らず、この種のいわゆる支那の奇書くらい
放恣
(
ほうし
)
な幻想がその翼をかって、
奔放
(
ほんぽう
)
に
虚空
(
こくう
)
を
翔
(
か
)
けまわっているものも少いであろう。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「とにかく一八郎の死骸を片づけ、仔細を徳島城へ申しおくることにいたそう。いつもながら
放恣
(
ほうし
)
な三位卿、困ったことをしでかしたものだ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそんならそうかといって、丸々カワセミの
放恣
(
ほうし
)
を黙認することも、出来ない世の中にもうなってしまった。たしか
幸堂得知
(
こうどうとくち
)
の句であったが
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
樹
(
き
)
も
縄
(
なわ
)
を受けて始めて直くなるのではないか。馬に
策
(
むち
)
が、弓に
檠
(
けい
)
が必要なように、人にも、その
放恣
(
ほうし
)
な性情を
矯
(
た
)
める教学が、どうして必要でなかろうぞ。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
放恣
(
ほうし
)
なかっこうに両足を投出し、
喉
(
のど
)
をくっくと鳴らせながらけらけらと笑ったり、仲間の女の肩を抱緊めながら
蛮人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
少壮な身を暖い
衾
(
ふすま
)
の
裡
(
うち
)
に置けば、毒草の花を火の中に咲かせたような写象が
萌
(
きざ
)
すからである。お玉の想像もこんな時には随分
放恣
(
ほうし
)
になって来ることがある。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
良心の
呵責
(
かしゃく
)
のもとに、精根の尽きるような生活を、典型的な
放恣
(
ほうし
)
な異常な、自分でも心の底ではいやでたまらない生活を送ることになるよりほかはなかった。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
一は清信がいまだ豪健
放恣
(
ほうし
)
なる一家の画風を
立
(
たつ
)
るに
到
(
いた
)
らず、
専
(
もっぱ
)
ら師宣の門人
古山師重
(
ふるやまもろしげ
)
を
中間
(
ちゅうかん
)
にして菱川派の筆法を学びたる時代の制作を
窺
(
うかが
)
ふ一例とするに足ればなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
要するに解放とは社会と宗教と道徳とを無視する
放恣
(
ほうし
)
と罪悪の無分別であるかの如く
見做
(
みな
)
されたのである。女権論の代表者はかくの如き誤解に対して甚だしく憤激した。
婦人解放の悲劇
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
教会堂でしかつめらしくしてるのもよいが、
弥撒
(
みさ
)
がすんだら、新婦のまわりに夢の
渦巻
(
うずま
)
きを起こさしてやるがいい。結婚は堂々としていてしかも
放恣
(
ほうし
)
でなくちゃいかん。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
われわれが
放恣
(
ほうし
)
であるときにはわれわれをだらしなくし不潔にならしめる生殖精力も、われわれが節制するときには元気をあたえ霊感をあたえる。貞潔は人間の花である。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
あの狭隘さは、あの某々雑誌の
喧々囂々
(
けんけんごうごう
)
はいったい何事であろう。あの無秩序な、無差別な、玉石も真贋も混淆したあの評価は、あの妥協は、あの美に対する
放恣
(
ほうし
)
な反逆は。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
糧
(
かて
)
に
乏
(
とぼ
)
しい村のこどもらが、
都会文明
(
とかいぶんめい
)
と
放恣
(
ほうし
)
な
階級
(
かいきゅう
)
とに
対
(
たい
)
するやむにやまれない
反感
(
はんかん
)
です。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
自分の
放恣
(
ほうし
)
な生き方が邪魔されるのが厭で、彼の自殺もできるだけ忘れるよう努力した。
さようなら
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その予感が、花田の
放恣
(
ほうし
)
な行為を憎むことから今まで彼を遠ざけていたのではないのか?
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
彼を
苛立
(
いらだ
)
たせ、彼を傷つけ、反発心によって彼をより
放恣
(
ほうし
)
な生活に投げ入れたのである。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その代りに彼は東
羅馬
(
ローマ
)
の滅亡の内的要因となっておった
放恣
(
ほうし
)
と
婬逸
(
いんいつ
)
を受け取った。人間の病毒が知らぬ間にその人の全身を犯しているように、この新鋭の国を腐敗せしめたのである。
文明史の教訓
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そうした折など、女中達が、瑠璃子夫人の奔放な、
放恣
(
ほうし
)
な生活を非難するように
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
放恣
(
ほうし
)
と奔放もまた、規矩を
捨離
(
しゃり
)
した境地においてではなく、規矩を拘束として感じないほどに規矩を己れのうちに生かせた境地において、初めて美しく生かされるのであるということを。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
もっとつきつめて云うと、日本の男の古来の性的
放恣
(
ほうし
)
に目新しい薬味をつけ、そういう空想にひかれて崩れかかる若い女たちの危さを面白がるような気分を、伸子はよみとったのであった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
放恣
(
ほうし
)
に身を持ちくずして、困りもの
我儘
(
わがまま
)
ものとして諸家に預けられ、無籍ものの浮浪にもひとしい生活をつづけていたことをも苦にせずに、かえってその境遇を利して自由に振舞って来た。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
その知力上においては遠慮あり、将来を予備するの知識を蓄えしめざるべからず。その感情上においては主我的の
放恣
(
ほうし
)
なる運動を制する種々の体面法・習慣法の支配を被らしめざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
自分に許された小天地のうちでは
飽
(
あ
)
くまで
放恣
(
ほうし
)
なくせに、そこから一歩踏み出すと、急に謹慎の模型見たように
竦
(
すく
)
んでしまう彼女は、まるで父母の監督によって仕切られた家庭という
籠
(
かご
)
の中で
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
美的な
放恣
(
ほうし
)
、つつましやかな自由、それはどうあるべきかと追求されてもこまるけれど、とにかく以上の字義どおり
何
(
いず
)
れの女性も
心術
(
しんじゅつ
)
として
欲
(
ほ
)
しい、結果はおのずから達成せられるでありましょう。
女性の不平とよろこび
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
裏十二の中に月と花が一つずつあってこの一楽章に複雑な美しさを与える一方ではまたあまりに
放恣
(
ほうし
)
な運動をしないような規律を制定している。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
やや
驕慢
(
きょうまん
)
な、抑揚の強い声などに家老の娘という、育ちの良さよりも、
放恣
(
ほうし
)
に馴れた無遠慮な感じが眼立った。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
是を
放恣
(
ほうし
)
自由な交際の公認せられたる機会であったかのごとく、一部の
好事家
(
こうずか
)
は推断しようとしているが、そんな形ではこの
風
(
ふう
)
は永く続くことができない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
内務省の真意は公娼を倫理的に公認するのではないのであるが、世の公娼営業者、多数の
放恣
(
ほうし
)
な男子及び多数の無智な女子はその意味に解釈しようとするであろう。
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
民衆はもとより生活の豊かと安心を
渇仰
(
かつごう
)
しているが、といって、
放恣
(
ほうし
)
な快楽とか安易な自由とか、そんなものにのみ甘やかされて歓んでいるほど
愚
(
ぐ
)
なものでもあるまい。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これに反して五百の監視の
下
(
もと
)
を離れた優善は、門を
出
(
い
)
でては昔の
放恣
(
ほうし
)
なる生活に立ち帰った。長崎から帰った塩田
良三
(
りょうさん
)
との間にも、定めて
聯絡
(
れんらく
)
が附いていたことであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それから、つぶれた同じ声、風にさらされて
皺
(
しわ
)
が寄り曇ってる同じ額、
放恣
(
ほうし
)
な錯乱した定まりない同じ目つき。その上以前よりは、一種のおびえたようなまた悲しげな色が顔に増していた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
この作者がいたずらに
放恣
(
ほうし
)
な空想に身を
委
(
まか
)
せず、厳密に根本の動機に従ったことは、末尾に現われた不死の薬の取り扱い方によっても明らかである。帝は姫の贈った不死の薬を駿河の山の嶺で焼く。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
彼女らの
友誼
(
ゆうぎ
)
、その奇怪な会話、
放恣
(
ほうし
)
な行動、無遠慮な態度
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
忍び足に去ってゆくのを聞きながら、奈尾は合歓木の幹に背をもたせ、
放恣
(
ほうし
)
な姿勢でじっと眼をつむった。
合歓木の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
笑いの一番に下品なものは
放恣
(
ほうし
)
、いわゆるしもがかりの秘密や欲情の満足に伴なうものであり、その最も有害なものは
嘲罵
(
ちょうば
)
であろうが、この二つのものは支那の方でも
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
享
(
う
)
けたる女の身を、
放恣
(
ほうし
)
に
快楽
(
けらく
)
し、女の一生を、ひたすら、自由な性愛の野に遊ばせて、ひとりの恋人や、
良人
(
おっと
)
や、乳のみ児の、ありなしなどに、
顧
(
かえり
)
みていない
風潮
(
ふうちょう
)
もつよい。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは全くの
素人
(
しろうと
)
考えの空想であるが、しかし現代の
生化学
(
ビオヘミー
)
の進歩の
趨勢
(
すうせい
)
には、あるいはこんな
放恣
(
ほうし
)
な空想に対する誘惑を刺激するものがないでもないように思われるのである。
映画と生理
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
抽斎が岡西氏
徳
(
とく
)
に
生
(
うま
)
せた三人の子の
中
(
うち
)
、ただ
一人
(
ひとり
)
生き残った次男優善は、
少時
(
しょうじ
)
放恣
(
ほうし
)
佚楽
(
いつらく
)
のために、
頗
(
すこぶ
)
る渋江
一家
(
いっか
)
を
困
(
くるし
)
めたものである。優善には
塩田良三
(
しおだりょうさん
)
という
遊蕩
(
ゆうとう
)
夥伴
(
なかま
)
があった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それにはかなり大胆な
放恣
(
ほうし
)
な姿勢をとらなければならないし、或る姿勢などは、……ここでは描写することを避けるが、母親が驚きと羞恥のために眼をつむって全身を赤くして
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうして自由に
放恣
(
ほうし
)
な太古のままの秋草の荒野の代わりに、一々土地台帳の区画に縛られた水稲、
黍
(
きび
)
、
甘藷
(
かんしょ
)
、桑などの田畑が、単調で眠たい田園行進曲のメロディーを奏しながら
軽井沢
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
耳の濁りという。古今に通ぜぬくせに、我意ばかり
猛々
(
たけだけ
)
しい。これを情操の濁りと申す。日々
坐臥
(
ざが
)
の行状は、一として
潔
(
きよら
)
かなるなく、一として
放恣
(
ほうし
)
ならざるはない。これ肉体の濁りである
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女たちは杢助の脇に寝ころんだり、足を投げだしたり、極めて
放恣
(
ほうし
)
な恰好でお
饒舌
(
しゃべ
)
りをし、ときにじれったそうな声をあげて、杢助の
躯
(
からだ
)
へ抱きついたり、叩いたり
捻
(
ひね
)
ったりした。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いよいよ
放恣
(
ほうし
)
に流れた御方は、時折市中で吾儘ぶりを発揮したり、女だてらに旗本組と喧嘩沙汰を
惹
(
ひ
)
き起したことすらあるので、奉行所の与力同心たちも、
光子
(
てるこ
)
の御方が江戸へ来たため
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
放
常用漢字
小3
部首:⽁
8画
恣
常用漢字
中学
部首:⼼
10画
“放恣”で始まる語句
放恣浩蕩
放恣醜態