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手帛
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ハンケチ
ふりがな文庫
“
手帛
(
ハンケチ
)” の例文
「いや、大阪もひどいにはひどいが……」岩田氏は鼻の先の汗を邪慳に
手帛
(
ハンケチ
)
で押し
拭
(
ぬぐ
)
つた。「しかし、東京よりはましのやうです。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
家庭以外の空気に触れたため、
初々
(
ういうい
)
しい
羞恥
(
はにかみ
)
が、
手帛
(
ハンケチ
)
に振りかけた香水の
香
(
か
)
のように自然と抜けてしまったのではなかろうかと疑ぐった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
池谷医師はそのフィルムを受取って大きく肯くと、それを
手帛
(
ハンケチ
)
に包んでポケットのなかに収めて、そして連れの女を促して、足早に遊戯室を出ていった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
袂
(
たもと
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
を出して顔へ当てた。濃い眉の一部分と、額と
生際
(
はえぎわ
)
だけが代助の眼に残った。代助は椅子を三千代の方へ
摺
(
す
)
り寄せた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのなかで割合に気が進まなささうなのが男の
心
(
しん
)
の臓位のもので、持合せの
手帛
(
ハンケチ
)
に包まれさうな物だつたら、どんな物だつて
否
(
いや
)
は言はない。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
そのお客様はニッケル貨幣の棒包みを
手帛
(
ハンケチ
)
の中に丸めてお収いになりましたがどこか様子が変なので、注意して見ていますと、お客様は左手ばかりを使って手帛の端を結んでいらっしゃるのです。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は左胸部にある
表隠袋
(
おもてかくし
)
へ再び右の手を突き込んだ。しかしそこから彼の
撮
(
つま
)
み出したものは
皺
(
しわ
)
だらけになった薄汚ない
手帛
(
ハンケチ
)
だけであった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
卸
(
おろ
)
し立ての
手帛
(
ハンケチ
)
のやうに真白で
皺
(
しわ
)
の寄らない心を持つた或る
真言
(
しんごん
)
の尼僧は、半裸体の仏様のお姿を見て
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「指紋を消さないように、
手帛
(
ハンケチ
)
でも
被
(
かぶ
)
せて抜けッ」
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
繊
(
ほそ
)
い指を
反
(
そら
)
して
穿
(
は
)
めている指環を見た。それから、
手帛
(
ハンケチ
)
を丸めて、又袂へ入れた。代助は眼を
俯
(
ふ
)
せた女の額の、髪に連なる所を眺めていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その露西亜人は汚れた手先を綺麗に水で洗つたが、さて
濡手
(
ぬれて
)
を拭かうにも
手帛
(
ハンケチ
)
一つ持ち合はさなかつたので、両手をぶら下げたまゝきよろ/\
其辺
(
そこら
)
を見まはしてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
給仕に名刺を
渡
(
わた
)
して、
埃
(
ほこり
)
だらけの
受付
(
うけつけ
)
に
待
(
ま
)
つてゐる
間
(
あひだ
)
、
彼
(
かれ
)
はしばしば
袂
(
たもと
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
を
出
(
だ
)
して、鼻を掩ふた。やがて、二階の応接
間
(
ま
)
へ案内された。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
なか/\
談話
(
はなし
)
上手で石黒忠悳
男
(
だん
)
などは、肺病の
黴菌
(
ばいきん
)
は怖いが、それでも矢野の
談話
(
はなし
)
だけは聴かずには居られないといつて、宴会の席などでは
態々
(
わざ/\
)
自分の膳に
手帛
(
ハンケチ
)
を
被
(
かぶ
)
せてまで
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
余
(
あんま
)
りだわ」と云ふ声が
手帛
(
ハンケチ
)
の
中
(
なか
)
で聞えた。それが代助の聴覚を電流の如くに冒した。代助は自分の告白が
遅
(
おそ
)
過ぎたと云ふ事を切に自覚した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
紳士は真新しい白い
手帛
(
ハンケチ
)
で椅子の埃を
払
(
はた
)
き、そこらに散らばつてゐる
麺麭屑
(
パンくづ
)
を払ひ落したりした。
手帛
(
ハンケチ
)
はその朝紳士の
細君
(
かない
)
が、恩に
被
(
き
)
せながら箪笥の底から
態々
(
わざ/\
)
取り出して呉れたものだつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
千代子はそのなかで、例の
御供
(
おそなえ
)
に似てふっくらと
膨
(
ふく
)
らんだ宵子の
頭蓋骨
(
ずがいこつ
)
が、生きていた時そのままの姿で残っているのを認めて急に
手帛
(
ハンケチ
)
を口に
銜
(
くわ
)
えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
甥は
手帛
(
ハンケチ
)
のやうに真つ青な顔をして、短刀を
白木
(
しらき
)
の
鞘
(
さや
)
に納めた。猫の逃げ出した
下
(
した
)
つ
腹
(
ぱら
)
では、いつの間にか「武士道」と「孟子」とが帰つて来て、
蟇
(
ひきがへる
)
のやうに遠慮して、そつと溜息をついてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自分は何と評されても構わない気で、早速帽子を
地
(
じ
)
の上に投げると同時に、肌を抜いだ。扇を持たないので、手にした
手帛
(
ハンケチ
)
でしきりに胸の辺りを払った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とリイドは汗ばんだ咽喉をくしやくしやの
手帛
(
ハンケチ
)
で拭きながら言つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其教授は
手帛
(
ハンケチ
)
で手を
拭
(
ふ
)
きながら、
今
(
いま
)
一寸
(
ちよつと
)
と云つた儘急いで図書館へ這入つて仕舞つた。
夫
(
それ
)
ぎり
決
(
けつ
)
して
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
ない。与次郎は
之
(
これ
)
を——何とも号しなかつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分はますます
可哀
(
かわい
)
そうになった。見ると彼女の眼を
拭
(
ぬぐ
)
っていた小形の
手帛
(
ハンケチ
)
が、
皺
(
しわ
)
だらけになって
濡
(
ぬ
)
れていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は私の驚いた様子を馬鹿にするような調子でこう云ったなり、その
手帛
(
ハンケチ
)
の包をまた
隠袋
(
かくし
)
に収めてしまった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「よござんすとも」と云った時、お延は急に
袂
(
たもと
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
を出して顔へ当てたと思うと、しくしく泣き出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分は
手帛
(
ハンケチ
)
を出して顔を
拭
(
ふ
)
いた。それから上着を
脱
(
ぬ
)
いで畳の上へ
放
(
ほう
)
り出した。嫂は
団扇
(
うちわ
)
を取ってくれた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手帛
(
ハンケチ
)
で手を拭いていた人は、それを合図のように立ち上った。残る
一人
(
いちにん
)
も給仕を呼んで勘定を払った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「本当に殺されるのか」とは、自分の耳を信用しかねた彼が、
傍
(
かたわら
)
に立つ
同囚
(
どうしゅう
)
に問うた言葉である。……白い
手帛
(
ハンケチ
)
を合図に振った。兵士は
覘
(
ねらい
)
を定めた
銃口
(
つつぐち
)
を下に伏せた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いや
何所
(
どこ
)
も
彼所
(
かしこ
)
も御無沙汰で」と平岡は突然眼鏡を外して、
脊広
(
せびろ
)
の胸から
皺
(
しわ
)
だらけの
手帛
(
ハンケチ
)
を出して、眼をぱちぱちさせながら
拭
(
ふ
)
き始めた。学校時代からの近眼である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いや
何所
(
どこ
)
も
彼所
(
かしこ
)
も御無沙汰で」と平岡は
突然
(
とつぜん
)
眼鏡
(
めがね
)
を
外
(
はづ
)
して、脊広の胸から皺だらけの
手帛
(
ハンケチ
)
を出して、
眼
(
め
)
をぱち/\させながら
拭
(
ふ
)
き始めた。学校時代からの近眼である。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その教師はついこの間英国から帰ったばかりの男であったが、黒いメルトンのモーニングの尻から麻の
手帛
(
ハンケチ
)
を出して鼻の下を
拭
(
ぬぐ
)
いながら、十九世紀どころか今でもあるでしょう。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その男が
御免
(
ごめん
)
なさい、どうも
嚏
(
くしゃみ
)
が出てと、
手帛
(
ハンケチ
)
を鼻へ当てたが、嚏の音はちっともしなかったから、余はさあさあと、
暗
(
あん
)
に嚏を
奨励
(
しょうれい
)
しておいた。この男は自分で英人だと名乗った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女は
紙包
(
かみづゝみ
)
を
懐
(
ふところ
)
へ入れた。其手を
吾妻
(
あづま
)
コートから
出
(
だ
)
した時、白い
手帛
(
ハンケチ
)
を持つてゐた。鼻の所へ宛てゝ、三四郎を見てゐる。
手帛
(
ハンケチ
)
を
嗅
(
か
)
ぐ様子でもある。やがて、其手を不意に
延
(
の
)
ばした。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はフロックの上へ、とんびのような
外套
(
がいとう
)
をぶわぶわに着ていた。そうして電車の中で
釣革
(
つりかわ
)
にぶら下りながら、
隠袋
(
かくし
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
に包んだものを出して私に見せた。私は「なんだ」と
訊
(
き
)
いた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
野々宮さんは
何時
(
いつ
)
になく真黒なフロツクを
着
(
き
)
て、胸に
掛
(
かゝり
)
員の徽章を
付
(
つ
)
けて、
大分
(
だいぶ
)
人品が
宜
(
い
)
い。
手帛
(
ハンケチ
)
を出して、洋服の
袖
(
そで
)
を二三度はたいたが、やがて黒板を離れて、芝生の上を横切つて
来
(
き
)
た。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうして私の
作物
(
さくぶつ
)
をまた
賞
(
ほ
)
めてくれた。けれども私の心はむしろそういう話題を避けたがっていた。三度目に来た時、女は何かに感激したものと見えて、
袂
(
たもと
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
を出して、しきりに涙を
拭
(
ぬぐ
)
った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助は慰さめながら、
手帛
(
ハンケチ
)
で頬に流れる涙を
拭
(
ふ
)
いてやった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
帛
漢検1級
部首:⼱
8画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭