手下てした)” の例文
与吉は前にいったように無口ですが四、五人集まりますと、いつか与吉が親分らしく、外の車夫が手下てしたらしく見えるのが不思議でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
家長と家の子、といったような親しみぶかいところもある代りに、頭目とうもく手下てしたと呼び合ってもおかしくない、野人ぶりもあった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この関羽かんうびょうの中に面白い物がある。青鬼赤鬼ら地獄の鬼の姿を沢山こしらえて関羽の手下てしたのように飾ってある。その美術がてかてか面白く出来て居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そしてジャンはいつのまにかかねの力で町のおもだった人を自分の手下てしたのようにしてしまい、おそろしくえらい人間だということになってしまいました。
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
かの平造が横浜の商館に勤めているというのは嘘で、彼はある女盗賊の手下てしたになっているのだという者もあった。
平造とお鶴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「……パパの手下てしたが来て、ボクを連れてゆこうとするからって、ママ、ボクの部屋へ鍵をかけてしまいました」
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こうして、カラスたちは、この夫婦ふうふ手下てしたになって、いまでは、タカよりもフクロウよりも、ほかの鳥からおそれられているような生活をはじめたのです。
手下てしたおにどもは、しばらくのあいだはてんでんに鉄棒てつぼうをふるって、ちかかってきましたが、六にん武士ぶし片端かたはしからてられて、みんなころされてしまいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あれ以来一度も頭目の前にもひきだされないし、またその手下てしたのためいじめられもしなかった。むしろ牛丸少年は、山塞の人々から忘れられたようになっていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
付込にせ役人と相成三吉小猿を目明めあかしとなし私儀は御役人のていにて夫婦を召捕めしとり金子三十七兩を出させ其場を見遁みのがし申候其後十二月初旬はじめ手下てしたの者を原澤村の名主方迄つかはし樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きみたちのつかまえたのは、おれの手下てしたさ。ヘリコプターにのるまえに、いれかわったのさ。
かいじん二十めんそう (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこへ京の修行者しゅぎょうじゃ修行しゅぎょうして廻って行ったところが、右の浮浪の長は、汝も浮浪人だからおれ手下てしたになって運上を出せよと云って、ひどくこれを痛めつけたことが見えております。
おかしらはこういって、ひとり手下てしたにいいつけて、ようすをみせにやりました。
からつきりんなそでのぺら/\した、おそろしいながものまくあげるのだからね、うなれば來年らいねんから横町よこちやうおもてのこらずおまへ手下てしただよとそやすに、してれ二せんもらふと長吉ちやうきちくみるだらう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
命はそれでようやく、その野原からのがれ出ていらっしゃいました。そしていきなり、その悪い国造くにのみやつこと、手下てしたの者どもを、ことごとく切り殺して、火をつけて焼いておしまいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
二郎次は、知らぬに、盗坊の手下てしたになっていたことを心からかなしみました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
北条一家ほうじょういっかこうむった恩は、わたしにもまたかかっています。わたしはその恩を忘れないしるしに、あなたの手下てしたになる決心をしました。どうかわたしを使って下さい。わたしは盗みも知っています。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
手下てした野武士のぶしは、敵の三倍四倍もあるけれど、こう浮足うきあしだってしまっては、どうするすべもなかった。かれはやけ半分のをいからして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをると、酒呑童子しゅてんどうじも、手下てしたおにたちも、おもしろそうにわらいながら、すすめられるままに、「かみ方便ほうべんおに毒酒どくざけ」をぐいぐいけて、いくらでもみました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
稻葉殿イヤなんぢかくすとも茲に居る海賊共は汝が手下てした同類どうるゐなりと申し汝先年船中にてはたらきし時手疵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二十めんそうは、手下てしたをよんで、いの上くんをわたすと、ポケット小ぞうをおいかけました。
かいじん二十めんそう (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それも聞えてこないというのは、しや赤外線男に手下てしたがあるのではあるまいか。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、ひとりの手下てしたをやって、うちのようすをさぐらせました。手下がいってみますと、うちのなかはしーんとしずまりかえっています。それで、台所だいどころへはいって、あかりをつけようとしました。
いま此處へ來りし役人體の者は雲切仁左衞門の手下てしたなる三吉小猿の兩人にて甲府邊かふふへんの者三四人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
葬儀車の運転手は、運転台を降りながら、まるで泥棒の手下てしたみたいな口をいた。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
簡単にいうと、それは極めて普通の古い柱時計を指しているのであるから、さてこそ上は財閥ざいばつ巨頭きょとうから、下は泥坊市どろぼういち手下てしたまでが、あわてくさって、椅子とともに転がった次第である。
「それではきさまは、和田呂宋兵衛わだるそんべえ手下てした早足はやあし燕作えんさくだったか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手下てしたおにどももわいわいいいました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さいぜんのひとくせありげなボーイ長も、賊の手下てしたでないとはかぎりません。そのほかにも、このホテルの中には、どれほど賊の手下がまぎれこんでいるか、知れたものではないのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うむ、呂宋兵衛の手下てしたときけばなおのこと!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手下てしたおにはすぐそばへってきて
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「すると、とりこわしの人夫の中に賊の手下てしたがまじっていたというのですか。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)