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慄然
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りつぜん
ふりがな文庫
“
慄然
(
りつぜん
)” の例文
眼が見えなくなったのではないと決まったら、はじめて
慄然
(
りつぜん
)
とした。すっかりこの建物が倒壊して生き埋めになったにちがいない。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
それを除去してみて、検屍の医師はじめ警官一同は
慄然
(
りつぜん
)
としたのである。陰部から下腹部へかけて
柘榴
(
ざくろ
)
のように切り開かれている。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
なにより怖れたことは真実のわかる時である、菊千代の気性でもし自分が女だと知ったら……それは想像するだけでいつも
慄然
(
りつぜん
)
とした。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大隅学士は、カーテンの蔭に
慄然
(
りつぜん
)
と身震いした。あの洋杖は太すぎると思ったが、やはりこのように恐ろしい仕掛けがあったのである。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
旅人が
慄然
(
りつぜん
)
として頭をあげると、姿はもはや見えないが頭上のくさむらをわけ
灌木
(
かんぼく
)
の中をくぐって逃げて行く者の気配がはっきり分った。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
ラスコーリニコフは
慄然
(
りつぜん
)
として、枘の中でおどり回る栓の
鉤
(
かぎ
)
を見つめながら、今にも栓がはずれるかと、鈍い恐怖をいだいて待っていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ああこの世には、いかに多くの猛獣がいることか、いかに多くの
鷲
(
わし
)
が、ああいかに多くの鷲がいることか! 僕は
慄然
(
りつぜん
)
たらざるを得ない。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
又八道心は
慄然
(
りつぜん
)
とした。新しく建った江戸町奉行所の牢獄と役宅である。沢庵はそのどっちか分らないが一つの門の中へはいって行った。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、なにかしら
慄然
(
りつぜん
)
としたように息を詰め、
聴耳
(
ききみみ
)
を立てはじめたのであるが、やがて法水に、幽かな
顫
(
ふる
)
えを帯びた声で
囁
(
ささや
)
いた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そして、それに不気味な笑いが伴うのであった。私は思わず
背後
(
うしろ
)
の花子を振返ると、恐怖の号びをたてて
慄然
(
りつぜん
)
としてしまった。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
折しも向かいの船に声こそあれ、白由党員の
一人
(
いちにん
)
、
甲板
(
かんぱん
)
の上に立ち上りて演説をなせるなり。殺気
凜烈
(
りんれつ
)
人をして
慄然
(
りつぜん
)
たらしむ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
が、もし、この目の光りが語る真の意味を、読み取るものがあったとすれば、
慄然
(
りつぜん
)
として、肌えに粟を生ぜずにはいられなかったであろう。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そして恐怖の念に
慄然
(
りつぜん
)
とした。最後に会った時フリッツと握手したことを、そして今日も彼の家の前を通ったことを、思い出したからである。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
促
(
せた
)
げても
頓着
(
とんじゃく
)
せず、何とか絶えず
独言
(
ひとりごち
)
つつ
鉄葉
(
ブリキ
)
の
洋燈
(
ランプ
)
に
火屋
(
ほや
)
無しの裸火、赤黒き光を放つと同時に
開眸
(
かいぼう
)
一見、三吉
慄然
(
りつぜん
)
として「
娑婆
(
しゃば
)
じゃねえ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
などと
機嫌
(
きげん
)
のいい時には、手さぐりで下の男の子と遊んでいる様を見て、もし、こんな状態のままで来襲があったら、と思うと、また
慄然
(
りつぜん
)
とした。
薄明
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかも、その前へ三方にうちのせて、供物のごとくにささげ供えられてあるものは、見るだに
慄然
(
りつぜん
)
とぶきみにとぐろを巻いた一匹の白へびでした。
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
種彦は
慄然
(
りつぜん
)
としてわが影にさえ恐れを抱く
野犬
(
のいぬ
)
のように耳を
聳
(
そばだ
)
てたが、すると物音はそれなり聞えず二階の夜は以前の通り柔かな円行燈の光ばかり。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こう思って、何も知らずに、無心に遊びつゝある子供等の顔を見る時、覚えず
慄然
(
りつぜん
)
たらざるを得ないのであります。
男の子を見るたびに「戦争」について考えます
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
のみならず、その疑いをまた弁解しようとしている。彼は
必竟
(
ひっきょう
)
正気なのだろうか、狂人なのだろうか、——僕は書物を手にしたまま
慄然
(
りつぜん
)
として恐れた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宮は
慄然
(
りつぜん
)
として振仰ぎしが、荒尾の鋭き
眥
(
まなじり
)
は貫一が
怨
(
うらみ
)
も
憑
(
うつ
)
りたりやと、その見る前に身の
措所無
(
おきどころな
)
く
打竦
(
うちすく
)
みたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ただ、あれから二三日目にちょっとした夕立があった時、彼女はざあざあと云う雨の音を聞くと
慄然
(
りつぜん
)
とした。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二つのものの
怪
(
け
)
にぶつかったように、広太郎は
慄然
(
りつぜん
)
と身ぶるいしたが、はたして大事件が持ち上がった。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また幻聴が起ったのかと、
慄然
(
りつぜん
)
として耳を澄ますと、つい障子の外の廊下の辺で、シクシクと人の泣いている声がする。さもさも悲しげに、いつまでも泣きつづけている。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
恐怖にうちのめされ、
慄然
(
りつぜん
)
たる
悪寒
(
おかん
)
に身体を震わせながら、それからの四、五日間を、私は、自分の前に現われた自分の姿のことばかし考え
乍
(
なが
)
ら、過ごしたのでございました。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
『この下に鞭の痕がにじんでゐるのぢやないだらうか?』少年は、ふと考へて
慄然
(
りつぜん
)
とする。
地獄
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
これはどうしたこと、また自分には物思いが一つふえることになったのかと
慄然
(
りつぜん
)
とした。
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
奇怪な神秘の
顕現
(
けんげん
)
に
慄然
(
りつぜん
)
としながら、今、彼の魂は、北国の冬の湖の氷のように極度に
澄明
(
ちょうめい
)
に、極度に張りつめている。それはなおも、
埋没
(
まいぼつ
)
した前世の記憶の底を
凝視
(
ぎょうし
)
し続ける。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
このご説法のころは、われらの心も未だ仲々善心もあったぢゃ、
小禽
(
せうきん
)
の家に至るとお説きなされば、はや聴法の者、みな
慄然
(
りつぜん
)
として座に耐へなかったぢゃ。今は仲々さうでない。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そうして、自分とおなじ風の性向の人の成り行きを、まざまざ省みて、
慄然
(
りつぜん
)
とした。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
私はそんな風に酔った桂子が、深夜おそく、新宿のマーケット街を放浪する光景を想像すると
慄然
(
りつぜん
)
となる。酔うとバカに気が強くなり、警官でも与太者でも見境なく食ってかかる彼女。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
幸いに事なく過ぎて私は
顧
(
かえり
)
みた、そして帰途再びこの冒険を敢てしなければならぬと思うて、
慄然
(
りつぜん
)
として恐れたのである。ゆくこと四、五丁、山角を廻ると、太く大なる山毛欅の木がある。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
あんなに恐ろしい毒草が、案外の身近にあるかと思うと、
慄然
(
りつぜん
)
とする。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と圭一郎は、
慄然
(
りつぜん
)
と身顫ひして兩手で机を押さへて立ち上つた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
他人
(
ひと
)
ごとならぬ
慄然
(
りつぜん
)
たる思いを味わわれるに違いあるまい。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
「
森鬱
(
しんうつ
)
として、巨人のごとき大きな山が現前したとき、吾人は
慄然
(
りつぜん
)
として恐愕の念に打たれ、その底にはああ大なる力あるものよとの弱々しい声がある。しかしその声に応じて
縋
(
すが
)
りつくものが欲しいではありませぬか」
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その人は
慄然
(
りつぜん
)
として、先生の前に
懴悔
(
ざんげ
)
した。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
僕は覚えず
慄然
(
りつぜん
)
とした。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
思わず
慄然
(
りつぜん
)
と
震
(
ふる
)
えた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
けさがけに斬り放された浪人が、根株ばかりの泥田へ、横ざまに
顛落
(
てんらく
)
するのを見ながら、道の上に
犇
(
ひし
)
めいていた人々は
慄然
(
りつぜん
)
と色を喪った。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
テナルディエは
慄然
(
りつぜん
)
とした。しばらくすると、脱走が発見された後に起こる
狼狽
(
ろうばい
)
し混雑した騒ぎが監獄のうちに起こってきた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一同は
慄然
(
りつぜん
)
としてその場に立ち
竦
(
すく
)
み、この不気味な鋼鉄の怪物をこわごわ見やった。人造人間は、ピクリとも動かなかった。
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は机に
倚
(
よ
)
ってうとうとと居眠っているところを、
王妃
(
おうひ
)
の呉氏に呼び起され、今ふと見た夢に、
慄然
(
りつぜん
)
とあたりを見まわした。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、以前の
室
(
へや
)
に戻ってその一冊を開くと、法水は
慄然
(
りつぜん
)
としたように身を
竦
(
すく
)
めた。けれども、その眼には、まざまざと驚嘆の色が現われた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
大学教授といっても何もえらいわけではないけれども、こういうのが大学で文学を教えている犯罪の悪質に
慄然
(
りつぜん
)
とした。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は、
従容
(
しょうよう
)
として席に復した。が、あまたたび額の汗を
拭
(
ぬぐ
)
った。汗は氷のごとく冷たかろう、と私は思わず
慄然
(
りつぜん
)
とした。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
然るに復之を植えざるは何ぞや。虫を除くの労多きを知るが故なり。
啻
(
ただ
)
に労多きのみにあらず害虫の形状覚えず人をして
慄然
(
りつぜん
)
たらしむるものあるが故なり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
空費してる時間、投げ出してる仕事、
駄目
(
だめ
)
になってる未来、そういうことをこの虚無の間にふと思い起こすと、恐ろしくて
慄然
(
りつぜん
)
とした。しかし少しも反抗しなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
妾も覚えず
慄然
(
りつぜん
)
たりしが、さりながら、
素
(
も
)
と鋭敏の性なりければ、
能
(
よ
)
く獄則を
遵守
(
じゅんしゅ
)
して勤勉
怠
(
おこた
)
らざりし功により、数等を減刑せられ、無事出獄して、大いに
悔悟
(
かいご
)
する処あり
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
その黒い怪物が、かよわい、二十歳の娘なのかと考えると、現実家の北森氏も三島刑事も、地底の冷たい風が運んでくる一種異様の鬼気に、
慄然
(
りつぜん
)
としないではいられなかった。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
このご説法のころは、われらの心も
未
(
いま
)
だ仲々善心もあったじゃ、小禽の家に至るとお説きなされば、はや
聴法
(
ちょうほう
)
の者、みな
慄然
(
りつぜん
)
として座に
耐
(
た
)
えなかったじゃ。今は仲々そうでない。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
“慄然”の意味
《形容動詞》
恐怖で震えおののくさま。
(出典:Wiktionary)
慄
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“慄然”で始まる語句
慄然々々