必竟ひつきやう)” の例文
「でもうちこと始終しじゆうさむしい/\とおもつてゐらつしやるから、必竟ひつきやうあんなことおつしやるんでせう」とまへほゞやうとひかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
諸君は証拠を要求せらるゝが、証拠を示さぬのは必竟ひつきやう彼に対する恩恵だ——諸君は彼を道徳堅固なる君子と信仰せられる様だ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
くめと云しがをつとが此の災難さいなん必竟ひつきやう安五郎が仕業しわざなれば渠等かれら在處ありところれる上は夫が無じつの難はのがれなんにより何卒なにとぞして安五郎を尋ねいだをつと災難さいなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
過れば一望の原野開墾年々とし/″\にとゞきて田畑多しこれ古戰塲桔梗きゝやうはら雨持つ空暗く風いたはし六十三塚など小さき丘に殘れり當年の矢叫びときの聲必竟ひつきやう何の爲ぞ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
お袋などが口広い事は言へど亥之が昨今の月給に有ついたも必竟ひつきやうは原田さんの口入れではなからうか
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
必竟ひつきやう人々の思做おもひなし次第にて、苦とも樂とも見らるゝが自然の本相なり。此故に造化の作用を解釋するに、彼宿命教の旨を以てするも解し得べく、又耶蘇教やそけうの旨を以てするも解し得べし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ただに一人の兄弟を失ふのみならず社会は何程毀損きそんされるかも知れないと、——先生を殺すものは——必竟ひつきやう先生の愛心だ——アヽ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
宗助そうすけには父母ふぼ未生みしやう以前いぜんといふ意味いみがよくわからなかつたが、なにしろ自分じぶんふものは必竟ひつきやう何物なにものだか、その本體ほんたいつらまへてろと意味いみだらうと判斷はんだんした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふくろなどが口廣くちひろことへど亥之いの昨今さくこん月給げつきうありついたも必竟ひつきやう原田はらださんの口入くちいれではなからうか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
締殺しめころしたるも必竟ひつきやうはと言しが五十兩の金子の事ならん其五十兩の引負金ひきおひきんと云は如何の譯にて何につかすてしや有體ありていに申立よとの事に至り久八は元より千太郎の引負金を我身に引請ひきうけたる事がら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
提げパテンの蝙蝠かうもりかざさずして竹の子笠をる誠に清くして安樂の生涯羨ましき限りなり衣服調度の美を競ふは必竟ひつきやう自分の心を慰むる爲ならず人に羨まれん感服されんといふ爲なり其爲に心を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
必竟ひつきやう自分じぶん東京とうきやうなかみながら、ついまだ東京とうきやうといふものをことがないんだといふ結論けつろん到着たうちやくすると、かれ其所そこ何時いつめう物淋ものさびしさをかんずるのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
篠田は首打ち振りぬ「其れが女性をんなの本来でせうか——必竟ひつきやう女性を鬼になしたる社会の罪では無いでせうか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
女子衆をんなしゆ達にあとあとまでうらやまれしも必竟ひつきやうは姉さまの威光ぞかし、我れ寮住居ずまいに人の留守居はしたりとも姉は大黒屋の大巻、長吉風情ふぜいけを取るべき身にもあらず
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つけるなどとは必竟ひつきやうお熊殿の取扱とりあつかひ惡きゆゑおこる事なり何はもあれ兎角とかく家の丸くをさまるがよければ何事も堪忍かんにんあり隱居いんきよあるべしとすゝめけるにお常は大いに立腹りつぷくして一々云あらそひ氣に入ぬむこなれば地面ぢめん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女子衆達をんなしゆたちにあと/\までうらやまれしも必竟ひつきやうあねさまの威光いくわうぞかし、寮住居りようずまいひと留守居るすいはしたりともあね大黒屋だいこくや大卷おほまき長吉風情ちやうきちふぜいけをるべきにもあらず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)