心苦こゝろぐる)” の例文
嬢様ぢやうさまなにぞんじませんが、おつしやるとほりになすつたがいではござりませんか。わたくしにお気扱きあつかひかへつて心苦こゝろぐるしうござります。)と慇懃いんぎんにいふた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを但馬守たじまのかみられるのが心苦こゝろぐるしさに地方ぢかた與力よりき何某なにがしは、ねこ紙袋かんぶくろかぶせたごと後退あとずさりして、脇差わきざしの目貫めぬきのぼりうくだりう野金やきんは、扇子せんすかざしておほかくした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
けれども未だ居間に着いたときには、彼女が見たものをかりにも誤解しはしないかと思つて心苦こゝろぐるしく感じた。しかし直ぐに喜びはあらゆる他の感情を消してしまつた。
世に望みなき身ながらも、我れから好める斯かる身の上の君の思召おぼしめしの如何あらんと、折々をり/\思ひ出だされては流石さすが心苦こゝろぐるしく、只〻長き將來ゆくすゑ覺束おぼつかなき機會きくわいを頼みしのみ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
代助はちゝの様子、ちゝの言葉つかひ、父の主意、凡てが予期に反して、自分の決心をにぶらせる傾向にたのを心苦しく思つた。けれども彼は此心苦こゝろぐるしさにさへ打ち勝つべき決心をたくはへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取らんと云るゝこといと心苦こゝろぐるしけれど必ず母樣とともに父御をなだめ申べきにより時節を待ちたまへ我が身に於てはほかに男をもつこゝろなしと堅くちかひて別れければ腰元こしもとお竹は毎度いつもの通り吉三郎を送り開戸ひらきど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はるゝにこたへんとすればあかつきかねまくらにひびきてむるほかなきおもゆめとりがねつらきはきぬ/″\のそらのみかはしかりし名残なごり心地こゝちつねならず今朝けさなんとせしぞ顔色かほいろわろしとたづぬるはゝはそのことさらにるべきならねどかほあからむも心苦こゝろぐるひるずさびの針仕事はりしごとにみだれそのみだるゝこゝろひとゞめていま何事なにごとおも
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝなり、なりと點頭うなづきしが、然るにても痛はしきは維盛卿、斯かる由ありとも知り給はで、情なの者よ、變りし世に心までがと、一に我を恨み給はん事の心苦こゝろぐるしさよ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
宗助そうすけぢながら、あきらかにつぎ時計とけいおとかなければならないいま自分じぶんさら心苦こゝろぐるしくかんじた。その時計とけい最初さいしよいくつもつゞけざまにつた。それがぎると、びんとたゞひとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
父の非道を子として救ひ得ず、民の怨みをのあたり見る重盛が心苦こゝろぐるしさ。思ひれ少將
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)