トップ
>
強靱
>
きょうじん
ふりがな文庫
“
強靱
(
きょうじん
)” の例文
平次の
強靱
(
きょうじん
)
な記憶力は、日本橋本銀町の浅田屋——江戸長者番付の小結どころに坐る
大店
(
おおだな
)
の騒動を忘れているはずもなかったのです。
銭形平次捕物控:119 白紙の恐怖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかしその
強靱
(
きょうじん
)
な論理を示す文章の間に、突然魂の底から
迸
(
ほとばし
)
り出たかのような啓示的な句が現われて、全体の文章に光を投げる。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
ワーテルローの戦いにおいて賞賛しなければならないものは、イギリスであり、イギリスの
強靱
(
きょうじん
)
、イギリスの決意、イギリスの血である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
穏やかで温かい中に、
発条
(
ばね
)
のような
強靱
(
きょうじん
)
さをひそめていた相貌が、いまは屈託し疲れた老人、といったふうにしかみえなかった。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
従って、その集結、その「陣」を構成している箇々の素質の如何によって、陣全体の性格と
強靱
(
きょうじん
)
かまた
脆弱
(
ぜいじゃく
)
かのけじめが決まる。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
鉄の棒に響いて来る彼女の肉体の
強靱
(
きょうじん
)
な弾力を残忍な位ヒシヒシと心に感じながら。そこへ定が現はれた。争闘は短かかつた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
孔子からその
強靱
(
きょうじん
)
な生活力と、またその政治性とを抜き去ったような顔回という若者を、子路は余り好まない。それは決して
嫉妬
(
しっと
)
ではない。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
活溌な有機的関係によって相互的に各面が
豊饒
(
ほうじょう
)
になりつつあること、
強靱
(
きょうじん
)
になりつつあることの自覚を高めているのです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あの
白皙
(
はくせき
)
人型の越後系のがっしりした、
均齊
(
きんせい
)
のよく取れた骨格で、性格にも
恪勤
(
かっきん
)
とか忍耐とか、どんな困難に遭遇しても
撓
(
たわ
)
まない
強靱
(
きょうじん
)
さがあり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
強靱
(
きょうじん
)
な、ピラミッド型の根が幹を支えているうちに、幹は枯れ、地上に落ちたその残骸は、まるで
谿
(
たに
)
いっぱいにもつれた
蜘蛛
(
くも
)
糸をみるようであった。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
あの香り高い先生の文章とともに、あくまで清澄に、
強靱
(
きょうじん
)
に生き抜かれた先生の芸術家としての一生は、まことに天才の名にそむかぬものでありました。
泉鏡花先生のこと
(新字新仮名)
/
小村雪岱
(著)
いやなのを我慢して食うと、神経が
強靱
(
きょうじん
)
になり、強靱で逞しい小説が書けるかもしれない、そんな気がしてきた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
二つにはその光沢である。磨けば膚艶が
漆
(
うるし
)
の如く光る。三つには
強靱
(
きょうじん
)
さである。横には
裂
(
さ
)
けやすいが、縦にはとても強く、並々の力では裂くことが出来ぬ。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
強靱
(
きょうじん
)
な感情と、自然に
哺
(
はぐく
)
まれた
叡智
(
えいち
)
とをもって自然を端的に見る事のできる君のような土の子が——芸術の
捧誓者
(
ほうせいしゃ
)
となってくれるのをどれほど望んだろう。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お互に相手の鼻と云わず目と云わず
掴
(
つか
)
み合った。最初は克彦が上になっていたが、股野が巧みに位置を転倒して、針金のような
強靱
(
きょうじん
)
な腕でのどをしめつけて来た。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まず第一に現れたのは六号
画布
(
キャンバス
)
大の、紙とも付かず皮とも付かぬ
強靱
(
きょうじん
)
な
代赭
(
たいしゃ
)
色のへなへなした物に描かれた、精細なスケッチ風の油絵であった。都合三枚あった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
南壁の花を持って立っている姿などは、アマゾンの像といってもいいほどに
強靱
(
きょうじん
)
でそうして
艶
(
なま
)
めかしい。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
病巣に
石灰壁
(
せっかいへき
)
を作る方法と
些
(
いささ
)
か似ているが、白石博士の固化法では、病巣の第一層を、或る有機物から成る新発明の材料でもって、
強靱
(
きょうじん
)
でしかも
可撓
(
かとう
)
な
密着壁膜
(
みっちゃくへきまく
)
をつくり
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
終
(
しま
)
いには風呂敷包みのように、土佐犬の
強靱
(
きょうじん
)
な首で振り廻わされて死ぬ。ぐったり広場の
隅
(
すみ
)
に投げ出されて、放って置かれてからも、身体の何処かが、ピクピクと動いていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
汗をぬぐうために絶えず堅い綿布でごしごし肌をこするので
強靱
(
きょうじん
)
さを失った太田の皮膚はすぐに赤くただれ、
膿
(
うみ
)
を持ち、悪性の皮膚病のような外観をさえ示しはじめたのである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
時代苦に打ちひしがれつつ、滅びるかにみえて滅びず、苦痛の底を無器用に
這
(
は
)
いずり廻って、やがてのそのそと立ちあがる、おそろしくのろまでしかも
強靱
(
きょうじん
)
な力があったようだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
竿
(
さお
)
の先の
鋏
(
はさみ
)
をはずして袋の両端から少しずつ虫を傷つけないように注意しながら切って行った。袋の繊維はなかなか
強靱
(
きょうじん
)
であるので鈍い鋏の刃はしばしば切り損じて上すべりをした。
簔虫と蜘蛛
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「榀」とも「級」とも漢字には書いているが、シナは要するにこの樹皮が
強靱
(
きょうじん
)
で且つしなやかであるがための名で、信濃という国名もまた是に基づいているという説も古くからあった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
かの女の一方の
強靱
(
きょうじん
)
な知性に対応する一種の白痴性ではないかとも思うのである。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
薙
(
な
)
ぎはらいにかかる鎌の刃を斜め横にすべらした。
強靱
(
きょうじん
)
な野生の笹は、むざんな刃こぼれの損害でむくいてその鎌に抵抗した。到底それは、年若い高倉祐吉などの力に及ぶものではない。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
蒙衝
(
もうしょう
)
=船腹を総体に
強靱
(
きょうじん
)
な牛の皮で外装した快速の中型船。もっぱら敵の大船隊の中を駆逐し、また奇襲戦に用いる。兵六、七十人は乗る。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ラミイ——それをトリウムとセリウムの溶液に浸せば、燈火
瓦斯
(
ガス
)
のマントル材料になるし、その繊維は
強靱
(
きょうじん
)
な代りに、
些細
(
ささい
)
な熱にも変化しやすいのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
主水は亡き周防に似て、躯や顔だちは細いけれども、
芯
(
しん
)
にはねばりづよい、ひと筋の
強靱
(
きょうじん
)
なものが感じられた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし、その得意とするベートーヴェンの演奏などになると、精緻極まる演奏のうちに、
強靱
(
きょうじん
)
卓犖
(
たくらく
)
なナポレオン的な力が漲る。真に驚くべき演奏と言っていい。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
一度皮を
剥
(
は
)
がせば、あとにコルク質の皮は出来るが、元のような
強靱
(
きょうじん
)
な光沢あるものは出来ない。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
律動的で、しかも一
分
(
ぶ
)
のむだもない棒の使い方。疲れを知らぬ肉体が
歓
(
よろこ
)
び・たけり・汗ばみ・
跳
(
は
)
ねている・その圧倒的な力量感。いかなる困難をも
欣
(
よろこ
)
んで迎える
強靱
(
きょうじん
)
な精神力の
横溢
(
おういつ
)
。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
衣文
(
えもん
)
の刻み方の
強靱
(
きょうじん
)
な、
溌剌
(
はつらつ
)
とした気持ちが、どうもそのように思わせる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
大河の水の前に夜明けの光の白々とした
下
(
もと
)
に見ても、その
面
(
おもて
)
は、配所にいた頃とは、別人のような黒さと
強靱
(
きょうじん
)
さを見せていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手足も太く、指はごつごつしているが、どこかに
敏捷
(
びんしょう
)
な、ばねのような
強靱
(
きょうじん
)
なものが感じられた。毛深いたちらしい、頬から
顎
(
あご
)
にかけて硬そうな
無精髭
(
ぶしょうひげ
)
が伸びていた。
暴風雨の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
気が付いて見ると、槍の
目釘
(
めくぎ
)
の穴には、
強靱
(
きょうじん
)
な細い
紐
(
ひも
)
が結んであり、その紐に引かれて、槍の穂は欄間の蔀に引きあげられ、やがてそこから手が出て、器用に外へ引出してしまいました。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
美しく・
脆
(
もろ
)
い・花のような精神を支えるべき、生気に充ちた
強靱
(
きょうじん
)
な支柱を。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
要するに、いかに士気は
昂
(
たか
)
くとも、
強靱
(
きょうじん
)
な軍勢でも、内部の組織は、一夜仕立てである。縦糸は太いが、横糸は極めて
粗
(
あら
)
い。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
組ませておいて投げるつもりだったが、相手のくそ力に
吃驚
(
びっくり
)
した。右四つに組んだ
巨躰
(
きょたい
)
は千斤の鉄塊のように重く、じりじりと引く双腕の
膂力
(
りょりょく
)
はまんりきのように
強靱
(
きょうじん
)
であった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ほんの五六尺の
麻縄
(
あさなわ
)
ですが
強靱
(
きょうじん
)
で
逞
(
たくま
)
しくて、これは全く物凄いものです。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれど、三河にはまだ、三河人の
強靱
(
きょうじん
)
な意思がある。日吉は
商
(
あきな
)
いして歩きながらよく知っていた。このままで屈伏してしまう三河武士ではないと思う。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして同時に、その底には地熱のような、ねばり強い
強靱
(
きょうじん
)
な意力が隠れているのだ。青竜組の暴れ者五人に向って、唯一人抜刀して立ち向った時の、烈しい、断乎とした情熱が秘められているのだ。
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あまりにも
繊細
(
せんさい
)
に小智にそして無気力に
堕
(
だ
)
している近代人的なものへ、私たち祖先が過去には持っていたところの
強靱
(
きょうじん
)
なる神経や夢や
真摯
(
しんし
)
な人生追求をも、折には
宮本武蔵:01 序、はしがき
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
旗挙げ以後——殊に石橋山以来、彼の温容な貴公子風は、すっかり
強靱
(
きょうじん
)
な皮膚と信念に固められて、時によると、時政でも土肥実平でも、頭から叱りつけたりする。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もちろんこれは忽ち数倍する兵力で包囲
殲滅
(
せんめつ
)
してしまったが、その戦闘精神の
強靱
(
きょうじん
)
なことと、士節の高い心根には、寄手の将士も舌を巻いて
歎服
(
たんぷく
)
し、死体はみな一つ一つ手厚く葬って
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、難局に立てば立つほど、壮烈な意気にいよいよ
強靱
(
きょうじん
)
を加える
性
(
たち
)
だった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第四には弓も刀も刃が立たないほど
強靱
(
きょうじん
)
なんです
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“強靱”の意味
《名詞》
強靱(きょうじん)
しなやかで強く粘りがあること。
(出典:Wiktionary)
強
常用漢字
小2
部首:⼸
11画
靱
漢検準1級
部首:⾰
12画
“強”で始まる語句
強
強請
強情
強力
強飯
強盗
強者
強靭
強面
強談