年輩ねんぱい)” の例文
それは鎌倉かまくら旧家きゅうかおこりました事件ことで、主人あるじ夫婦ふうふようやく五十になるか、ならぬくらい年輩ねんぱい、そして二人ふたりあいだにたった一人ひとりむすめがありました。
おつぎはつきあさくしさがしにた。おな年輩ねんぱいあひだにはたれ惡戯いたづらであるかがすべてのみゝわたつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
八五郎がけたのを見ると、五十年輩ねんぱいの浪人者が一人、一刀を提げたまゝ、自分も脇腹をゑぐられて、土間の床几に俯向になつて死んでゐるではありませんか。
一人ひとりつまなるべしつゐするほどの年輩ねんぱいにてこれは實法じつぱふちひさき丸髷まるまげをぞひける、みたるひとるよりやがて奧深おくふかとこかせて、くゝまくらつむりおちつかせけるが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等かれら夫程それほど年輩ねんぱいでもないのに、もう其所そことほけて、日毎ひごと地味ぢみになつてひとやうにもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先を争って、待合室の木のベンチに、腰をかける。それから、いつものように、勢よく饒舌しゃべり出した。皆「僕」と云う代りに、「おれ」と云うのを得意にする年輩ねんぱいである。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いた留桶とめをけを置いて洗つてゐる年輩ねんぱいの人が、御近辺ごきんぺんのお心安こゝろやすかたと見えて言葉をかけ、甲
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
また一つには年輩ねんぱい境遇きょうぐうも同じような親友とたがいに真情をうちあけて、おれはこういうことをした、あるいはこういう悪い考えが浮かんで困ると語り合い、また友人の実験を聞いて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
主人大木蓊おおきしげるは体格のよい四十以上の男で、年輩ねんぱいからいうと、矢野とは叔父おじおいくらいの差である。文学上の交際から、矢野は大木を先輩として尊敬するほかに、さらに親しい交わりをしている。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そう聞かれると、さすがに青年は此の年輩ねんぱいの技手に対して、赤い顔をした。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれは五十才ぐらいの年輩ねんぱいで、流行のすいを集めた身なりをしていた。犬のようなまっ白なとんがった歯をして、わらうときにはそれをかみしめようとでもするようにくちびるをあとへ引っこめた。
えうするにかれぐらゐ年輩ねんぱい青年せいねんが、一人前いちにんまへ人間にんげんになる楷梯かいていとして、をさむべきことつとむべきことには、内部ないぶ動搖どうえうやら、外部ぐわいぶ束縛そくばくやらで、一切いつさいかなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
年輩ねんぱいも、たしかみことはそのときおん二十四、ひめおん十七、どちらも人生じんせい花盛はなざかりなのでございました。
もう一人、鞍掛藏人くらかけくらんどといふ恐ろしくいかめしい名を持つた浪人者が居候をして居ります。四十年輩ねんぱいの遠縁のお國者で、名前のむづかしいに似ぬ、猫の子のやうな二本差でした。
「おまえぐらいの年輩ねんぱいでいかりに乗ずるということはないはずだ」
五十年輩ねんぱいの老實らしい支配人の忠助は、何時の間にやら後ろへ來て居るのでした。
服装みなりそのほか大体だいたいわたくし案内役あんないやくのおじいさんにたりったり、ただいくらか肉附にくづきがよく、年輩ねんぱいも二つ三つわかいようにえました。それが監督かんとく竜神りゅうじんさんであることはここにことわるまでもありますまい。
三十八九、やがて四十年輩ねんぱい小作こづくりの愛想の良い男が入つて來ました。
六十年輩ねんぱいの爺や——遠州屋の仁助といふのが飛込んできました。