はた)” の例文
それらの建物はずうっと遠くにあったのですけれども見上げるばかりに高く青や白びかりの屋根を持ったりにじのやうないろのはたが垂れたり
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
旧暦六月十五日にはたを上げ、秋期彼岸にこれを下ろすに、その幡の巻き方によって風災の有無を判定することになっておる。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
だから、村の者が甘藷を出すにも、一貫目につき五厘もがよければ、二里のはたに下ろすより四里の神田へ持って行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
名刺の裏を見ると、渋谷区はたヶ谷本町としてあった。勘三は、不図、寛子と所帯を持った頃の三四年前の幡ヶ谷のアパートの事を思いだすのだ。
泣虫小僧 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
姫も乳人も眼がさめてみると、一生懸命に夫婦の裳裾もすそにしがみ着いているつもりのが、実は佛前にかゝっているはたの脚に取りすがっていたのであった。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
醒めよ、われは、日月のはたを高くかかげ、暗黒の世に光明をもたらし、邪を退しりぞけ、せいを明らかにするの義軍、いたずらに立ち向って、生命いのちをむだに落すな
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの船の姿すがたが雲にかくれて見えなくなるときの気持ちが恐ろしくなったのです。わしは何だかあの帆を見ると、とむらいの行列のはたのような気がしてなりません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
奥の方には、柩があるのであろう。夏目金之助之柩なつめきんのすけのひつぎと書いたはたが、下のほうだけ見えている。うす暗いのと香の煙とで、そのほかは何があるのだかはっきりしない。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ずゐ沈光ちんくわうあざな總持そうぢ煬帝やうだいつかへて天下第一てんかだいいち驍捷はやわざ達人たつじんたり。ていはじめ禪定寺ぜんぢやうじ建立こんりふするときはたつるに竿さをたか十餘丈じふよぢやうしかるに大風たいふうたちまおこりてはた曳綱ひきづないたゞきよりれてちぬ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すなはち京都四条坊門しじょうぼうもんに四町四方の地を寄進なつて、南蛮寺の建立を差許さるる。堂宇どうう七宝しっぽう瓔珞ようらく金襴きんらんはたにしき天蓋てんがいに荘厳をつくし、六十一種の名香は門外にあふれて行人こうじんの鼻をば打つ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
一方に幾つかのまる屋根と様様さまさまの色大理石を用ひた幾十の柱と五つの扉とを外にしたサン・マルコの大寺院が金碧朱白きんぺきしゆはくの沈雅なおもむきをした外壁ぐわいへきの絵を、前に立つた三つの大きなはたの上に光らせて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
はたかさで美々しく飾り、王みずから四種の兵隊を随えて智馬を迎え、赤銅の板を地に畳み上げて安置し、太子自ら千枝の金の蓋をささげその上を覆い、王の長女金と宝玉で飾った払子ほっすで蚊や蠅を追い去り
大尾おほを四五には はたり立て
それこそはたびたび聞いた西蔵チベット魔除まよけのはたなのでした。ネネムはげ出しました。まっ黒なけわしい岩のみねの上をどこまでもどこまでも逃げました。
彼ははたの阪川牛乳店に生れて、其処そこ此処ここに飼われた。名もポチと云い、マルと云い、色々の名をもって居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
山峡の絶巓ぜってんはいくらか平盤な地になっているとみえて、そこに賊の一群が見え「地公将軍ちこうしょうぐん」と書いた旗や、八の文を印した黄色ののぼりはたなど立て並べて
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば、衣服の木にかかりたるを見て幽霊の想像を浮かべ、はた墓間ぼかんに垂れたるを見て幽霊のごとくに感ずるの類は、外縁によりて内想を起こしたるものである。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
明州みんしうひと柳氏りうしぢよあり。優艷いうえんにして閑麗かんれいなり。ぢよとしはじめて十六。フトやまひうれひ、關帝くわんていほこらいのりてあらずしてゆることをたり。よつて錦繍きんしうはたつくり、さらまうでてぐわんほどきをなす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
街路をきよめ、はたを懸け、香をき、花を飾って歓迎する。
あとよりオズオズしてつきてゆき見れば、葬礼のとき、紙にて造りたるはたの、木の枝に掛かりたるなり。葬礼のとき、幡の木に引き掛けたるを、そのままにして置きける。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
粗末そまつながら一本のはたも立っていました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
葬礼のときに紙にて造りたるはたが、木の枝に掛かりたるのであったとのこと。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)