ちさ)” の例文
ちさき中庭を歩みて宿るべき部屋々々に登り着きぬ。我室の窓より見れば、烟波渺茫べうばうとして、遠きシチリアのあたりまで只だ一目に見渡さる。
ああ了見のちさい奴はつまらぬことを理屈らしく恥かしくもなく云うものだと、聞いているさえおかしくてたまらなさにふとそう思ったその途端
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
白樺のちさい林などを時時ときどき見るやうになつた。三日みつか目の朝にまた国境の駅で旅行券や手荷物を調べられた。午後に私の室へ一人の相客がはひつて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
みち太郎稻荷たらういなりあり、奉納ほうなふ手拭てぬぐひだうおほふ、ちさ鳥居とりゐ夥多おびたゞし。此處こゝ彼處かしこ露地ろぢあたりに手習草紙てならひざうししたるがいたところゆ、いともしをらし。それより待乳山まつちやま聖天しやうでんまうづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
エリスは床にすほどにはあらねど、ちさき鉄炉のほとりに椅子さし寄せて言葉すくなし。この時戸口に人の声して、程なく庖厨はうちゆうにありしエリスが母は、郵便の書状を持て来て余にわたしつ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ところへ過去が押し寄せて来た。二十七年の長い夢とそびらを向けて、西の国へさらりと流したはずの昔から、一滴の墨汁ぼくじゅうにもくらぶべきほどの暗いちさい点が、明かなる都まで押し寄せて来た。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「とつちやん」とちさすゑ娘に呼ばれて、門先かどさきの井戸のもと鎌磨かまと老爺おやぢもあり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
此処にちさあざが出来ているでしょう。痣なんか、私にゃありゃしなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
いずれとわかぬちさきフランスの街の名に
いつきたるちさほくらかたへ過ぎ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いとほしやちさ学生がくしやう
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ちさき蕾も見ゆるかな
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
午後はこの君達あらかた留守になり申しさふらふ。残れるはちさき人伴へる婦人達のみ、さあらぬはわたくしの如き病人にさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
當時わが目にとまりしは、けたなる形に作りたる圓柱の廊なりき。廊に圍まれたるはちさ馬鈴藷圃ばれいしよばたけにて、そこにはいとすぎ(チプレツソオ)の木二株、檸檬リモネの木一株立てりき。
と不足らしい顔つきして女を見送りしが、何が眼につきしや急にショゲて黙然だんまりになって抽斗をけ、小刀こがたな鰹節ふしとを取り出したる男は、鰹節ふし亀節かめぶしというちさきものなるを見て
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
細い足を壺のふちけて、ちさい嘴に受けた一雫ひとしずくを大事そうに、仰向あおむいてくだしている。この分では一杯の水が十日ぐらい続くだろうと思ってまた書斎へ帰った。晩には箱へしまってやった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それではこれ/\の処に菊水という、桜木ほどに清潔きれいではないが、私の気の置けないちさい家があるから、と、約束をして、私は、ものの一と月も顔を見なかったような、急々せかせかした心持をしながら
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
『あの人は来なくつてもい。ちさいのだから。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
今見るごとちさみやこに過ぎざらん。
としちさくも 幼くも
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ちさきはひしめける
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
独逸ドイツ仏蘭西フランスをかたみにめ合ふ事のみ致し、えいは大国の風ありとのみをよき事にして話より何時いつも遠ざけられさふらふも、こはこのちさき一室のみの事にて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
提香爐ひさげかうろを打ち振りても、街にありて、叫ぶ賈人あきうどとゞろく車の間に立ちても、聖母の像と靈水盛りたる瓶の下なる、ちさ臥床ふしどの中にありても、たゞ詩をおもふより外あらざりき。
はかなげに花ちさく咲きぬ。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちさき蝶の、小き花に
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちさい花子が来て見たら
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちさい花子の思ふやう
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちさい頭とくちばしが
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ちさき事一つに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)