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小庭
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こには
古ぼけた
葭戸を立てた
縁側の
外には
小庭があるのやら無いのやら
分らぬほどな
闇の中に
軒の
風鈴が
淋しく鳴り虫が
静に鳴いてゐる。
幸に
美吉屋の家には、
坤の
隅に
離座敷がある。
周囲は
小庭になつてゐて、
母屋との間には、小さい戸口の附いた
板塀がある。
恰も
切立の
崖上で、
縁の
小庭に、
飛石三つ
四つ。
躑躅——
驚くな——
山吹などを
輕くあしらつた、
此の
角座敷。
書齋の
前の
小庭は
奇麗に
掃除がして
有つて、
其處へは
鷄も
入れないやうにしてあります。
小庭を
隔てた
奧座敷で
男女打交りのひそ/\
話、
本所も、あの
餘り
奧の
方ぢやあ
私厭アよ、と
若い
聲の
媚めかしさ。
旦那業平橋の
邊が
可うございますよ。おほゝ、と
老けた
聲の
恐しさ。
此の
廂はづれに、
階下の
住居の八
疊の
縁前、
二坪に
足らぬ
明取りの
小庭の
竹垣を
一ツ
隔てたばかり、
裏に
附着いた一
軒、
二階家の
二階の
同じ
肱掛窓が、
南を
受けて、
此方とは
向を
異へて
近所で、
小さな
兒が、おもちやに
小庭にこしらへた、
箱庭のやうな
築山がある。
見透の
裏は
小庭もなく、すぐ
隣屋の
物置で、
此處にも
犇々と
材木が
建重ねてあるから、
薄暗い
中に、
鮮麗な
其淺黄の
手絡と
片頬の
白いのとが、
拭込むだ
柱に
映つて、ト
見ると
露草が
咲いたやうで
裏の
小庭で、
雀と
一所に、
嬉しさうな
聲がする。