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寂寥
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せきりょう
ふりがな文庫
“
寂寥
(
せきりょう
)” の例文
近所への人づきあいもせずに、夜遅くまで
書物
(
かきもの
)
をしていた蕪村。冬の寒夜に
火桶
(
ひおけ
)
を抱えて、人生の
寂寥
(
せきりょう
)
と貧困とを悲しんでいた蕪村。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
寂寥
(
せきりょう
)
、まるで無人のごとき鎌倉だ。波の声、山の音。どうかすると遠い遠いところで、あらしの吠えに似たようなものが夜をゆする。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
われわれは皆サロンデッキに並んで、浪と運命を共にするであろう、その船に別れを告げた。だれの心にも黒い、寒い
寂寥
(
せきりょう
)
が虫食った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
晩年近く、全く時代の
中枢
(
ちゅうすう
)
を離れ、
寂寥
(
せきりょう
)
の日々を送られたという帝は、
畢竟
(
ひっきょう
)
生涯を大伽藍のために燃焼しつくし給うたのであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
兎に角彼女の無我にして
骨身
(
ほねみ
)
を惜まぬ快活の奉仕は、主人夫婦の急激な境遇変化に伴う
寂寥
(
せきりょう
)
と不安とを如何ばかり慰めたか知れぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
夕闇
(
ゆうやみ
)
の迫っている
崖端
(
がけはな
)
の道には、人の影さえ見えなかった。
瀕死
(
ひんし
)
の負傷者を見守る信一郎は、ヒシ/\と、身に迫る
物凄
(
ものすご
)
い
寂寥
(
せきりょう
)
を感じた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今更中間のブローカー問屋や
素人
(
しろうと
)
の父の型の
極
(
きま
)
った意匠など必要はなくなった。父の住居
附
(
つ
)
きのオフィスは年々
寂寥
(
せきりょう
)
を増した。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
茫々
(
ぼうぼう
)
たる大宇宙にただ一人の孤独! その
寂寥
(
せきりょう
)
、その苦痛果していかがであったろうか。察するに余りありというべきである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
半数にも満たざるこの残り
尠
(
すくな
)
き同志中より、さらに今中尉を奪われしことは我らにとって
寂寥
(
せきりょう
)
これに過ぐるものはありません。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ただ
寂寥
(
せきりょう
)
と沈黙と暗夜とのみである。言い知れぬ
戦慄
(
せんりつ
)
が彼を襲った。一つの街路にはいり込むことは、一つの
窖
(
あなぐら
)
にはいり込むがようだった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その後に来るものは、無間地獄のような悲歎と
寂寥
(
せきりょう
)
とであった。喜助にはもう何事を望む気持もなかった。誰を待つことも考えられなかった。
仲々死なぬ彼奴
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
なんたる
寂寥
(
せきりょう
)
ぞ! 自分を愛し助言し慰めてくれる彼女がいなくなった今では、彼は
頓馬
(
とんま
)
でお坊っちゃんのまま人生に投げ出されたのだった……。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
室
(
へや
)
の中にも晩秋の
寂寥
(
せきりょう
)
は感じられた。障子の上には、二尺ぐらいの高さのところまで、かんかんと
陽
(
ひ
)
があたっている。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
この一語は疑いもなく、彼れの心中の
寂寥
(
せきりょう
)
を暗示しているものに他ならなかった。私は先ずその一事に心を打たれた。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
始終乾板に追われながら、よしにも手伝わせて、土間と庭を往復する昼のうちはそれでもいいのだが、夜になると何とも堪えかねる
寂寥
(
せきりょう
)
に襲われた。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
「しかし僕は惚れてなんか居ないよ」と天願氏は
断乎
(
だんこ
)
として言い放った。私はただうつむいて酒を飲んだ。言い様のない
寂寥
(
せきりょう
)
が私を襲ったのである。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
僕は堪えよ、堪えてゆくことばかりに堪えよ、最後まで堪えよ、身と自らを引裂く錯乱に、骨身を突刺す
寂寥
(
せきりょう
)
に、まさに死のごとき消滅感にも……。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ただ、自分は、昔からあの水を見るごとに、なんとなく、涙を落したいような、言いがたい慰安と
寂寥
(
せきりょう
)
とを感じた。
大川の水
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
寂寥
(
せきりょう
)
に
堪
(
た
)
えきれなくなって酔い痴れ、山を降って上田市や丸子、大屋、田中村なぞの宿場の
旅籠
(
はたご
)
に泊ったりしたが
流浪の追憶
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しかし同時にこの花やかな一幅の
画図
(
がず
)
を包むところの、
寂寥
(
せきりょう
)
たる月色山影水光を忘るることができないのである。
少年の悲哀
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
葛西橋の欄干には昭和三年一月
竣工
(
しゅんこう
)
としてある。もしこれより以前に橋がなかったとすれば、両岸の風景は今日よりも更に一層
寂寥
(
せきりょう
)
であったに相違ない。
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
里遠いところだなあ と思うと同時にいいしらぬ
寂寥
(
せきりょう
)
が一時に襲ってきた。それがまた目のまえの自然に反映していっそうその淋しみ懐しみを深くした。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
かくて夜の世界の不安と、
寂寥
(
せきりょう
)
と、
戦慄
(
せんりつ
)
と、魅力とが魔のごとく彼を襲い、捕えた。魔に捕えられることは恐るべき苦痛であり、また寒い喜びであった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
あまり近い所に
恰好
(
かっこう
)
な友達が出来たために学校の同級生とはそんなに遊ぶ折もなく、だんだん疎遠になっていたので、こうなると
寂寥
(
せきりょう
)
に堪えないらしく
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「彼
寂寥
(
せきりょう
)
の王座に住み、大衆に囲繞されて孤独を保ち、涙を流さんとして笑みを含む。人主の境遇でございます」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼等は間も無く享楽主義の極弊に陥り、現在では国勢ほとんど西風落日の
寂寥
(
せきりょう
)
たる光景を呈しているでないか。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
わが国の哲学界を見渡すときに、われらはうら枯れた冬の野のような
寂寥
(
せきりょう
)
を感ずるよりも、乱射した日光に
晒
(
さら
)
された乾からびた砂山の連なりを思わされる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
惑乱
(
わくらん
)
と
寂寥
(
せきりょう
)
とが、同時に彼の心を
捉
(
とら
)
えていた。「ひとりぽっち」という言葉が異様に彼の胸に響いたのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
だんだん山の中へ登って行く程
寂寥
(
せきりょう
)
ではあり、雪もだんだん深くなって来るものですから先生大いに恐怖の念を懐いて、どうか私を先に
遣
(
や
)
ってくれという。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
少年も、その輝くほどの外套を着ながら、
流石
(
さすが
)
に孤独
寂寥
(
せきりょう
)
の感に堪えかね、泣きべそかいてしまいました。お洒落ではあっても、心は弱い少年だったのです。
おしゃれ童子
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼の
経綸
(
けいりん
)
は、彼の
不覊
(
ふき
)
なる
傲骨
(
ごうこつ
)
と共に、
寂寥
(
せきりょう
)
たる
蕭寺
(
しょうじ
)
の中に葬られたり。
滔々
(
とうとう
)
たる天下は、温かなる泰平の新夢に沈睡して、呼べども
覚
(
さ
)
むべしと見えざりき。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかし、その
強気
(
つよき
)
にもかかわらず、天地のくずれ落ちる中へ、ぐんぐん、吸いこまれてゆくような、いいようもない
寂寥
(
せきりょう
)
と、孤独感とが、全身を包んでいた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
沈黙・静寂など漢字を宛てて天地の無言・絶対の
寂寥
(
せきりょう
)
など言った思想的な内容までも持たせているが、われわれは詩の読者として何度この言葉にゆき合うたか。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
または山間深林のごとき
寂寥
(
せきりょう
)
たる場所、または死人のありたる家もしくは墓場の間のごとき、幽霊に縁故ある場所において幽霊を見ることの多きを指していう。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
初秋の夜風が氷屋の
暖簾
(
のれん
)
に訪ずれる頃になると、さすがの大通りも宵から
寂寥
(
せきりょう
)
、勿論そぞろ歩きの人影は見えず、所用ある人々が足早に通りすぎるに過ぎない。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「寂しき野辺」(または、野の
寂寥
(
せきりょう
)
)は
野辺
(
のべ
)
の静けさを歌ったブラームスらしい淋しい歌だ。日本ポリドールのカタログには見えないが、スレザークが絶品だ。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
と壁に書きなぐった文字そのものが、如実に時の
寂寥
(
せきりょう
)
と、人の
無聊
(
ぶりょう
)
とを、物語っているようであります。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
文体や形式や表現なんぞの天分というものがすでに、人間的なことに対するこの冷やかな贅沢な関係を、いや、ある人間的な貧しさと
寂寥
(
せきりょう
)
とを前提としています。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
いつのまにか元どおりな崩壊したようなさびしい表情に満たされて
涯
(
はて
)
もなく君の周囲に広がっていた。君はそれを感ずると、ひたと底のない
寂寥
(
せきりょう
)
の念に襲われだした。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その激しい
戦慄
(
せんりつ
)
が少しく鎮まったかと思うと、火事場の跡のような荒涼たる
寂寥
(
せきりょう
)
が心の底をはって
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
悲しいかな、私はこの
寂寥
(
せきりょう
)
たるステーションにある一個の哀れなる信号手に過ぎないのです。彼はなぜ私以上に信用もあり実力もある人のところへ行かないのでしょうか
世界怪談名作集:06 信号手
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
今までの
寂寥
(
せきりょう
)
もけろりと忘れたように、爺さんは歯のない歯ぐきをまるだしの笑顔になっている。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
すこぶる
寂寥
(
せきりょう
)
たるものだ。主人夫婦は事件の落着するまでは毎晩旧宅へ帰って寝なければならぬ。新宅には三階に寝る妹とカーロー君とジャック君とアーネスト君である。
倫敦消息
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寂寥
(
せきりょう
)
たる樹林の底に働く人々が、わが心と描き出す幻の影にも、やはり父祖以来の約束があり、土地に根をさした歴史があって、万人おのずから相似たる遭遇をする故に
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
京では月日のたつにしたがって光源氏のない
寂寥
(
せきりょう
)
を多く感じた。陛下もそのお一人であった。
源氏物語:12 須磨
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
震災後の東京は一時無警察に近い状態となって、
寂寥
(
せきりょう
)
たるバラック街に強盗が盛に横行した。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そこにはまた、幾世紀の長さにわたるかと思われるような沈黙と
寂寥
(
せきりょう
)
との支配する原生林の大きな沢を行く先に見つけることもできる。
蘭
(
あららぎ
)
はこの谷に添い、山に
倚
(
よ
)
っている村だ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
糟谷
(
かすや
)
が自分の
周囲
(
しゅうい
)
の
寂寥
(
せきりょう
)
に心づいたときはもはやおそかった。糟谷ははるかに時代の
推移
(
すいい
)
から
取
(
と
)
り
残
(
のこ
)
されておった。
場長
(
じょうちょう
)
の
位置
(
いち
)
を
望
(
のぞ
)
むなどじつに思いもよらぬことと思われてきた。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
彼はただ何とも言われない
侘
(
わび
)
しさと
寂寥
(
せきりょう
)
とを感じて、とぼとぼと街の上を歩いていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
寂寥
(
せきりょう
)
と、夜とが、地の上に襲って来た。而して、雪は積って、寒さは益々加わった。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
“寂寥”の意味
《名詞》
寂寥(せきりょう)
もの寂しいこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
寂
常用漢字
中学
部首:⼧
11画
寥
漢検1級
部首:⼧
14画
“寂寥”で始まる語句
寂寥感