地味ぢみ)” の例文
けれども三千代は其方面の婦人ではなかつた。色合いろあひから云ふと、もつと地味ぢみで、気持きもちから云ふと、もう少ししづんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すべての草木さうもくさらあわてた。地味ぢみ常磐木ときはぎのぞいたほかみなつぎはる用意ようい出來できるまではすご姿すがたつてまでも凝然ぢつとしがみついてる。ふゆしもはせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼は石のやうに頑固なので、私は散々困り拔いた末、やつと地味ぢみな黒の繻子と眞珠色しんじゆいろをした灰色の絹とに換へるやうに、彼を説きつけた。「今度はまあそれでよい。」と彼は云つた。
派手はで地味ぢみに歐風を學んでゐたが、急風潮だつた歐風の、鹿鳴館時代の反動もあつて、漢詩をやつたり、煎茶が流行はやつたりして、道具類も支那式のものが客間に多く竝べられてゐるし
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「うん。地味ぢみもひどくよくはないが、またひどく悪くもないな。」
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あの地味ぢみな、薄暗い、不思議な
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たゞ地味ぢみ生活せいくわつをしなれた結果けつくわとして、らぬ家計くらしるとあきらめるくせいてゐるので、毎月まいげつきまつて這入はいるものゝほかには、臨時りんじ不意ふい工面くめんをしてまで
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
むし地味ぢみ移氣うつりぎこゝろ際限さいげんもなくひとつをふには年齡ねんれいあまり彼等かれら冷靜れいせい方向はうかうかたむかしめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
へやたか天井てんじやう比例ひれいしてひろさむかつた。いろかはつたたゝみいろふるはしらつて、むかし物語ものがたやうてゝゐた。其所そこすわつてゐる人々ひと/″\みな地味ぢみえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みづちかしめつたつちあたゝかい日光につくわうおもふ一ぱいうてそのいきほひづいたつちかすかな刺戟しげきかんぜしめるので、田圃たんぼはん地味ぢみつぼみたぬすこしづゝびてひら/\とうごやすくなる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼等かれら夫程それほど年輩ねんぱいでもないのに、もう其所そことほけて、日毎ひごと地味ぢみになつてひとやうにもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎がいちじるしく感じたのは、其水彩の色が、どれも是もうすくて、かずすくなくつて、対照に乏しくつて、日向ひなたへでもさないとき立たないと思ふ程地味ぢみいてあるといふ事である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
最後に地方の大地主ぢぬしの、一見地味ぢみであつて、其実自分等よりはずつと鞏固の基礎を有してゐる事を述べた。さうして、此比較を論拠として、新たに今度の結婚を成立させやうと力めた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)