きび)” の例文
新字:
が、この限られた區域の内で、毎日一時間は屋外そとで過さねばならなかつた。私たちの着物は、きびしい寒さを防ぐには十分ではなかつた。
かまあねえでけ、うなつてあつちへつてからにしろ」勘次かんじ性急せいきふきびしくおつぎをめた。おつぎは仕方しかたなくくのもかまはずにたがやした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
入れ百八十兩の金子を殘らずもどしければ九助はお里を是迄の縁と斷念あきらめ殊に伯父の娘なればきびしき事も成難しと千しんしてためたる金の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無愛嬌ぶあいけうな、見るから寒氣さむけだつてくる無人境の風景畫を遠慮も會釋もなくおし擴げたのである! わたしは見も知りもせぬ人間がきびしい顏をして
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
八五郎は急にきびしくなりました。殺される三日前、專三郎が危ふく石見銀山いはみぎんざんの鼠捕りを呑まされるところであつたといふ噂を思ひ出したのです。
大國おほくにのしるしにや、みちひろくしてくるまならべつべし、周道しうだう如砥とのごとしとかやひけん、毛詩まうし言葉ことばまでおもでらる。並木なみきまつきびしくつらなりて、えだをつらねかげかさねたり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たい中根なかね平素へいそけつして成績佳良せいせきかりやうはうではなかつた。おれ度度たびたびきびしい小言こごとつた。が、人間にんげん眞面目しんめんもく危急ききふさいはじめてわかる。おれ中根なかね眞價しんか見誤みあやまつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
今では文部省令がきびしくて、學齡前の子供を入學させる樣な事は全く無いのであるが、私の幼かつた頃は、片田舍の事でもあり、左程面倒な手續もらなかつた樣である。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかもこの温かい古い繪を冬になつて見に來たことも、他の季節には見られぬきびしさと温かさとを感じられたのである。この庭の骨ばかりを見せてゐることもいいと思うた。
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
それゆゑきびしくふたぢやないか
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おぼえておゐでになりますかしら、隨分きびしい寒さでしてね、雪が降らないと思ひますと、雨が降つたり、風が吹いたりいたしました。)
以て人殺ひとごろしは九助なりと見とめきびしく拷問がうもんに掛し事甚だ其意を得ざる取計とりはからひなりとありしかば理左衞門其儀は九助何樣申立候ともかれすそ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
喜八の顏には、言ふに言はれぬきびしさがありますが、その眼はトロトロと愛嬌がこぼれて、一寸類のないものです。
しかしさうしててもさむさが非常ひじやうきびしいときかれたゞ狹苦せまくるしい小屋こやなか麁朶そだすこしづつべるよりも比較的ひかくてきひろかまどまへよこころがした大籠おほかごからがさ/\としてぼう/\とほのほ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
子供こども時分じぶんにやきびしく仕込しこ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
彼女等もまた男が苦しむとまつたく同じに、餘りきびし過ぎる束縛の爲めに、餘りに絶對的な沈滯ちんたいの爲めに苦しめられるのである。
御用のことに口を出すな——と、日頃きびしく言はれてゐるお靜は、何處までが御用に關することか、それがわからなかつたので、ツイ言ひそびれて居たのでせう。
流し是は/\藤八樣御心切しんせつなる其おことばもとより人は殺さねど日々夜々の拷問がうもんきびしく假令たとへ白状なさねばとてとても助かるいのちにあらずと斷念あきらめし故一時も早く此世の苦痛を遁んと覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんなことで、隨分人樣に怨まれもいたしましたが、それは怨む方の無理で、きびしく取立てられるのが嫌だつたら、最初から借りない工夫をする方が宜いわけで——
最も薄汚いページであつたに相違ないのですが、賣春婦を神格化し、仙臺樣に吊し斬りにされた高尾を、貞烈無比な女と信じた時代の遊女はきびしい選擇と激しい修業と
あんまり詮議がきびしく、連れて來ることも、白状することもならず、そのうちにお春さんが自害したり、文七が慾を出したりして、到頭こんな破目になつて了ひました。
顏をおほつた白い布を取ると、思つたよりきびしい顏をして居りますが、何んの苦惱の跡もなく、顏にも身體にも、馴れた平次の眼で見ても、人に害められた形跡は露程もありません。
新三郎の眼は少しきびしく動いて、この男の全部を一瞬に讀まうとしました。
その話の筋をまとめると、腰元のお松は若殿の時之助と親しく、一しきりは目に餘ることもありましたが、身分のへだてがあるのと、母親のお勇がきびしいので、二人は次第に遠ざかつて行くらしく
誰か知らぬが、二三日前に龍の口の目安箱に、——宇佐美家の御墨附が紛失ふんしつしたに違ひない、嚴重に御詮議があるやうに——といふ訴状を投げ込んだ者があるさうで、御係りからきびしい御達しだ。
絹夜具きぬやぐに、入棺の奧方の死骸は、淺ましく寢かされたまゝですが、四十を少し越したばかりの品の良い、がきびしい顏立ちで、血の氣を失つても、中年女の美しさは、少しの衰へも見せてはをりません。
女房がきびしい訊問から解放されて、ようやくホツとした樣子です。
「賀田の旦那、——繩は少しきびし過ぎはしませんか」
さう言つた、きびしい考へを鈴川主水は持つてゐた
八五郎の言葉は少しきびしく聞えたのでせう。
平次の聲には妙にきびしいところがあります。
と言つたきびしいことが書いてあるのです。