和蘭オランダ)” の例文
新村氏は希臘ギリシヤ語や、羅甸ラテン語や、和蘭オランダ語や、そしてやくざな日本語が福神漬のやうに一杯詰つてゐる頭へ手を当てがつてじつと考へた。
だが、咸臨丸という船だけは、本来和蘭オランダから買入れた船なのだ。もう一歩進んで、その船をも日本人の手で造りたいものではないか。
この報償として和蘭オランダ人だけは鎖国の令をまぬかかれて、長崎の一部を与えられ、この地に商業を営んで盛んに利益を獲得しつつあった。
我我は盗賊、殺戮、姦淫等に於ても、決して「黄金の島」を探しに来た西班牙スペイン人、葡萄牙ポルトガル人、和蘭オランダ人、英吉利イギリス人等に劣らなかつた。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
土地の売買勝手次第又各国巡回中、待遇の最もこまやかなるは和蘭オランダの右にいずるものはない。是れは三百年来特別の関係でうなければならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一九一五年二月、私は独逸軍占領のブルツセル市を脱け出して、和蘭オランダの国境を超へ、英国に渡り、更に海峡をよぎつて仏蘭西に落ち延びた。
馬鈴薯からトマト迄 (新字旧仮名) / 石川三四郎(著)
それに、胸の方も少し痛めているので、あの和かな水と花で飾られてある和蘭オランダで、職業を研究しながら、体を恢復して来るつもりです。.
唇草 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
道具は他愛の無いものでしたが、金持の道樂の馬鹿々々しさよりも、人一人の命を取つた、和蘭オランダの赤い酒が平次には大事でした。
積んで来た十個の味噌樽が全部、ロクに調べもせずに和蘭オランダ船に積込まれて、代りに夥しい羅紗ラシャとギヤマンの梱包が、玄海丸に積込まれた。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たとへば和蘭オランダのレンブラント仏蘭西のコロオ西班牙スペインのゴヤとまた仏国の諷刺ふうし画家ドオミエーとを一時に混同したるが如き大家なりとなせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この本は三冊あり、宇田川榕庵のつくった和蘭オランダの本の訳本で、西洋の植物学を解説したものであったが、この本について植物学を勉強した。
ベルギーを見よ、和蘭オランダを見よ、チェッコを見よ、ポーランドを見よ、それからユーゴを見よ。ギリシヤを見よ、蒋介石しょうかいせきを見よ。
壁に添ってハンモックが釣るされてあったが、そこには、人間が寝ていずに、和蘭オランダあたりの船長でも着そうな、洋服が丸めて置いてあった。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
波蘭ポーランド和蘭オランダ加奈陀カナダ諾威ノルーウェー、等の国人より成り、毎週一回二時間位の部長会議を開き、各種の問題を打合せまたは討議する。
和蘭オランダ渡りで遠くの人を呼ぶ道具……。吹矢ふきやの筒のようなもの……。成程それに違げえねえ。わっしも一度見たことがある」
形而上学と云ふ、和蘭オランダ寺院楽じゐんがく諧律かいりつのやうな組立てにんだ自分の耳に、或時ちぎれちぎれの Aphorismenアフオリスメン の旋律が聞えて来た。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
鎖国令行われてより以来、我邦わがくにと通商するものは、僅かに支那シナ和蘭オランダにして、その地方もまた長崎の猫額ねこのひたい大の天地に限れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
和蘭オランダ国ニ留学ノ日亦同シク霊田ライデンニ住シ、霊田大学法学教授法学博士ヒツスセリング氏ニ就テ欧洲政学ノ要ヲ聞キ、余暇互ニ議論ヲ闘ハシタリ。
西周伝:05 序 (新字旧仮名) / 津田真道(著)
出島和蘭オランダ屋敷の絵巻物、対支貿易に使用された信牌、航海図、きりしたんころびに関する書つけ、シーボルトの遺物、フェートン号の航海日誌
長崎の一瞥 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかるにそれよりも二十何年の後、西暦一七七七年に来朝した和蘭オランダ甲比丹カピタンツンベルグは、その江戸往来の旅行において次のような見聞をしている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
和蘭オランダが不作のために、倫敦ロンドンから大口の注文があったからだ、とあの時皆は云っていたさ。ところが、今度小樽へ出て聞いてみると、そうでないんだ。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
というのは、途々みちみちウルリーケが話したとおりに、艇長の生地が和蘭オランダのロッタム島だとすれば、当然その符合が、彼を指差すものでなくて何であろう。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
外国と緩優交易に付、此後とても拒絶あらば、幸福の日本国、きわまりて航海する世界数ヶ所の強国、しかも一統と、戦闘に及ぶべく、和蘭オランダ政府確と見究め候。
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
登の頭に殺人淫楽いんらく、という意味の言葉がうかんだ。長崎で勉強したときに、和蘭オランダの医書でそういう症例をまなんだ。
盲人一流の芸者として当然の事なれども、触覚鋭敏精緻せいちにして、琉球時計という特殊の和蘭オランダ製の時計の掃除、修繕を探りながら自らやって楽しんでいた。
盲人独笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
○西洋の古画の写真を見て居たらば、二百年前位に和蘭オランダ人の画いた風景画がある。これらは恐らくはこの時代にあつては珍しい材料であつたのであらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかるに今年三月初めに至って和蘭オランダライデンの大学教授オンネス氏はついにこれをも液化し得たと伝えられる。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
又家康の時には更に西班牙と葡萄牙とを商敵とする新教国の和蘭オランダ人が現はれて家康の前に世界地図をひろげ
濠州ごうしゅう、あふりか、支那しな、日本への関門。そうです。十六世紀に、葡萄牙ポルトガル人がここの海岸へ城塁を築きました。それを、あとから和蘭オランダの征服者が改造しました。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
それが間違がつて、樅の木より先に、和蘭オランダの商船の壊れたのが沈んでしまつたり何かするのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
天井の太い梁も、隅棚の和蘭オランダの人形も、置時計も、花瓶も、木の間ごしにチラチラとうごく水明りも、眼にうつるものはすべて、もうなんの情緒もひき起さない。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
葡萄牙ポルトガル人を先駆として東洋の印度インドや支那や日本に力を伸して来たが、今はすでに英国が葡萄牙ポルトガルしりぞけ、和蘭オランダを圧して、東洋貿易を独占しようとして、支那と交易し
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そのとき、ある和蘭オランダ船のかぴたんから隅然手に入れたのがこの妖異きわまる嗜人草の苗であった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
長崎の凧は昔葡萄牙ポルトガル和蘭オランダの船の旗を模したと見えて、今日でも信号旗のようなものが多い。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
そうしないと、どこで何を騒いでるんだか一向わからないから——そこで、なにを隠そう、この僻村こそは、和蘭オランダユウトラクト在なになに郡大字おおあざ何とかドュウルンの部落である。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
独逸ドイツ人二人にガイド一人、一組は、米人と和蘭オランダ人で、ガイドが二人、この連中が手分けをして、一人はグリンデルワルトに医者と人夫を呼びに行き、一組はヘッスラーの捜索に
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
そうして林鶴一博士が和蘭オランダの雑誌へ「日本数学略史」と題して紹介を始め、独逸ではキール大学の教授で、同所の天文台長であるハルツェル博士が、「旧日本の精密科学」と題し
数学史の研究に就きて (新字新仮名) / 三上義夫(著)
軍隊洋式調練の必要が唱えらるるや、我が藩は直ちに採用して、和蘭オランダ式の銃隊を編成することとなり、その教授のために下曾根しもそね〔金三郎〕の門人なる小林大助というを召抱えられた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
和蘭オランダ南京ナンキンじゃ、そうなると、女なんかそっち除けじゃ、この皿鉢さえ一枚持ち出せば、今晩の散財は浮いてしまう、と云う、悪いことを考えだしたのじゃ、で、大引けまで、ちびり
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それを、側にゐた素焼の和蘭オランダ人が二人で抱き起したのが、丁度公爵の首の落ちたのと同時であつた。和蘭人は二人とも人の好い、腹のふくらんでゐる男である。そしてかう云つてゐる。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
通訳として和蘭オランダ甲必丹カピタンマンスダール、商人シクス、手代ヰッセールそれに羅甸ラテン語のやゝ解るドューウといふ者が立合ひ、彼等はこの日取調べる二十五箇条を箇条書にしたものを持ち
しかし独逸人に限らず、亜米利加アメリカ人でも、仏蘭西人、和蘭オランダ人……西洋人のことごとくが、ほとほと当惑した時に、顔中をしかめて投げ出すような調子で、つぶやく苦笑の言葉だったのです。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
巾着切きんちゃくきりから、女白浪——長崎で役を勤めるようになってからは、紅毛碧眼こうもうへきがん和蘭オランダ葡萄牙ポルトガル人、顔色の青白い背の高い唐人から、呂宋ルソン人まで善悪正邪にかかわらず、およそありとあらゆる
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
敷瓦しきがわら。陶器。藍絵。魚釣の図。和蘭オランダデルフト。四寸二分角。厚み三分。著者蔵。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
泉石は和蘭オランダの本も沢山買ってよく読んだ。日記の中に、非常に欲しい蘭本があるが、三両もするので買えないという記事がある。家老の身でも三両の本はちょっと買いにくかったらしい。
仏蘭西フランスから英吉利イギリスに渡り、英吉利から和蘭オランダ独逸ドイツ瑞西スイスとまわって伊太利イタリーのミラノに来た。ミラノに来たのは僕は二度目である、そうして歩いているうちに妻はいつのまにか懐妊していた。
(新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
たとえて見ると、心の奥に吉野山があるようなもので、その吉野山は唐土までも続いているという事であるが、あたかも我心も唐土は愚か天竺てんじくまでも和蘭オランダまでも続いておるというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
歓喜の最中夢中独待の下品な言葉をもらすアングロサクソン種の和蘭オランダ人、オットマン帝国の土耳古トルコ人からは古代のシステムの掟を、アイオニア民族の希臘ギリシャ人からは商売の極意を教わりました。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
またヲハイの女王額上に菊章をもんする類〈和蘭オランダ人ム、イ、ハンオーヘン氏著述、千八百五十五年鏤行、地上人民風俗通四百六十四葉の図にず〉、皇国学者をしてこれを論ぜしめば必ず云わん
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
絵かきだか何だか妙なはんじもののような者や、ポンチ画の広告見たような者や、長いマントを着てとがったような帽子をかぶった和蘭オランダの植民地にいるような者や、一種特別な人間ばかりが行っている。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)