トップ
>
兜巾
>
ときん
ふりがな文庫
“
兜巾
(
ときん
)” の例文
城隍廟
(
じょうこうびょう
)
のそば、
観音庵
(
かんのんあん
)
の家にもどると、彼はすぐさま身支度にかかった。胸に銀甲を当て、
琥珀色
(
こはくいろ
)
の
袍
(
ほう
)
に、
兜巾
(
ときん
)
をつけ髪をしばる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振り返つてクワツと眼を剥いたのは、五十近い
修驗者
(
しゆげんじや
)
、總髮に
兜巾
(
ときん
)
を頂き、輪
袈裟
(
げさ
)
をかけて
數珠
(
じゆず
)
を押し揉む、凄まじい髯男です。
銭形平次捕物控:219 鐘の音
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さていよいよ
大江山
(
おおえやま
)
へ
向
(
む
)
けて
立
(
た
)
つことにきめると、
頼光
(
らいこう
)
はじめ六
人
(
にん
)
の
武士
(
ぶし
)
はいずれも
山伏
(
やまぶし
)
の
姿
(
すがた
)
になって、
頭
(
あたま
)
に
兜巾
(
ときん
)
をかぶり、
篠掛
(
すずかけ
)
を
着
(
き
)
ました。
大江山
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
鼻筋鋭く、頬は
白澄
(
しろず
)
む、黒髪は
兜巾
(
ときん
)
に乱れて、
生競
(
はえきそ
)
った茸の、のほのほと並んだのに、
打振
(
うちふる
)
うその数珠は、空に
赤棟蛇
(
やまかがし
)
の飛ぶがごとく
閃
(
ひらめ
)
いた。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
又
(
また
)
眼
(
め
)
の
色
(
いろ
)
が
人
(
ひと
)
を
射
(
い
)
るように
強
(
つよ
)
い
位
(
くらい
)
の
相違
(
そうい
)
で、そしてその
総髪
(
そうはつ
)
にした
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
には
例
(
れい
)
の
兜巾
(
ときん
)
がチョコンと
載
(
の
)
って
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
そうして必ずしも
兜巾
(
ときん
)
篠懸
(
すずかけ
)
の
山伏姿
(
やまぶしすがた
)
でなく特に護法と称して名ある山寺などに従属するものでも、その仏教に対する信心は
寺侍
(
てらざむらい
)
・寺百姓以上ではなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
と、この九人の一行は、その翌日も熊野街道を、うち連れ立って辿っていたが、その姿は武士でも農夫でもなく、
兜巾
(
ときん
)
篠懸
(
すずかけ
)
金剛杖の、田舎山伏となっていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頭に
兜巾
(
ときん
)
をかぶり、
緋
(
ひ
)
の
衣
(
ころも
)
をつけ、手に羽うちわを持って、白い
髯
(
ひげ
)
の生えかぶさった赤い顔に、高い鼻をうごめかし、金色の眼を光らして、にこにこ笑っているのです。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
幕内の非戦闘員が総出で
謝罪
(
あやま
)
っているのを仏頂寺は聞き流して、しきりに身の皮を剥いでいるが、本来、
懲
(
こ
)
らしめのつもりだから、なるべく長い時間をかけて、
兜巾
(
ときん
)
から下着まで
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例の如くまさかりいてふに柿色の
上下
(
かみしも
)
で出て、一通口上を述べ、さて
仮髪
(
かづら
)
を脱いで坊主頭になつて、此度此通頭を円めましたから、此頭に
兜巾
(
ときん
)
を戴いて辨慶を勤めて御覧に入れますと云つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
篠掛
(
すゞかけ
)
摺袴
(
すりはかま
)
磨紫金
(
ましきん
)
兜巾
(
ときん
)
貝
(
かひ
)
貝詰
(
かひつめ
)
護摩刀
(
ごまたう
)
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「あの山伏は、おそらく
九度山
(
くどやま
)
の一類だろう。
兜巾
(
ときん
)
や
白衣
(
びゃくえ
)
を
鎧甲
(
よろいかぶと
)
に着かえれば、何の
某
(
なにがし
)
と、相当な名のある
古強者
(
ふるつわもの
)
にちがいない」
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(扇を
笏
(
しゃく
)
に)それ、山伏と言っぱ山伏なり。
兜巾
(
ときん
)
と云っぱ兜巾なり。お腰元と言っぱ美人なり。恋路と言っぱ
闇夜
(
やみよ
)
なり。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
九尺四方
白木
(
しらき
)
の道場の正面には、不動明王の御像を掛けさせ
護摩壇
(
ごまだん
)
を
据
(
す
)
ゑ、
燈明
(
とうみやう
)
供物
(
くもつ
)
を並べ、中程のところに東海坊、白衣に
袈裟
(
けさ
)
を掛け、散らし髮に
兜巾
(
ときん
)
を戴き、揉みに揉んで祈るのです。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
頭へは急ごしらえの紙製の
兜巾
(
ときん
)
を置き、その背中には、前に弁信が背負っていた笈を、やはり
頭高
(
かしらだか
)
に背負いなして、手には短い丸い杖を持って現われたから、それを金剛杖だと思いました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
白羊羅紗
(
はくようらしゃ
)
の角を折った
范陽帽子
(
はんようぼうし
)
には、
薔薇
(
ばら
)
色の
纓
(
ふさ
)
をひらめかせ、髪締めとしている紺の
兜巾
(
ときん
)
にも
卵黄
(
らんこう
)
の帯飾りをつけている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すらすらと歩を移し、露を払った
篠懸
(
すずかけ
)
や、
兜巾
(
ときん
)
の
装
(
よそおい
)
は、弁慶よりも、
判官
(
ほうがん
)
に、むしろ新中納言が山伏に
出立
(
いでた
)
った
凄味
(
すごみ
)
があって、且つ色白に美しい。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袈裟
(
けさ
)
、
兜巾
(
ときん
)
姿に、一本歯の足駄をはき、
釈杖
(
しゃくじょう
)
を突き鳴らし、
法螺
(
ほら
)
の貝を吹きながら、町々を勧進して歩き、御旅所では信者を集めて祈祷などをして居りましたが、思いの
外
(
ほか
)
の信心を集めて
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その時、舞台の上なる仏頂寺弥助は、組敷かれた弁慶の
兜巾
(
ときん
)
に手をかけて
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とばかり、彼の手を取って、正座の一番
椅子
(
いす
)
に据え、その前に
香炉台
(
こうろだい
)
を置き、王倫の
兜巾
(
ときん
)
を
外
(
はず
)
して、
晁蓋
(
ちょうがい
)
の
頂
(
いただき
)
に
冠
(
かぶ
)
せた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
九尺四方
白木
(
しらき
)
の道場の正面には、不動明王の御像を掛けさせ
護摩壇
(
ごまだん
)
を
据
(
す
)
え、
灯明
(
とうみょう
)
供物
(
くもつ
)
を並べ、中ほどのところに東海坊、白衣に
袈裟
(
けさ
)
を掛け、散らし髪に
兜巾
(
ときん
)
を戴き、
揉
(
も
)
みに揉んで祈るのです。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それ、
山伏
(
やまぶし
)
と
言
(
い
)
つぱ
山伏
(
やまぶし
)
なり、
何
(
なん
)
と
殊勝
(
しゆしよう
)
なか。」と
先
(
ま
)
づ
威張
(
ゐば
)
つて、
兜巾
(
ときん
)
を
傾
(
かたむ
)
け、いらたかの
數珠
(
じゆず
)
を
揉
(
も
)
みに
揉
(
も
)
んで、
祈
(
いの
)
るほどに、
祈
(
いの
)
るほどに、
祈
(
いの
)
れば
祈
(
いの
)
るほど、
大
(
おほき
)
な
茸
(
きのこ
)
の、あれ/\
思
(
おも
)
ひなしか
くさびら
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と吉祥房は、新九郎の突きをさっと体斜めにかわして、その隙に手繰り戻した金剛杖を、
兜巾
(
ときん
)
の頂きへ振りかぶって
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭
(
づ
)
に
山伏
(
やまぶし
)
の
兜巾
(
ときん
)
を
頂
(
いたゞ
)
いたやうなものぢや、と
性
(
しやう
)
の
知
(
し
)
れぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふ。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時、大円房覚明は、
無反
(
むぞり
)
の戒刀を
兜巾
(
ときん
)
のいただきまでふりかぶって、
炬
(
かがり
)
のような双の
眼
(
まなこ
)
に必殺の気を
漲
(
みなぎ
)
らせ
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
裂けた
御簾
(
みす
)
の糸や竹が、
蜘蛛
(
くも
)
の巣のように、弁円の
兜巾
(
ときん
)
へかぶさった。そして、輦のうちの綽空の横顔が、雲を払った月のように、鮮やかに彼の目に映った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と新九郎はふと見上げると、額に
兜巾
(
ときん
)
をつけ柿色の
篠懸
(
すずかけ
)
を身にまとった、これこそ本物の修験者であった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柿いろの
笹袿
(
ささがけ
)
に、黒い
脛巾
(
はばき
)
を
穿
(
は
)
いて、頭には
兜巾
(
ときん
)
を当て、足には八ツ目の
草鞋
(
わらじ
)
をきびしく固めている。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雨露に汚れた柿いろの
篠懸
(
すずかけ
)
を着て、金剛杖を立て、
額
(
ひたい
)
に、例の
兜巾
(
ときん
)
とよぶものを当てていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“兜巾(頭襟)”の解説
頭襟(ときん)は、山伏がかぶる帽子である。頭巾・兜巾と書かれることもあるが、頭巾(ずきん)とは形状も用途も全く異なるので要注意。
(出典:Wikipedia)
兜
漢検準1級
部首:⼉
11画
巾
常用漢字
中学
部首:⼱
3画
“兜巾”で始まる語句
兜巾簪
兜巾鈴懸