めん)” の例文
ここだろうと、いい加減に見当をつけて、ごめんご免と二返ばかり云うと、おくから五十ぐらいな年寄としよりが古風な紙燭しそくをつけて、出て来た。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まア、よい。五人の命を助けた手柄にめんじて、今度だけは朝倉石見守あさくらいはみのかみ樣の手前を取りつくろつてやらう。以後はならぬぞ」
「ご両君でそういうご保証がおできなら、若様がた年来のご勉強にめんじて、一回だけごらんに入れ申しあげましょうか?」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
保則さま、ごめんあそばせ、しまいにわたくしは御身様おみさまがあそこにお住みになられているのではないかと、そんなふうに考えることもございました。
玉章 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そして、あなたには知恵の鏡にめんじて、卵を一つ差し上げたそうです。それを大事にしまっておおきなさい。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「どうかごめんをねがいます。私は長くお日様ひさまを見ますとんでしまいますので」としきりにおわびをします。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
※※共に四角の中のかくを外まで引き出すなり。活字を見るにの字は正しけれどめんの字はことさらに二画に離したるが多し。しかしこれらは誤といふにもあらざるか。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
『おまえさんを相手に喧嘩けんかしたって初まらねえ。じゃあ、新之助さんの顔にめんじて、出してやろうか』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしくかろうと此子このこめんじていてくだされ、あやまりますとていてけども、イヤうしてもかれぬとて其後そのごものはずかべむかひておはつ言葉ことばみゝらぬてい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆえに止むを得ず一時の権宜けんぎとして、彼らには軍法を応用せず、兵役もめんじ、納税の義務も免じた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いや? しょうがありませんね、それじゃご一所いっしょに召しあがれ。貴僧あなた、ごめんこうむりますよ。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(赦文を読む)重科遠流おんるめんず。早く帰洛きらくの思いをなすべし。このたび中宮ちゅうぐうご産の祈祷きとうによって非常のゆるし行なわる。しかる間、鬼界きかいが島の流人るにん丹波たんばの成経、たいらの康頼を赦免しゃめんす。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おれにめんじておまえたちもがまんしてくれ、おれがあやまりちんはだすから、花前も気ちがいながら、牛をだいじにしてからの思いちがいであってみるとかわいそうなところがある
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
采女うねめはこう言って、むかしからの言い伝えを引いておもしろく歌いあげました。天皇はこの歌にめんじて、采女うねめの罪を許しておやりになりました。すると皇后もたいそうお喜びになって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
(2) 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ちょうかいノ処分ニルノほかノ職ヲめんセラルヽコトナシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
またあるいは大字何々字何々里もしくは何々村大字何何字何々めんというのもある。免は地租の関係から出た語である。免は今の語でいえば地租率である。各免ごとに納率を異にし得たのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いまさら帰らぬことながら、わしというものないならば、半兵衛はんべえ様もお通にめんじ、子までなしたる三勝さんかつどのを、くにも呼び入れさしゃんしたら、半七さんの身持も直り、ご勘当もあるまいに……
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
忠太郎 ごめん蒙りますでござんす。(敷居を越えて下手に坐る)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「ついでにおかあさんに云っときますがね、いくら僕が寂しかろうといって、むやみに、お嫁さんの候補者なんか送りつけたりするのはごめんこうむりますよ。やり兼ねないからね。いくらお母さんの世話でも、全くこれだけは断りますよ」
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ちょっとごめんなさい。」
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
好むわけぢやねえ。忠義な人達にめんじて、今晩は歸るとしよう——その代り、このお北を、金物町のお屋敷へ引取つて、若樣のお側へ置いてやつて下さい
話す義務があると思ふからはなすんだから、今日迄の友誼にめんじて、こゝろよく僕に僕の義務をはたさして呉れ給へ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「酒までたくさんそろええてくれたこころざしめんじて、今晩はお前の家で酒盛さかもりをするとしよう」
天狗の鼻 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ひとつ、さっぱりと、いがみ合いはやめてもらえぬか。利家の顔にもめんじて。——いや利家ごときは問題でないが、先君の御遺志はまだ中道にある。早くも、遺臣仲間の同床異夢どうしょういむは見ッともない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(ごめんなさいまし、)といったがものもいわない、首筋をぐったりと、耳を肩でふさぐほど顔を横にしたまま小児こどもらしい、意味のない、しかもぼっちりした目で、じろじろと門に立ったものをみつめる
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ陛下へいかたいたてまつる至誠にめんじてお許しを願う
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「まあめんの字に近いという洒落です」
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
めんくださいませ
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ことに語学とか文学とか云うものは真平まっぴらめんだ。新体詩などと来ては二十行あるうちで一行も分らない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
王子、あなたがいくら骨折ほねおっても、夢を捕えることは出来ません。けれど、あなたがあまり熱心なのにめんじて、夢の精を一つ見せてあげましょう。私はこの城の後ろの森の王です。
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
われは三ヵ国を取り、残り二ヵ国は宗治の忠節にめんじておもどし申さん。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ごめん下さいまし、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はめだるだけはごめんこうむりましたが、それでも会員にはされたのです。無論発起人でないから、ずいぶん異存もあったのですが、まあ入っても差支なかろうという主意から入会しました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是公に聞いて見ると、射撃場へ連れて行ってやるんだと云うから、例の連れて行ってやると云う厚意にめんじて、腹の痛いのを我慢して目的の家まで行ってすぐ椅子いすの上へ腰をかけてしまった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「御めんなさい」と云つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
真平まっぴらめんだ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)