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他処
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よそ
ふりがな文庫
“
他処
(
よそ
)” の例文
旧字:
他處
雲雀
(
ひばり
)
が方々の空で鳴いている。多くはこれも自分の畠を持っていて、
他処
(
よそ
)
へ出て行かぬ時ばかり、最も自由に
囀
(
さえず
)
り得るものらしい。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
友と最後の親しい時を過ごすさいに、心を
他処
(
よそ
)
にしてたことを見て、みずから悲しくなった。しかしクリストフは彼の手を握りしめた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かぢ「おう/\大層黒血が流れる、私の
宅
(
うち
)
はツイ一軒
隔
(
お
)
いて隣だが、
直
(
すぐ
)
に癒る
宜
(
い
)
い
粉薬
(
こぐすり
)
が
他処
(
よそ
)
から貰って来てあるから宅へおいで」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何だか自分と関係もない
他処
(
よそ
)
の女を見ているような気がした。お前は誰だときいてみたいようにも思った。そしてこう云った。
恩人
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「……そんなことがございますかしら、
他処
(
よそ
)
のむすめを欲しいからといって、親をも通さず
直
(
じか
)
に気持を訊くなどということが」
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
一体、のらくら者と云うものは、家の者からこそ嫌がられますけれども、
他処
(
よそ
)
の人々は、誰にでも大抵気に入られると云う得を持っています。
唖娘スバー
(新字新仮名)
/
ラビンドラナート・タゴール
(著)
このまむしのタレや鮒の刺身のすみそだけは
他処
(
よそ
)
の店では真似が出来ぬなどと、板場らしい物の云い振りをしたかったのだ。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
東京の町に降る雪には、日本の中でも
他処
(
よそ
)
に見られぬ固有のものがあった。されば言うまでもなく、
巴里
(
パリー
)
や
倫敦
(
ロンドン
)
の町に降る雪とは全くちがった趣があった。
雪の日
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そこにはカフェーの女給が情夫と一しよに住んでゐるのだが、男はしよつちゆう家をあけて
他処
(
よそ
)
に寝泊りしてゐる。それは他に女をこしらへるからである。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
「お前はいつでも今のように母様に尽さなければなりません。そしてパパが居ない時には、
誰
(
だれ
)
でも
他処
(
よそ
)
の人に、母様がいじめられないようにするんですよ」
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
此地には
長寿
(
ちょうじゅ
)
の人
他処
(
よそ
)
に比べて多く、女も此地生れなるは品よくして色
麗
(
うる
)
わしく、心ざま言葉つきも優しき方なるが多きよし、気候水土の美なればなるべし。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
店という店
他処
(
よそ
)
から来た「
下
(
くだ
)
り
物
(
もの
)
」ばかりで、土地の人は地のものを愛さない。当然とも想えるが、時代が過ぎれば取り返しのつかぬ感じを
嘗
(
な
)
めるであろう。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
己れがもう少し大人に成ると質屋を出さして、昔しの通りでなくとも田中屋の看板をかけると楽しみにしてゐるよ、
他処
(
よそ
)
の人は祖母さんを
吝
(
けち
)
だと言ふけれど
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「とまあ、見せかけてゐるだけですよ。主人は
他処
(
よそ
)
行きと不断とを、はつきりさせるんですよ。日本人に向つては日本式でやれ、これがプリンシプルなんです」
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
人々の騒ぎを
他処
(
よそ
)
にして、床の間の大きな花瓶に活けてあった桜の花が、一ひら二ひら静かに下に散った。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
このとんぼはその当時でも
他処
(
よそ
)
ではあまり見たことがなく、その後他国ではどこでも見なかった種類のものである。この濠はあまり人の行かないところであった。
郷土的味覚
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
見なれている
幽谷
(
ゆうこく
)
のしらべをつくる
松柏
(
しょうはく
)
の
類
(
たぐい
)
は、少しも経之に
常日頃
(
つねひごろ
)
のしたしい風景にならずに、どこか、素っ気ない
他処
(
よそ
)
の庭を見るようなはなれた気持であった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
例の登山家は一寸
他処
(
よそ
)
行きの顔をして、実は、先刻おはなし申しました通り、友達が腹痛で苦しんで居りますので、是非どうぞ御診察をって掛け合いだ、懐中には
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
老婆はその花束を裏の縁側へ置いて、やっとこしょと上へ昇り、
他処
(
よそ
)
往きの
布子
(
ぬのこ
)
に着更え、幅を狭く
絎
(
く
)
けた黒繻子の帯を結びながら出て来たところで、人の跫音がした。
地獄の使
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
此の世に自分と息子とだけいればいいと思っているような排他的な母の
許
(
もと
)
で、妻まで
他処
(
よそ
)
へ
逐
(
お
)
いやって、二人して大切そうに守って来た一家の平和なんぞというものは
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
千世子はよく
他処
(
よそ
)
の親の話が出たりすると母親に話したり肇になんかも一寸云った事もあった。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
他処
(
よそ
)
から来ている工女達は多くその中に混って踊った。頬冠りした若者は又、
幾人
(
いくたり
)
かお春の左右を通り過ぎた。彼女は言うに言われぬ
恐怖
(
おそれ
)
を感じた。丁度そこに若旦那も来ていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼の顔は、初めの挨拶の時は極めて
他処
(
よそ
)
行きであったが、進んで、ツシタラが彼等の獄中での唯一の友であったことを語る段になると、急に、燃える様な純粋な感情を
露
(
あらわ
)
したかに思われた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし、軍曹殿が、
鉱山
(
やま
)
の
餓鬼
(
がき
)
どもを気にするのは変ですよ。
奴等
(
やつら
)
はああいう風に生れついてるんでさ、放してやったって、又、
他処
(
よそ
)
で同じようなことをしなきゃア、結局食えないんですからね。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
この国家興亡の大戦を
他処
(
よそ
)
に見て、もはや海軍軍人としてもまた一国民としても、何ら祖国に尽すことのできぬ私は、せめてその方法によってなりと、故国の学会へ寄与することができたならば
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
アーホーはこの地方の牧童が馬を集める喚び声であって、他では必ずしもそうは言わぬから、
他処
(
よそ
)
ではもうその話は通用せぬわけである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼らが死んだら、それを
他処
(
よそ
)
へ送ってていねいに腐敗させ、決してまたもどってこないように、その上に石を置いとくことだ。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
このまむしのタレや鮒の刺身のすみそだけは
他処
(
よそ
)
の店では真似が出来ぬなど板場らしい物の言い振りをしたかったのだ。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
または過去の自分の態度が間違っていたのであろうか、それならば悩んだ富子の魂を
他処
(
よそ
)
に見るべきであったろうか。或は富子の求むる所が誤っていたのであろうか。
囚われ
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それはそうだろう、しかし証拠となるとそんなことでは役に立たんよ。どこか
他処
(
よそ
)
の船がおまえのを
お繁
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
繼「嬉しい事ね、あの
他処
(
よそ
)
の子と
異
(
ちが
)
って私は
少
(
ちい
)
さい時からお父様とばかり一緒に寝ましたわ、お
母
(
っか
)
さんと一緒に寝られるなら
何時
(
いつ
)
までもお父様は帰らないでも
宜
(
よ
)
いの」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一日お目にかからねば恋しいほどなれど、奥様にと言ふて下されたらどうでござんしよか、持たれるは嫌なり
他処
(
よそ
)
ながらは慕はしし、一ト口に言はれたら浮気者でござんせう
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「わかつてるわよ。どうせ
他処
(
よそ
)
へ出た娘のことまで心配してたらきりがないからね」
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
その若い男女は、さっき目白署において、博士の姪の秋元千草と博士の助手たる仙波学士と名乗った二人であったが、この二人はこのさわぎを
他処
(
よそ
)
に自動車を下りもせず、ぽかんとしていた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
義隆
(
よしたか
)
と
千鶴
(
ちづる
)
がチブスになって、入院したものですから、倉知の奥さんに頼んで地所を抵当にして、金を借りてもらったのですが、奥さんは
他処
(
よそ
)
から借りてやるから、ちょっとした証書を作って
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は是非とも、
新
(
あらた
)
に二度目の飼犬を置くように主張したが、父は犬を置くと、さかりの時分、
他処
(
よそ
)
の犬までが来て
生垣
(
いけがき
)
を破り、庭を
荒
(
あら
)
すからとて、其れなり、
家中
(
うちじゅう
)
には犬一匹も置かぬ事となった。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黒人式にむくれ返った唇の周囲をチョビ
髭
(
ひげ
)
が囲んでいて、おまけに、染めた頭髪は(
禿
(
はげ
)
は
何処
(
どこ
)
にもないのだが)所によってその生え方に濃淡があり、一株ずつ
他処
(
よそ
)
から移植したような工合であって
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
子供たちは心を
他処
(
よそ
)
にしてそれに応じ、彼の方へ眼をもあげなかった——アントアネットは仕事に気を取られ、オリヴィエは読書に気を取られていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
午
(
ひる
)
と晩とは、自炊をするか
他処
(
よそ
)
で食べるかしなければならないし、そういう不便を忍んでまで、あの狭い四畳半に落付くというのは、特別な事情のある者ででもなければ
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
千蔵は眼をつむり
他処
(
よそ
)
事を考えていた、子之八の姿を見ず声を聞かぬために懸命の努力をした。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ここと
他処
(
よそ
)
とではどういう
風
(
ふう
)
にちがうかということに、気がつかずにいるのがふつうである。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
馬鹿をお言ひで無い人のお初穂を着ると出世が出来ないと言ふでは無いか、今つから延びる事が出来なくては仕方が無い、そんな事を
他処
(
よそ
)
の
家
(
うち
)
でもしては
不用
(
いけない
)
よと気を付けるに
わかれ道
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私
(
わし
)
は
此処
(
こゝ
)
にいるお繼の実の伯父で百姓文吉と申します、私は今日
他処
(
よそ
)
へ行って
先刻
(
さっき
)
家
(
うち
)
へ帰ると、敵討に行ったと云いますから、家の男を連れて駈けて
参
(
めえ
)
りましたが様子が知んない
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わたくしは江戸時代から幾年となく、多くの人々の歩み馴れた田舎道の新しく改修せられる有様を見たくなかったのみならず、古い寺までが、事によると
他処
(
よそ
)
に移されはしまいかと思ったからである。
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それらの悪口は、晩に食卓へ皆集った時、一家の者の喜びとなった。クリストフは心を
他処
(
よそ
)
にして聞いていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
後者はこれに比べると起こりは新しいのだが、今まで親しみの無かった
他処
(
よそ
)
の人たちと、まず共同の飲食に
由
(
よ
)
って心身の連鎖を附ける趣意で、必要はかえってこの方が大きかった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その御隠居さま
寸白
(
すばく
)
のお起りなされてお苦しみの有しに、夜を
徹
(
とほ
)
してお腰をもみたれば、前垂でも買へとて下された、それや、これや、お
家
(
うち
)
は
堅
(
かた
)
けれど
他処
(
よそ
)
よりのお方が
贔負
(
ひいき
)
になされて
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此間
(
こねえだ
)
も
他処
(
よそ
)
から法事の饅頭が来た時、お店へも出ると彼奴は酒呑だから
甘
(
あめ
)
え物は嫌えだろう、それだのにさ、清助
汝
(
われ
)
がに饅頭をくれてやる、田舎者だから
此様
(
こん
)
な結構な物は食ったことは有るめえ
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
第一回は宝永七年、第二回は安永九年、第三回は嘉永三年、——三回とも恐ろしい鬼火が現われて
殆
(
ほとん
)
ど一家全部を殺生谷へ引込んで
了
(
しま
)
った。
僅
(
わずか
)
に
他処
(
よそ
)
へ出ていた者がその難を
免
(
まぬか
)
れて家を継いだのだ。
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は
肱掛椅子
(
ひじかけいす
)
の腕木に片肱をつき、身体を少しかがめ、手先で頭をささえて、
怜悧
(
れいり
)
なしかも心を
他処
(
よそ
)
にした微笑を浮かべながら、人々の話に耳を貸していた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
他
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
処
常用漢字
小6
部首:⼏
5画
“他処”で始まる語句
他処行
他処事
他処目
他処眼
他処着
他処者
他処々々