二足ふたあし)” の例文
最初の一足ひとあしで十マイル、それですねの半分どころの深さでした。二足ふたあし目も十マイル、その時には、水がちょうど彼の膝の上まで来ました。
子供こどもは、二足ふたあし三足みあしあるくとあしもとの小石こいしひろって、それをめずらしそうに、ながめていました。とりさがしているとまって
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、たちまち今怒鳴りつけた事を思い出して、両腕を大きく開くや否や、猛然と悪戯いたずらな女たちの方へ、二足ふたあし三足みあし突進した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのひましたがひたりし翁は、これも傘投捨てて追ひすがり、老いても力や衰へざりけむ、水をけり二足ふたあし三足みあし、王の領首えりくびむづと握りて引戻さむとす。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
母と私とは二足ふたあし歩いては立ち止まり、三足歩いては立ち止まって、後を振りかえって見た。雪さんはいつまでも元の道の廻りかどにじっと立っていた。
ズルスケはカワウソのほうへ近づいていきましたが、そのえものをとるつもりはないということを見せるために、二足ふたあしばかりはなれて立ちどまりました。
と踏み掛けて、二足ふたあしばかり、板のなかばで、どまったが、なんにも聞こえぬ。もとより聞こうとしたほどでもなしに、何となく夕暮の静かな水の音が身に染みる。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きょうは午頃ひるごろから細かい雨が降っていたので、お鶴は傘をかたむけて灯ともし頃の暗い町をたどって行くと、もう二足ふたあしばかりで湯屋の暖簾のれんをくぐろうとする所で
平造とお鶴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
馬吉うまきちおもわずみみをおさえて、目をつぶって、だまって二足ふたあし三足みあし行きかけますと、こんどはみみのはたで
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と玄蕃は外された木剣に引き込まれてタタタタと二足ふたあし三足みあし、斜めに大地へのめり込んだが一刀流錬磨の機智——その木剣を流れ身のまま重蔵の足許臨んで地摺りに払った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廊下を二足ふたあし三足みあしきにかゝりましたが、れがもう主人の顔の見納めかと思えば、足も先に進まず、又振返って主人の顔を見てポロリと涙を流し、悄々しお/\としてきますから
その証拠しようこには、あたまみゝもみんなそつちへいて、おまけにたびたび、いかにもつぱられるやうに、よろよろと二足ふたあし三足みあしからはなれてそつちへつてきさうにするのでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
いよいよ陰士とすれば早く尊顔そんがんを拝したいものだ。陰士は今や勝手の上に大いなる泥足を上げて二足ふたあしばかり進んだ模様である。三足目と思う頃揚板あげいたつまずいてか、ガタリとよるに響くような音を立てた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二足ふたあし三足みあし行くと、わたしはふり向いた。
「はあ」とつて、りよ二足ふたあし三足みあしあるいてからうた。「それから唯今たゞいま寒山かんざんおつしやつたが、それはどうかたですか。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
もう一どからだをこしたとき、ニールスは、どんなにおどろいたことでしょう! それもそのはず、二足ふたあしとははなれない目のまえに、高い黒ぐろとしたかべ
千曳ちびきの大岩をかついだ彼は、二足ふたあし三足みあし蹌踉そうろうと流れのなぎさから歩みを運ぶと、必死と食いしばった歯の間から、ほとんど呻吟する様な声で、「いか渡すぞ。」と相手を呼んだ。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一足ひとあし二足ふたあし歩いて見ると、これはまたどうでしょう! 彼はクイックシルヴァやニンフ達の頭よりも高く、ぽんと跳び上ってしまって、再び下りて来るのに大変骨が折れました。
一足ひとあし二足ふたあし後へ下るとそば粘土ねばつちに片足踏みかけたから危ういかな仰向あおむけにお繼が粘土の上へ倒れる所を、得たりと又市が振冠ふりかぶって一打ひとうちに切ろうとする時大勢の見物の顔色がんしょくが変って
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
茶屋の軒から、二足ふたあし三足みあし立ちかけた鐘巻自斎が、ワッと近づく人声に、何事かとせぬ顔で見ていたのは、殺気立って来る由良の伝吉の禍いを待っているのと同じことになった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巡査はいよいよれて、力一ぱいに強くくと、彼女かれ流石さすが二足ふたあしばかり踉蹌よろめいた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二足ふたあし三足みあし五足いつあし十足とあしになって段々深く入るほど——此処ここまで来たのに見ないで帰るも残惜のこりおしい気もする上に、何んだか、もとへ帰るより、前へ出る方がみちあかるいかと思われて、急足いそぎあしになると
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二足ふたあしばかり立ちのいて、美禰子と絵をしきりに見比べている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二足ふたあし三足みあし附きてゆけば、「かしこなる陶物すえもの見たまひしや、東洋産の花瓶はながめに知らぬ草木鳥獣など染めつけたるを、われにきあかさむ人おん身のほかになし、いざ、」
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして二足ふたあし三足、静かに揺れ出した時である。じこめてある青い塗扉ぬりどのうちから、初めて、泣くのを許されたかのように、彼女のむせぶ声が、春の闇夜を、よよとれて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども、テンのえものをとるつもりはないというしるしに、二足ふたあしばかりあいだをおいて立ちどまりました。そして、いかにもしたしそうにテンにおじぎをして、みごとなうでまえをほめました。
二足ふたあし三足みあし後退あとじさりして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)