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不相変
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あひかはらず
ふりがな文庫
“
不相変
(
あひかはらず
)” の例文
旧字:
不相變
しかし僕は
不相変
(
あひかはらず
)
埃
(
ほこり
)
臭い空気の中に、——僕等をのせた円タクは僕のそんなことを考へてゐるうちに
江東橋
(
かうとうばし
)
を渡つて走つて行つた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其朝は三年生の仙太も早く出て来て体操場の隅に
悄然
(
しよんぼり
)
として居る。他の生徒を羨ましさうに眺め
佇立
(
たゝず
)
んで居るのを見ると、
不相変
(
あひかはらず
)
誰も相手にするものは無いらしい。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
先生は
不相変
(
あひかはらず
)
御忙しくて
在
(
いら
)
つしやいませうねエ——今日はネ、
阿母
(
おつかさん
)
、慈愛館からお
聴
(
ゆるし
)
が出ましてネ、御年首に上つたんですよ、私、
斯様
(
こんな
)
嬉しいお正月をするの、生れて始めてでせう
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
其内
(
そのうち
)
に
山田
(
やまだ
)
は
芝
(
しば
)
から
一
(
ひと
)
ツ
橋
(
ばし
)
まで
通学
(
つうがく
)
するのは
余
(
あま
)
り
遠
(
とほ
)
いと
云
(
い
)
ふので、
駿河台
(
するがだい
)
鈴木町
(
すずきちやう
)
の
坊城
(
ばうじやう
)
の
邸内
(
ていない
)
に
引越
(
ひつこ
)
した、
石橋
(
いしばし
)
は
九段坂上
(
くだんさかうへ
)
の今の
暁星学校
(
ぎやうせいがくかう
)
の
在
(
あ
)
る
処
(
ところ
)
に
居
(
ゐ
)
たのですが、
私
(
わたし
)
は
不相変
(
あひかはらず
)
芝
(
しば
)
から
通
(
かよ
)
つて
居
(
ゐ
)
た
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
第二の幽霊
駄目
(
だめ
)
、駄目。
何処
(
どこ
)
の芝居でも
御倉
(
おくら
)
にしてゐる。やつてゐるのは
不相変
(
あひかはらず
)
、
黴
(
かび
)
の生えた旧劇ばかりさ。君の小説はどうなつたい?
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
可
(
い
)
けもしない事を
不相変
(
あひかはらず
)
執煩
(
しつくど
)
く、何だかだ言つてをりましたけれど、
這箇
(
こつち
)
も剛情で思ふやうに行かないもんですから、
了局
(
しまひ
)
には手を
易
(
か
)
へて、内のお袋へ
親談
(
ぢかだん
)
をして、内々話は出来たんで御座んせう。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
弟子はかう申しながら、この耳のある、猫のやうな鳥を、気味悪さうにじろじろ眺めますと、良秀は
不相変
(
あひかはらず
)
何時もの
嘲笑
(
あざわら
)
ふやうな調子で
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
不相変
(
あひかはらず
)
麁相
(
そそつ
)
かしいね、蒲田は」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
金花がこんな事を考へてゐる内に、
不相変
(
あひかはらず
)
愉快さうな外国人は、何時かパイプに煙草をつめて、匂の好い煙を吐き出してゐた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
O君はけふも
不相変
(
あひかはらず
)
赤シヤツに黒いチヨツキを着たまま、午前十一時の
裏庇
(
うらびさし
)
の下に
七輪
(
しちりん
)
の火を起してゐた。焚きつけは枯れ松葉や
松蓋
(
まつかさ
)
だつた。
O君の新秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
うろ覚えの
観音経
(
くわんおんぎやう
)
を口の中に念じ念じ、例の赤鼻を鞍の前輪にすりつけるやうにして、覚束ない馬の歩みを、
不相変
(
あひかはらず
)
とぼとぼと進めて行つた。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二人も素戔嗚の姿を見ると、
吃驚
(
びつくり
)
したらしい容子であつた。が、すぐに葦原醜男は
不相変
(
あひかはらず
)
快活に身を起して、一筋の
丹塗矢
(
にぬりや
)
をさし出しながら
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし雨は
不相変
(
あひかはらず
)
急になつたり静まつたりした。八つ、八つ半、——時はこの雨音の中にだんだん日の暮へ移つて行つた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今夜も彼女はこの
卓
(
テエブル
)
に
倚
(
よ
)
つて、長い間ぼんやり坐つてゐた。が、
不相変
(
あひかはらず
)
彼女の部屋へは、客の来るけはひも見えなかつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
俊吉はすべてに無頓着なのか、
不相変
(
あひかはらず
)
気の利いた
冗談
(
じようだん
)
ばかり投げつけながら、目まぐるしい往来の人通りの中を、大股にゆつくり歩いて行つた。……
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今ごろは
丹塗
(
にぬ
)
りの堂の前にも明るい
銀杏
(
いてふ
)
の
黄葉
(
くわうえう
)
の中に、
不相変
(
あひかはらず
)
鳩
(
はと
)
が何十羽も大まはりに輪を
描
(
ゑが
)
いてゐることであらう。
野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
薄濁つた空、
疎
(
まば
)
らな屋並、高い木々の黄ばんだ梢、——後には
不相変
(
あひかはらず
)
人通りの少い場末の町があるばかりであつた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし次男は
不相変
(
あひかはらず
)
、たつた一人仏間に閉ぢこもつたぎり、昼でも大抵はうとうとしてゐた。すると或日彼の耳には、かすかな三味線の音が伝はつて来た。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしトルストイはその間でも、
不相変
(
あひかはらず
)
浮かない顔をしたなり、滅多に口も開かなかつた。それが始終トウルゲネフには、
面憎
(
つらにく
)
くもあれば無気味でもあつた。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一時彼がトウルゲネフと、絶交するやうになつたのも、——いや、現に彼はトウルゲネフが、山鴫を射落したと云ふ事にも、
不相変
(
あひかはらず
)
嘘を
嗅
(
か
)
ぎつけてゐる。……
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕はもう五六年
前
(
ぜん
)
、久しぶりに彼とこの話をし、この小事件も彼の心に暗い影を落してゐるのを感じた。彼は今は
揚子江
(
やうすこう
)
の岸に
不相変
(
あひかはらず
)
孤独に暮らしてゐる。……
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
平中は耳を
側立
(
そばだ
)
てた。
成程
(
なるほど
)
ふと気がついて見れば、
不相変
(
あひかはらず
)
小止
(
をや
)
みない
雨声
(
うせい
)
と一しよに、
御前
(
ごぜん
)
へ詰めてゐた女房たちが
局々
(
つぼねつぼね
)
に帰るらしい、人ざわめきが聞えて来る。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お民は又其処を見つけ所に、
不相変
(
あひかはらず
)
塩からい豌豆を噛み噛み、ぴしぴし姑をきめつけにかかつた。のみならずこれにはお住の知らない天性の口達者も手伝つてゐた。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
二、
里見
(
さとみ
)
君の「
蚊遣
(
かや
)
り」も
亦
(
また
)
十月小説中の
白眉
(
はくび
)
なり。唯
聊
(
いささ
)
か
末段
(
まつだん
)
に至つて落筆
匇匇
(
そうそう
)
の
憾
(
うら
)
みあらん
乎
(
か
)
。他は人情的か何か知らねど、
不相変
(
あひかはらず
)
巧手
(
かうしゆ
)
の名に
背
(
そむ
)
かずと言ふべし。
病牀雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女は
不相変
(
あひかはらず
)
勘定台の前に受取りか何か整理してゐる。かう云ふ店の光景はいつ見ても悪いものではない。何処か
阿蘭陀
(
オランダ
)
の風俗画じみた、もの静かな幸福に溢れてゐる。
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
浜木棉
(
はまゆふ
)
の花はこの雨の中にいつか腐つて行くらしかつた。彼女の顔は
不相変
(
あひかはらず
)
月の光の中にゐるやうだつた。が、彼女と話してゐることは彼には退屈でないこともなかつた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小娘は何時かもう私の前の席に返つて、
不相変
(
あひかはらず
)
皸
(
ひび
)
だらけの頬を萌黄色の毛糸の襟巻に埋めながら、大きな風呂敷包みを抱へた手に、しつかりと三等切符を握つてゐる。…………
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
廊下はけふも
不相変
(
あひかはらず
)
牢獄のやうに憂欝だつた。僕は頭を垂れたまま、階段を上つたり下りたりしてゐるうちにいつかコツク部屋へはひつてゐた。コツク部屋は存外明るかつた。
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ええ、その上月のある晩は、
余計
(
よけい
)
何
(
なん
)
だか落着きませんよ。——時に
隠亡堀
(
おんばうぼり
)
は
如何
(
いかが
)
でした?」「隠亡堀ですか? あすこには
今日
(
けふ
)
も
不相変
(
あひかはらず
)
、戸板に打ちつけた死骸がありました。」
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし庭は幾日たつても、
捗々
(
はかばか
)
しい変化を示さなかつた。池には
不相変
(
あひかはらず
)
草が茂り、植込みにも雑木が枝を張つてゐた。殊に果樹の花の散つた後は、前よりも荒れたかと思ふ位だつた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
崩れた土は
丹
(
に
)
のやうに赤い。崩れぬ
土手
(
どて
)
は青芝の上に
不相変
(
あひかはらず
)
松をうねらせてゐる。
其処
(
そこ
)
にけふも三四人、裸の人人が動いてゐた。何もさう云ふ人人は
酔興
(
すゐきやう
)
に泳いでゐる
訣
(
わけ
)
ではあるまい。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
俊吉は巻煙草を
啣
(
くは
)
へた儘、満足さうに二人を眺めて、
不相変
(
あひかはらず
)
にやにや笑つてゐた。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
尤
(
もつと
)
も
崖側
(
がけぎは
)
の竹藪は
不相変
(
あひかはらず
)
黄ばんだままなのだが……おつと向うから馬が来たぞ。馬の目玉は大きいなあ。竹藪も椿も
己
(
おれ
)
の顔もみんな目玉の中に
映
(
うつ
)
つてゐる。馬のあとからはモンシロ蝶。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すると奥から出て来たのは例の
眇
(
すがめ
)
の主人である。主人は三笠を一目見ると、大抵
容子
(
ようす
)
を察したらしい。けふも
不相変
(
あひかはらず
)
苦り切つたまま、勘定台の下へ手を入れるが早いか、朝日を二つ保吉へ渡した。
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
架空線は
不相変
(
あひかはらず
)
鋭い火花を放つてゐた。彼は人生を見渡しても、何も特に欲しいものはなかつた。が、この紫色の火花だけは、——
凄
(
すさ
)
まじい空中の火花だけは命と取り換へてもつかまへたかつた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そのうちに彼等はもう一度
田舎
(
ゐなか
)
住ひをすることになつた。けれども猫は
不相変
(
あひかはらず
)
少しも鼠をとらなかつた。彼等はとうとう
愛想
(
あいそ
)
をつかし、気の強い女中に言ひつけて猫を山の中へ捨てさせてしまつた。
貝殻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは云はばはやり切つた馬と同じ
軛
(
くびき
)
を背負された老馬の経験する苦しみだつた。お民は
不相変
(
あひかはらず
)
家を外にせつせと野良仕事にかかつてゐた。お住もはた目には不相変小まめに留守居役を勤めてゐた。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
神田同朋町
(
かんだどうぼうちやう
)
の
銭湯
(
せんたう
)
松の湯では、朝から
不相変
(
あひかはらず
)
客が多かつた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兄はわたしを見下しながら、
不相変
(
あひかはらず
)
慳貪
(
けんどん
)
にかう申しました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「八犬伝は
不相変
(
あひかはらず
)
、
捗
(
はか
)
がお行きですか。」
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
不相変
(
あひかはらず
)
げらげら笑つてゐたさうだがね。
南瓜
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
不相変
(
あひかはらず
)
薬ばかり
嚥
(
の
)
んでゐる始末だ。」
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
不相変
(
あひかはらず
)
神経ばかり
苛々
(
いらいら
)
してね。」
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
不相変
(
あひかはらず
)
御機嫌で結構だね。」
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
相
常用漢字
小3
部首:⽬
9画
変
常用漢字
小4
部首:⼡
9画
“不相変”で始まる語句
不相変欝々