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一昨年
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いつさくねん
當時は
町を
離れた
虎杖の
里に、
兄妹がくらして、
若主人の
方は、
町中の
或會社へ
勤めて
居ると、
此の
由、
番頭が
話してくれました。
一昨年の
事なのです。
一昨年の
秋九月——
私は
不心得で、
日記と
言ふものを
認めた
事がないので
幾日だか
日は
覺えて
居ないが——
彼岸前だつただけは
確だから、
十五日から
二十日頃までの
事である。
一昨年の
其の
時は、
翌日、
半日、いや、
午後三
時頃まで、
用もないのに、
女中たちの
蔭で
怪む
氣勢のするのが
思ひ
取られるまで、
腕組が、
肘枕で、やがて、
夜具を
引被つてまで
且つ
思ひ、
且つ
惱み