“さかり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
77.8%
4.2%
盛季2.8%
2.8%
1.4%
盛年1.4%
交孳1.4%
交尾1.4%
交尾期1.4%
1.4%
發情1.4%
盛時1.4%
色情1.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
残暑の夕日がひとしきり夏のさかりよりもはげしく、ひろびろした河面かわづら一帯に燃え立ち、殊更ことさらに大学の艇庫ていこ真白まっしろなペンキ塗の板目はめに反映していたが
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夜はいとあかけれど、強く寒き風はたちまち起りぬ。まさに没せんとする日はさかりなる火の如く、天をば黄金色わうごんしよくならしめ、海をば藍碧色らんぺきしよくならしめ、海の上なる群れる島嶼たうしよをば淡青たんせいなる雲にまがはせたり。
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
黄檗おうばくを出れば日本の茶摘みかな」茶摘みの盛季さかりはとく過ぎたれど、風は時々焙炉ほうろの香を送りて、ここそこに二番茶を摘む女の影も見ゆなり。茶の間々あいあいは麦黄いろくれて、さくさくとかまの音聞こゆ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
○「老けているね……五年以前あと、じゃアだアさかりな時でごぜえやすな」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もつともさういへばさかりころでもらあつてからは仕事しごと上手じやうずるとしちやみつしらやうだつけが、きぢやねえ鹽梅あんべえだつけのさな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いまぢやをさつてつから餓鬼奴等がきめらまでせきれえびやうだなんてつてんが、さかりころなんでも疫病やくびやうおべえてたのがんだから、なあ卯平うへいもそんときやつたからつてらな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
卯平うへい自分じぶんからつくつたつみといふものはほとんどられなかつた。たゞかれ盛年さかりころ傭人等やとひにんらともねこころしてべてた。もつとそのころねこでもいぬでも飼主かひぬしはなれてにはとりねらふのが彷徨うろついた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ぶすりとにべない容子ようすでも表面へうめんあらはれたよりもあたゝかで、をんなもろところさへあるのであつた。かれ盛年さかりころ他人たにんについたのは、自分自身じぶんじしん仕事しごとにはあませいさないやうにえることであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「人間の標準から見て、猫の容貌きりょういの悪いのというは間違ってる、この猫だって誰も褒めてくれ手がなくても猫同士が見たら案外な美人であるかも知れない、その証拠には交孳さかりの時には牡猫が多勢おおぜいりに来る、」
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
弟君だぞ! 総理大臣も内務大臣も、警察長官もクソも、あるもんかい! その時になって手前ら、お見それしましたと土下座するなってんだい! 交尾さかりのついた警察の雌犬めすいぬめ!
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
『大連』は全く交尾期さかりのついた馬みたいに荷馬車を蹴飛ばして、シベリヤの曠野を突走りかねない量見を抱いているらしかった。それはまるで途方もない心掛けだ!
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
潮は上げているさかりだった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河馬と鳴門の渦の發情さかりをききてふるへたるわれ
悲しい事実も、盛時さかりの彼女には悲話は深刻なだけ、より彼女が特異の境遇におかれるので、彼女は以前もとから隠そうとはしなかった。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
肝腎かんじん稼業かげふのお稽古もしないで、色情さかりのついた犬みたやうに、一體何處どこ彷徨うろついて歩いてゐるんだよ。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)