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さかり
卯平は
自分の
手から
作つた
罪といふものは
殆んど
見られなかつた。
唯彼は
盛年の
頃は
他の
傭人等と
共に
能く
猫を
殺して
喫べてた。
尤も
其頃は
猫でも
犬でも
飼主を
離れて
雞を
狙ふのが
彷徨いた。
ぶすりと
膠ない
容子でも
表面に
現れたよりも
暖かで、
女に
脆い
處さへあるのであつた。
彼が
盛年の
頃に
他人の
目についたのは、
自分自身の
仕事には
餘り
精を
出さないやうに
見えることであつた。