三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地軸作戦:――金博士シリーズ・9―― (新字新仮名) / 海野十三(著)
たしかにそのような批評は、彼女の身について益々醗酵しはじめていた生の饐えた香り、美が腐敗にかわる最後の一線で放つ人を酔わす匂いをさますものであったから。
四六時ちゅう、喧嘩口論の絶え間はなく、いつも荒びた空気が、この物の饐えたようなにおいのする、うす暗い路地を占めているところから、人呼んでとんがり長屋——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
中途まで来ると矢張り駄目だ! どうしても踊りぬくことが出来ない!⦅ええい性悪な悪魔めが! 饐えた甜瓜にでも咽喉を詰らせやがれ! もつと小さい中にくたばりくさるとよかつたんだ
ディカーニカ近郷夜話 後篇:05 呪禁のかかつた土地 (新字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
饐えたる菊はいたみたる。
月に吠える:02 月に吠える (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
いくら暑くても吹き抜け風をおそれて廊下の扉をしめ切つてゐるから、一あし踏み込むと若い女の汗と脂粉の饐えた臭ひが、むつと鼻をつき刺す。なんともいへず鋭い酸性の臭ひである。
その通りもその一種で、細く暗い道一杯に、饐えた臭いが漂っていた。ぼんやりした明りにすかして見ると、一ヵ処窪んだ、どこかの裏口らしいところに、むこうを向いた一つの影が立っている。
饐えたやうなにほひのこもる夜の裏街に灯がつくと寒く飢ゑてゐる僕の心も亦あつたまつて來る。さうして一月のうちに心に適つた詩の何行かでも出來れば、ほかには何も云ふことはない。
饐えた悪臭を発するに過ぎないであろう。
バルザックに対する評価 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
饐えたる果物籠の中にあって、一箇の果物のみ饐えないでいるわけもない。帝の心はすでに甘言のみを歓ぶものになっている。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)