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難渋
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なんじゅう
ふりがな文庫
“
難渋
(
なんじゅう
)” の例文
取りはぐれまして
難渋
(
なんじゅう
)
ひと方ではござりませぬ。今宵いち夜、お
廂
(
ひさし
)
の下なとお貸し願えぬでござりましょうか、お願いでござります
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
あまりの寒気にさすがの酔もさめはて
難渋
(
なんじゅう
)
の折柄、幸いにも貴下の御呼止にあずかり、御心尽しの御
饗応
(
きょうおう
)
に蘇生の想いを致し候。
流転
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
「江戸を立つ時、よほど巧みに来たつもりでございましたが、
品川口
(
しながわぐち
)
から一人の男に
尾
(
つ
)
けられて、ほんとに、
難渋
(
なんじゅう
)
いたしました」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その子は今日
家内
(
かない
)
の一人にして、これを手離すときはたちまち
世帯
(
せたい
)
の差支となりて、親子もろとも
飢寒
(
きかん
)
の
難渋
(
なんじゅう
)
まぬかれ難し。
小学教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その秘訣というのはね、貧乏人から参りましたが急病で
難渋
(
なんじゅう
)
しております、どうか先生に診ていただきたいのでございますと、こう言うんだよ。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
味噌
(
みそ
)
、
醤油
(
しょうゆ
)
、雑貨から呉服類、
草鞋
(
わらじ
)
、たばこまでひさぐ大きな店ができたために、従来の町内の小商人が、すっかり客をとられて
難渋
(
なんじゅう
)
している。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すると、おなじ
難渋
(
なんじゅう
)
をしていた姉娘が一日手伝いに来て見ていて、翌日からすぐ隣りあって、おなじ戸板の店を出した。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
蚊帳
(
かや
)
の用意がなかったので、十月のなかばまで
難渋
(
なんじゅう
)
した。蚊ばかりではない。名も知らない虫が、あかりを慕って来る。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
彼は首をすくめ、
懐
(
ふとこ
)
ろ手をしながら、落葉や朽葉とともにぬかるみになった粘土質の県道を、
難渋
(
なんじゅう
)
し抜いて
孵化場
(
ふかじょう
)
の方へと川沿いを
溯
(
さかのぼ
)
っていった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
商物は
調
(
ととの
)
うる者もこれ有れども、払いを致す者もなく御政道もなく、
押領
(
おうりょう
)
致しても制止も届兼ね
難渋
(
なんじゅう
)
致し申すべし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
「またかんかんか、君のかんかんは一度や二度で済まないんだから
難渋
(
なんじゅう
)
するよ」と今度は迷亭が予防線を張った。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
木々の小枝のちぎれてとびちった道を、自転車も
難渋
(
なんじゅう
)
しながら進んだ。
押
(
お
)
して歩くほうが多かったかもしれぬ。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
万屋の伯父はお峰の詰問を受けてひどく
難渋
(
なんじゅう
)
の顔色を見せたが、結局ため息まじりでこんな事を言い出した。
経帷子の秘密
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
新「へえ
粗忽
(
そこつ
)
の浪士萩原新三郎と申します、白翁堂の書面の通り、
何
(
なん
)
の因果か死霊に悩まされ
難渋
(
なんじゅう
)
を致しますが、貴僧の
御法
(
ごほう
)
を
以
(
もっ
)
て死霊を退散するようにお願い申します」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
不可解
難渋
(
なんじゅう
)
であっては、その事に読者の心が労されて、作者の主観を受取ることが出来ぬ。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それからがくがくして
歩行
(
ある
)
くのが少し
難渋
(
なんじゅう
)
になったけれども、ここで
倒
(
たお
)
れては
温気
(
うんき
)
で
蒸殺
(
むしころ
)
されるばかりじゃと、我身で我身を
激
(
はげ
)
まして首筋を取って引立てるようにして峠の方へ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「我ら鷹狩りに出でましたるところ鷹を逃がして見つけ廻わるうち、一行の者と駆け
距
(
へだ
)
たり、そのうち
時雨
(
しぐれ
)
に降り込められ、
難渋
(
なんじゅう
)
を致して参ってござる。縁先を拝借いたし申す」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのお途中、
倉橋山
(
くらはしやま
)
という
険
(
けわ
)
しい山をお
越
(
こ
)
えになるときに、かよわい
女鳥王
(
めとりのみこ
)
はたいそうご
難渋
(
なんじゅう
)
をなすって、夫の
王
(
みこ
)
のお手にすがりすがりして、やっと上までお上りになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
ところが、その探検が
難渋
(
なんじゅう
)
をきわめ、やっと一年後に「蕨の切り株」の南隅に立つことができた。そのとき、じつに世界の
耳目
(
じもく
)
をふるい戦かせたほどの、怪異な出来事が起ったのだ。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
『日本外史』などは既に郷里で一とおり読んで来ているから、ほかの生徒が
難渋
(
なんじゅう
)
しているのを見るとむしろおかしいくらいであった。しかるに私が『日本外史』を読むと皆で一度に笑う。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
敵の
首
(
しるし
)
を揚げた時は、
骸
(
かばね
)
は上衣に包んで泉岳寺に持参すること、子息の
首
(
しるし
)
は持参におよばず打捨てること、なお味方の手負いは肩に引懸け連れて退くことが肝要だが、歩行
難渋
(
なんじゅう
)
の首尾になれば
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「女中に逃げられて
難渋
(
なんじゅう
)
していた矢先だもの、つい身につまされたのさ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
余り結構でない薬が実に結構に
利
(
き
)
いて、十五、六年このかた痛みのために夜はいつも寝られないで
難渋
(
なんじゅう
)
して居ったというその痛みもどうやら取れて、幾分か歩くことも自由が利くことになった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「基経殿に中にはいられると事
難渋
(
なんじゅう
)
だ。遠くに急げ。」
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
負傷者も続出して行軍は
難渋
(
なんじゅう
)
を極めている。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし、両三日の大雨の後とて、
帷子川
(
かたびらがわ
)
も名もない野川も、縦横にあふれ走っている。本街道とはいいながら、ひと通りな
難渋
(
なんじゅう
)
さではない。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それがために善人が苦しめられ、罪なき者が
難渋
(
なんじゅう
)
し、人の道は
廃
(
すた
)
り、武士道が亡びても苦しうござらぬか」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それゆえ、よいか、このように申してそちひとりがきゃつの屋敷に乗り込んで参れよ。わたくし、旅に行き暮れて道に踏み迷い、
難渋
(
なんじゅう
)
致しておる者でござります。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
とは言ったが、番頭は
難渋
(
なんじゅう
)
らしい顔色をみせた。さしあたり娘たちのからだに異状があるわけでもないのであるから、医者に診て貰えといっても、おそらく当人たちが承知すまい。
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
教授の兄弟にあたるヘンリーは、有名な小説家で、非常に
難渋
(
なんじゅう
)
な文章を書く男である。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実を申すとここへ来る途中でもその事ばかり考える、蛇の橋も
幸
(
さいわい
)
になし、
蛭
(
ひる
)
の林もなかったが、道が
難渋
(
なんじゅう
)
なにつけても、汗が流れて心持が悪いにつけても、
今更
(
いまさら
)
行脚
(
あんぎゃ
)
もつまらない。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母が心配して眼病を
煩
(
わずら
)
いまして
難渋
(
なんじゅう
)
をいたしますから、屋敷に上げてあった姉を呼戻し、内職をして居りましたが、其の
前年
(
まえのとし
)
の三月から母の眼がばったりと見えなくなりましたゆえ
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「私事は旅の者、足弱を伴うておりますが、思わず路を踏み迷いほとほと
難渋
(
なんじゅう
)
いたしてござるが、願わくばお館に一夜の宿りを所望いたしたく存じまして、
罷
(
まか
)
り
出
(
い
)
でましてございます」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その時、自分は馬に乗るどころでなく、一家を構える力もなく、下宿屋の二階にくすぶって、常に懐中の乏しさに
難渋
(
なんじゅう
)
し、
朝夕
(
あさゆう
)
満員の電車に
鰯
(
いわし
)
の
鑵詰
(
かんづめ
)
の姿をして乗らねばならぬ身の上だった。
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「角町の奴等が馬鹿だったものだから、皆がこんなに
難渋
(
なんじゅう
)
するのさ」
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一味合体
(
いちみがったい
)
いかようの働役に
相当
(
あいあたり
)
候とも、少しも
難渋
(
なんじゅう
)
申すまじきこと。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
道の
難渋
(
なんじゅう
)
はいうまでもなかった。来がけに立ち寄った例の
居酒店
(
いざかや
)
のある村まで来たときは、すでに日も暮れかけていた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
車を仕掛けて人様を引き上げねばならぬほどの
難渋
(
なんじゅう
)
なお山ではございませぬ、
斯様
(
かよう
)
に眼の不自由な私でさえも、さまで骨を折らずに登ることができましたくらいですから
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
年月
(
としつき
)
が
経
(
た
)
っても
返
(
けえ
)
さなければ泥坊より
苛
(
ひど
)
いじゃねえか、
難渋
(
なんじゅう
)
を云って頼んでも理に違っちゃアこれ程も恵まねえ世の中じゃアありませんか、
何故
(
なぜ
)
貴方
(
あなた
)
預かった覚えはないと
仰
(
おっ
)
しゃいました
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
五六本
樹立
(
こだち
)
のあるのを目当に、一軒家へ
辿
(
たど
)
り着いて、台所口から、用を聞きながら、旅に
難渋
(
なんじゅう
)
の次第を話して、一晩泊めて
貰
(
もら
)
ふとね、快く宿をしてくれて、
何
(
ど
)
うして
何
(
ど
)
うして行暮れた
旅商人
(
たびあきうど
)
如きを
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「親方、お客さまをつれてきた、旅のお侍さんで、けがをして
難渋
(
なんじゅう
)
しているんだから、今夜とめてやっておくんなさい」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わけて、山道づたいに上野原へ出た方が、道は
難渋
(
なんじゅう
)
でも、人目は安心でございます
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今の
白痴
(
ばか
)
も、
件
(
くだん
)
の評判の高かった頃、医者の
内
(
うち
)
へ来た病人、その頃はまだ子供、
朴訥
(
ぼくとつ
)
な父親が
附添
(
つきそ
)
い、髪の長い、兄貴がおぶって山から出て来た。脚に
難渋
(
なんじゅう
)
な
腫物
(
はれもの
)
があった、その
療治
(
りょうじ
)
を頼んだので。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「上様の誓紙が今しがた届いた。ついては、いつも
難渋
(
なんじゅう
)
なことのみ頼むが、高松城まで参って欲しい」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「大菩薩峠というのは上り下りが六里からあるで、
難渋
(
なんじゅう
)
な道だ」
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「お屋敷を出た後に、たいそうひどいご病気で
難渋
(
なんじゅう
)
していらっしゃるというお噂は聞きましたが」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三国志の真味を
酌
(
く
)
むにはこの原書を読むに
如
(
し
)
くはないのであるが、今日の読者にその
難渋
(
なんじゅう
)
は耐え得ぬことだし、また、一般の求める目的も意義も、大いに
異
(
ちが
)
うはずなので
三国志:01 序
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜならば、今、数万の役夫を
徴用
(
ちょうよう
)
して、あの
江越
(
ごうえつ
)
国境の山また山を除雪しながら進む難儀は、それをもっと早い一月に決行しても、去年の冬に断行しても、帰するところ、
難渋
(
なんじゅう
)
な点は同じであった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
難渋
(
なんじゅう
)
はそれじゃと皆申しおる」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孫権は、
難渋
(
なんじゅう
)
した顔いろで
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“難渋”の意味
《名詞》
難渋(なんじゅう)
すんなり事が進まないこと。
難儀すること。渋ること。
(出典:Wiktionary)
難
常用漢字
小6
部首:⾫
18画
渋
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“難渋”で始まる語句
難渋寺
難渋者