身震みぶるい)” の例文
大嫌だいきらいだから身震みぶるいをして立留ったが、また歩行あるき出そうとして見ると、蛇よりもっとお前心持の悪いものが居たろうではないか。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「これはほんとに身震みぶるいを催させますね」と彼女が言った。「牧師さんを除いては、私達がその最初であろうと考えますとね」
恰度ちょうど葬式だとの事、段々だんだんその死んだ刻限をきき合わしてみると、自分が聴いたことの音の刻限とぴったり合うので、私は思わず身震みぶるいをしたのであった
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
中佐は軽い身震みぶるいをすると、すぐに馬を急がせ出した。ちょうど当り出した薄日の光に、飾緒かざりおきんをきらめかせながら。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし今では奇妙なもので、「もうそれも平気になった」と彼はすこぶる平然として語ったが、この際弟は、思わずそこの玻璃がらす窓越しに見える死体室を見て、身震みぶるいをしたと、はなしたのであった。
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
その余りの生々しさに私はハッと身震みぶるいを感じたほどでありました。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その女が、これも化けた一つので、くるままでこしらえて、無事に帰してくれたんです。が、こちらが身震みぶるいをするにつけて、立替たてかえの催促がはげしく来ます。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
助け船——なんのって弱い音さ出すのもあって、七転八倒するだでな、兄哥真直まっすぐに突立って、ぶるッと身震みぶるいをさしっけえよ、突然いきなり素裸すっぱだかになっただね。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恐しいといって身震みぶるいをしやあがって、コン畜生、その癖おいらにゃあ三杯とすすらせやがって、鍋底をまたりつけたろう、どうだ、やい、もう不可いけねえだろう。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手が、砂地に引上ひきあげてある難破船の、わずかにその形をとどめて居る、三十石積こくづみと見覚えのある、そのふなばたにかかって、五寸釘をヒヤヒヤとつかんで、また身震みぶるいをした。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが——後には可悪おそろし偉大おおきけものが、ほのおを吹いてうなって来るか、と身震みぶるいをするまでに、なってしまった。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と坊主が呼ぶと、スツとたたんで、貴女きじょが地に落した涼傘ひがさは、身震みぶるいをしてむくと起きた。手まさぐりたまへる緋のふさは、たちまくれない手綱たづなさばけて、朱のくらいた白の神馬しんめ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、乱暴だ。失礼。」と身震みぶるいして、とんとんと軽く靴を踏み、中折を取ると柔かに乱れかかる額髪を払って、色の白い耳のあたりをぬぐったが、年紀としのころ二十三四
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬はせな、腹の皮をゆるめて汗もしとどに流れんばかり、突張つッぱった脚もなよなよとして身震みぶるいをしたが、鼻面はなづらを地につけて一掴ひとつかみ白泡しろあわ吹出ふきだしたと思うと前足を折ろうとする。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と坊主が呼ぶと、スッと畳んで、貴女きじょが地に落した涼傘は、身震みぶるいをしてむくと起きた。手まさぐりたまえる緋のふさは、たちまちくれないの手綱にさばけて、朱のくら置いた白の神馬しんめ
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(ああ、身震みぶるいがするほど上手うまい、あやかるように拝んで来な、それ、お賽銭さいせんをあげる気で。)
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怪しきうおのように身震みぶるいして跳ねたのを、追手おってが見つけて、医師いしゃのその家へかつぎ込んだ。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
煮たのが、心持こころもちが悪けりゃ、刺身さしみにして食べないかッていうとね、身震みぶるいをするんだぜ。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言うより身震みぶるいせしが、俯伏うつむけにゆらめく挿頭かんざし、真白きうなじ、手と手の間を抜けつ、くぐりつ、前髪ばらりとこぼれたるがけざまに倒れかかれる、もすそ蹴返しかかとを空に、下着のくれない宙を飛びて
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
判然きっぱり言う。その威儀が正しくって、月に背けた顔があおく、なぜか目の色が光るようで、うすものしまもきりりと堅く引緊ひきしまって、くっきり黒くなったのに、悚然ぞっとすると、身震みぶるいがして酔がめた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左様そうだ、刺身さしみは一すんだめしで、なますはぶつぶつぎりだ、うおの煮たのは、食べると肉がからみついたまま頭につながって、骨が残る、の皿の中の死骸にうして箸がつけられようといって身震みぶるいをする
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父様おとっさんとこの母様とが聞いても身震みぶるいがするような、そういうひどいめに、苦しい、痛い、苦しい、辛い、惨酷なめに逢って、そうしてようようお分りになったのを、すっかり私に教えて下すったので
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さればこそ烈しく聞えたれ、此の何時いつ身震みぶるいをするはえ羽音はおと
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「どうして、酒と聞くと身震みぶるいがするんだ、どうも、」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美女 おお、(身震みぶるいす)船の沈んだ浦が見える。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)