言上ごんじょう)” の例文
しかるにもかかわらず、小野太左衛門はその説に感歎して、これを主人の伊達政宗だてまさむね言上ごんじょうし、後日に清悦せいえつ御目見おめみえの沙汰さたがあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今般版籍奉還の儀につき、深く時勢を察せられ、広く公議を採らせられ、政令帰一のおぼし召しをもって、言上ごんじょうの通り聞こし召されそうろう事。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
燕も何かたいへんよい事をしたように思っていそいそと王子のお肩にもどって来て今日きょうの始末をちくいち言上ごんじょうにおよびました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それから段々蟠龍軒の身の上を取調べますると、法外な悪党という事が分りましたので、事細かに右京殿へ言上ごんじょういたしました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高見権右衛門が討手うっての総勢を率いて引き上げて来て、松野右京のやしきの書院の庭で主君の光尚みつひさえっして討手の状況を言上ごんじょうする一段のところで
「こは、なさけない仰せをうけたまわるものです。坊門殿には、さいぜんからの正成の言上ごんじょうにお耳をそらしておられましたか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去春白井備後守を差下さしくだし如此之案紙かくのごときのあんしもって、誓紙を沙汰し、入魂じっこんいたすべき旨仰せけるに因って、書き上げたる旨を、石田治部少輔を経て言上ごんじょうに及び
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
甲斐は静かに云った、「言上ごんじょうすべき大事な御用があって伺候した、私には国老の職権がある、高野にそう申してくれ」
清八は取り敢ず御鷹匠小頭こがしらより、人を把るよしを言上ごんじょうしけるに、そは面白からん、明日みょうにち南の馬場ばばおもむき、茶坊主大場重玄おおばじゅうげんを把らせて見よと御沙汰ごさたあり。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
対馬守の鍬が、そっとくように地面をなでると、裃姿かみしもすがたの田丸主水正が、大まじめでお喜びを言上ごんじょうした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
下から大きな旗がふりはじめられたので、かしこみよろこんで、帰還し 摂政宮殿下に言上ごんじょうしました。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「なるほど、みょうなところへおをつかれたものだ。それで、かれらは、どんなはなし言上ごんじょういたしたか、それをばかなかったか……。」と、おうさまはいわれたのです。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしは取るものも取敢とりあえずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきょうりゃく顛末てんまつを深夜のことゆえお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
茶坊主世外せがいめに厶ります。御老臣ばん様が、殿に言上ごんじょうせいとのことで厶りました。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
何事がもちあがろうが——よしんばヴォニファーチイが入って来て「砂糖がきれました」と言上ごんじょうおよぼうが、何かいまわしい世間の陰口が耳に入ろうが、客の中で喧嘩けんかが始まろうが——彼女はただ
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それならば成実盛重両人を氏郷へ人質に遣りて、氏郷これへ参られて後に其仔細しさいを承わりて、言上ごんじょう可申もうすべしと突込んだ。政宗は領掌したが、人質には盛重一人しか出さなかった。氏郷は承知しなかった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
岩倉以下卿相けいしょう列座の中で、面を正して陛下に向い、今後の日本は従来の日本と同じからず、すでに外国には君王を廃して共和政治をきたる国も候、よくよく御注意遊ばさるべくと凜然りんぜんとして言上ごんじょう
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「すっかり見もし聞きもしたよ。組頭くみがしらへさっそく言上ごんじょうしよう」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
言上ごんじょうしければ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
師泰もろやす帯刀たてわきの両将が、勝戦かちいくさのよしを言上ごんじょうのため、つぼの内へ来て、さしひかえておりますが」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この罪人はどうしても、ものを言う気色けしきがございません」と、口をそろえて言上ごんじょうしました。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしは取るものも取敢とりあへずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきうょりゃく顛末てんまつを深夜のことゆゑお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
猶お御老中方に長二郎を初め其の関係かゝりあいの者の身分行状、並に此の事件の手続等をくわしくおたゞしになりましたから、御老中方から明細に言上ごんじょういたされました処、成程半右衞門はんえもん妻柳なる者は
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
城下じょうかにさまよっています、あらゆるあわれな宿やどなしどもをおあつめなされて、ごちそうなされ、かれらがたり、いたりした、めずらしいことを、なんなりと言上ごんじょういたせよと、命令めいれいあったために
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そう存じまして、当座のお詫びを言上ごんじょうつかまつりましたところ、ただ申付けたとおり吟味せよ、急ぐぞ、との仰せにございました、それでとりあえず、お知らせにまいったしだいでございます」
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、こう言上ごんじょうして向って来た公綱であった。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを密々みつみつ言上ごんじょういたしますれば、ちかきご合戦かっせんはご勝利うたがいもなきこととぞんじまする
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある時石川郡いしかわごおり市川いちかわ村の青田あおた丹頂たんちょうの鶴くだれるよし、御鳥見役おとりみやくより御鷹部屋おたかべや注進になり、若年寄わかどしよりより直接言上ごんじょうに及びければ、上様うえさまには御満悦ごまんえつ思召おぼしめされ、翌朝こく御供揃おともぞろい相済み
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
所でくだんの權六の事がお耳に入りますと、其の者を予がそばへ置きたいとの御意ゆえ、お附の衆から老臣へ申し立て、かみへも言上ごんじょうになると、苦しゅうないとの御沙汰ごさたで、至急に江戸詰を仰付けられたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
愚禿ぐとく親鸞言上ごんじょう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)