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袍
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ほう
ふりがな文庫
“
袍
(
ほう
)” の例文
無紋の
袍
(
ほう
)
に灰色の
下襲
(
したがさね
)
で、
冠
(
かむり
)
は喪中の人の用いる
巻纓
(
けんえい
)
であった。こうした姿は美しい人に落ち着きを加えるもので
艶
(
えん
)
な趣が見えた。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
城隍廟
(
じょうこうびょう
)
のそば、
観音庵
(
かんのんあん
)
の家にもどると、彼はすぐさま身支度にかかった。胸に銀甲を当て、
琥珀色
(
こはくいろ
)
の
袍
(
ほう
)
に、
兜巾
(
ときん
)
をつけ髪をしばる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さて、ある日曜日、ペンネンネンネンネン・ネネムは三十人の部下をつれて、銀色の
袍
(
ほう
)
をひるがえしながら丘へ行きました。
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
殿上の高い処に一人の王者が
冕
(
かんむり
)
を被り
袍
(
ほう
)
を著て
案
(
つくえ
)
に拠って坐っていた。その左右には吏員がおり、また鬼卒も控えていた。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
全世界とシーザーの紫色の
袍
(
ほう
)
をとってこそ、はじめて、世界的王国を建設して、宇宙的平和を設定することができるのだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
▼ もっと見る
ずいぶん逼迫した公卿もあって位階昇進の御礼に参内する際、武人の
袍
(
ほう
)
を借り受けて間に合わした者もあるくらいだ。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
手枕をし、足を縮め、海老のように寝ている城主の姿が、ボッと薄赤く光っているのは、身に纏っている纐纈の
袍
(
ほう
)
が、微芒を放っているからであろう。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼等の精神的奴隷たちは、——肉体だけ
逞
(
たくま
)
しい兵卒たちはクリストに
荊
(
いばら
)
の
冠
(
かんむり
)
をかむらせ、紫の
袍
(
ほう
)
をまとはせた上、「ユダヤの王安かれ」と叫んだりした。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
(美少年ありて、両親の脚の下に墜つ。この屍はその人の姿かと疑はる。されどその形骸は直ちに消え失せ、
毫光
(
ごうこう
)
は彗星の如く天に升り去り、跡に衣と
袍
(
ほう
)
とリラの琴と残れり。)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
正面の高いところには、錦の冠をいただいて黄色い
袍
(
ほう
)
を着た男が酒に酔ったような顔をして、珠をちりばめた
榻
(
とう
)
に腰をかけていた。これが唐人の王様であろうと千枝松は推量した。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼はがっちりした体に大ぶ古くなった
袍
(
ほう
)
を着て、樺の皮の冠を
無雑作
(
むぞうさ
)
に
冠
(
かぶ
)
って居た。
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
建文三年二月、燕王自ら文を
撰
(
せん
)
し、
流涕
(
りゅうてい
)
して陣亡の将士張玉等を祭り、服するところの
袍
(
ほう
)
を脱して
之
(
これ
)
を
焚
(
や
)
き、以て
亡者
(
ぼうしゃ
)
に
衣
(
き
)
するの意をあらわし、曰く、
其
(
そ
)
れ一
糸
(
し
)
と
雖
(
いえど
)
もや、以て余が心を
識
(
し
)
れと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
具足を脱いで、黄なる
袍
(
ほう
)
に姿を改めたる騎士なり。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
写経料紙の端に、
袍
(
ほう
)
を着た
幞頭
(
ぼくとう
)
(帽子)すがたの大男が、眼玉をむき、肩ヒジを張って、大議論をぶッている絵の落書きだ。
美しい日本の歴史
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それがためにあわてて起きて帰ろうとしていた彭は、判官の捕卒のために縛られてその前へ引き出された。判官は黒い
頭巾
(
ずきん
)
をつけて緑の
袍
(
ほう
)
を着ていた。
荷花公主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
よいできの
袍
(
ほう
)
を着て、柳の色の
下襲
(
したがさね
)
を用い、
青鈍
(
あおにび
)
色の
支那
(
しな
)
の
錦
(
にしき
)
の
指貫
(
さしぬき
)
を
穿
(
は
)
いて整えた姿は重々しい大官らしかった。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
唯彼を推し立てることのクリストを憎み或は
妬
(
ねた
)
んだ大勢の人々に便利だつたからである。カヤパはきららに
袍
(
ほう
)
を
着下
(
きくだ
)
し、冷かにクリストを眺めてゐたであらう。
続西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沈まんとする日の上には
猶太
(
ユダヤ
)
王の
袍
(
ほう
)
に似た、金繍のヘリある雲の一群がじっと動かずに浮かんでいる。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その
頭分
(
かしらぶん
)
とみえる者は
紅
(
あか
)
い
冠
(
かんむり
)
をいただき、うす黄色の
袍
(
ほう
)
を着て、神坐の前にある
案
(
つくえ
)
に拠って着坐すると、その従者とおぼしきもの十余人はおのおの武器を執って、
階段
(
きざはし
)
の下に居列びました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
只今お
附
(
つき
)
申して参る途中で、殿様の
袍
(
ほう
)
の裾の
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
おれたちの
袍
(
ほう
)
はひるがえる。
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
袈裟
(
けさ
)
新
(
あらた
)
に
換
(
かわ
)
る
兗龍
(
こんりゅう
)
の
袍
(
ほう
)
。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ほどなく、朱武、陳達、楊春の三人は、かねて史進から贈られた
紅錦
(
こうきん
)
の
袍
(
ほう
)
を具足の下に着て、時刻たがえずやってきた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お聞きになったらどうお思いになることだろう。貴公子でおありになっても、最初の殿様が
浅葱
(
あさぎ
)
の
袍
(
ほう
)
の六位の方とは
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そうして
袍
(
ほう
)
の袖を引いた。が、城主は動かなかった。図に乗った猿は一層近付き、
鉤
(
かぎ
)
のような指を引っ張った。やはり城主は動かなかった。一斉に猿達は
喝采
(
かっさい
)
した。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
紫の
袍
(
ほう
)
を著た貴人が侍臣に取り巻かれて宮門の方から出てきた。
柳毅伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
深い緑の松原の中に花
紅葉
(
もみじ
)
が
撒
(
ま
)
かれたように見えるのは
袍
(
ほう
)
のいろいろであった。赤袍は五位、
浅葱
(
あさぎ
)
は六位であるが、同じ六位も
蔵人
(
くろうど
)
は青色で目に立った。
源氏物語:14 澪標
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
とどろく答えとともに、陣鼓一声、
白斑
(
しろまだら
)
な
悍馬
(
かんば
)
に乗って、身に銀甲をいただき
鮮紅
(
せんこう
)
の
袍
(
ほう
)
を着、
細腰青面
(
さいようせいめん
)
の弱冠な人が、さっと、野を斜めに駈けだして来た。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
騎馬の闘牛者の投げる
鎗
(
やり
)
、また翻えす深紅の
袍
(
ほう
)
、傷付くごとに怒号する闘牛の声の物凄かったこと。
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
打ち眺めれば、その人、まだ
年歯
(
ねんし
)
二十歳がらみの弱冠で、頭は
黄巾
(
こうきん
)
で結び、身に
青錦
(
せいきん
)
の
袍
(
ほう
)
を着て、たちまち山を馳けおり、渓河をこえて、関羽の前に迫った。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
火柱の主——
仮面
(
めん
)
の城主! 城主の着ている纐纈の
袍
(
ほう
)
の袖や
裳裾
(
もすそ
)
が風に煽られ、グルグルグルグル渦巻く様は、火柱が四方八方へ、あたかも焔を
翻
(
ひるが
)
えすようであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
桜の色の
支那錦
(
しなにしき
)
の
直衣
(
のうし
)
、赤紫の
下襲
(
したがさね
)
の
裾
(
すそ
)
を長く引いて、ほかの人は皆正装の
袍
(
ほう
)
を着て出ている席へ、
艶
(
えん
)
な宮様姿をした源氏が、多数の人に敬意を表されながらはいって行った。
源氏物語:08 花宴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
一個の男は黒色の
袍
(
ほう
)
を着て
戦斧
(
せんぷ
)
をひっ提げ、次の大男は赤地
金襴
(
きんらん
)
の
戦袍
(
せんぽう
)
に
卍頭巾
(
まんじずきん
)
といういでたち。また三番目の野太刀を持ったひょろ長い男は
緑衣
(
りょくい
)
であった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左右の大臣、内大臣、納言以下はことごとく
供奉
(
ぐぶ
)
したのである。
浅葱
(
あさぎ
)
の色の
袍
(
ほう
)
に紅紫の
下襲
(
したがさね
)
を殿上役人以下五位六位までも着ていた。時々少しずつの雪が空から散って
艶
(
えん
)
な趣を添えた。
源氏物語:29 行幸
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
母は、子を叱るために励ましているわれとわが声に泣いてしまって、
袍
(
ほう
)
の袖を、老いの眼に当てた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浅葱
(
あさぎ
)
の
袍
(
ほう
)
を着て行くことがいやで、若君は御所へ行くこともしなかったが、五節を機会に、好みの色の
直衣
(
のうし
)
を着て宮中へ出入りすることを若君は許されたので、その夜から御所へも行った。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
やがて李儒は、
袍
(
ほう
)
を血まみれに汚して戻ってきたが、いきなり提げていた二つの首を突きだして
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大将や
左衛門督
(
さえもんのかみ
)
などの
息子
(
むすこ
)
の、自分よりも低いもののように見下しておりました者の位階が皆上へ上へと進んで行きますのに、自分は
浅葱
(
あさぎ
)
の
袍
(
ほう
)
を着ていねばならないのをつらく思うふうですからね。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
柩
(
ひつぎ
)
の
輿
(
こし
)
は、金箔と五色の泥彩で塗られ、大勢のシナ人が
舁
(
かつ
)
いで行った。刺繍の
袍
(
ほう
)
みたいな衣服を着た道士だの祭司がそれを
繞
(
めぐ
)
り、前後には、
竜頭
(
たつがしら
)
の弔旗や
旛
(
はん
)
が林立してゆく。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若い高官たちが正装の
袍
(
ほう
)
の肩を脱いで舞の場へ加わった。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そして、
儀仗
(
ぎじょう
)
をととのえ、きのうに
勝
(
まさ
)
る行装をこらして、朝霧のうすく流れている宮門へ向って進んでゆくと、一
旒
(
りゅう
)
の白旗をかついで青い
袍
(
ほう
)
を着た道士が、ひょこり道を曲ってかくれた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ご主人様。……
袍
(
ほう
)
の襟を解いたらこんな物が出てきました」
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
恩賜
(
おんし
)
の
袍
(
ほう
)
を刀のさきで受けるとは」
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
金襴
(
きんらん
)
の
袍
(
ほう
)
があるぞ」
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“袍”の解説
袍(ほう)とは、日本や中国などで用いられる衣服。日本においては、朝服の上衣のひとつ。武官・幼年用の闕腋袍(けってきのほう。両わきの袖付けの下を縫い合わせない)と、文官用の縫腋袍(ほうえきのほう。袖付け下を縫い合わせる)がある。
(出典:Wikipedia)
袍
漢検1級
部首:⾐
10画
“袍”を含む語句
褞袍
素袍
戦袍
縕袍
袍衣
御袍
錦袍
寛袍
緑袍
衣袍
外袍
黄袍
懐袍
破褞袍
花戦袍
美袍
袍巻
纐纈袍
袍着
襤褸褞袍
...