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蚊柱
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かばしら
ふりがな文庫
“
蚊柱
(
かばしら
)” の例文
江戸のもの音が、去った夏の夕べの
蚊柱
(
かばしら
)
のように、かすかに耳にこもるきり、大川の水は、
銀灰色
(
ぎんかいしょく
)
に濁って、洋々と岸を洗っています。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それからまたどの映画にも必ず根気よく実に根気よく繰返される退屈な立廻りが、どうも
孑孒
(
ぼうふら
)
の群や
蚊柱
(
かばしら
)
の運動を聨想させる。
雑記帳より(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
父
(
ちゝ
)
なるものは
蚊柱
(
かばしら
)
の
立
(
たつ
)
てる
厩
(
うまや
)
の
側
(
そば
)
でぶる/\と
鬣
(
たてがみ
)
を
撼
(
ゆる
)
がしながら、ぱさり/\と
尾
(
を
)
で
臀
(
しり
)
の
邊
(
あたり
)
を
叩
(
たゝ
)
いて
居
(
ゐ
)
る
馬
(
うま
)
に
秣
(
まぐさ
)
を
與
(
あた
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
盛
(
さかん
)
なる
哉
(
かな
)
、
炎暑
(
えんしよ
)
の
色
(
いろ
)
。
蜘蛛
(
くも
)
の
圍
(
ゐ
)
の
幻
(
まぼろし
)
は、
却
(
かへつ
)
て
鄙下
(
ひなさが
)
る
蚊帳
(
かや
)
を
凌
(
しの
)
ぎ、
青簾
(
あをすだれ
)
の
裡
(
なか
)
なる
黒猫
(
くろねこ
)
も、
兒女
(
じぢよ
)
が
掌中
(
しやうちう
)
のものならず、
髯
(
ひげ
)
に
蚊柱
(
かばしら
)
を
號令
(
がうれい
)
して、
夕立
(
ゆふだち
)
の
雲
(
くも
)
を
呼
(
よ
)
ばむとす。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
軒端
(
のきば
)
に
立
(
た
)
つ
蚊柱
(
かばしら
)
のように、どこからともなく
集
(
あつ
)
まって
来
(
き
)
た
子供
(
こども
)
の
群
(
むれ
)
は、
土平
(
どへい
)
の
前後左右
(
ぜんごさゆう
)
をおッ
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
いて、
買
(
か
)
うも
買
(
か
)
わぬも一
様
(
よう
)
にわッわッと
囃
(
はや
)
したてる
賑
(
にぎ
)
やかさ、
長屋
(
ながや
)
の
井戸端
(
いどばた
)
で
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
機体は
埃
(
ほこり
)
のように小さくしか見えません。しかしその数は
蚊柱
(
かばしら
)
のように無数です。空一面を覆って、東へ東へと飛んでいるのです。爆音も蚊柱の唸りほどにしか聞えません。それ程高度が高いのです。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
蚊柱
(
かばしら
)
の
礎
(
いしずゑ
)
となる
捨子
(
すてこ
)
かな
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
晩餐
(
ばんさん
)
が
畢
(
をは
)
ると
踊子
(
をどりこ
)
を
誘
(
さそ
)
ふ
太鼓
(
たいこ
)
の
音
(
おと
)
が
漸
(
やうや
)
く
沈
(
しづ
)
み
掛
(
か
)
けた
夜氣
(
やき
)
を
騷
(
さわ
)
がして
聞
(
きこ
)
え
始
(
はじ
)
めた。
檐
(
のき
)
に
立
(
た
)
つた
蚊柱
(
かばしら
)
が
崩
(
くづ
)
れて
軈
(
やが
)
て
座敷
(
ざしき
)
を
襲
(
おそ
)
うた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
自分の子供の時分、郷里ではそういう場合に「おらのおととのかむ——ん」という
呪文
(
じゅもん
)
を唱えて頭上に
揺曳
(
ようえい
)
する
蚊柱
(
かばしら
)
を呼びおろしたものである。
試験管
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
僥倖
(
さいはひ
)
に
雷
(
らい
)
は
聞
(
き
)
こえなかつた。
可恐
(
おそろ
)
い
夕立雲
(
ゆふだちぐも
)
は、
俥
(
くるま
)
の
行
(
ゆ
)
くにつれて、
峠
(
たうげ
)
をむかう
下
(
さが
)
りに
白刃
(
しらは
)
を
北
(
きた
)
に
返
(
かへ
)
した
電光
(
でんくわう
)
とともに
麓
(
ふもと
)
へ
崩
(
くづ
)
れて
走
(
はし
)
つたが、たそがれの
大良
(
だいら
)
の
茶屋
(
ちやや
)
の
蚊柱
(
かばしら
)
は
凄
(
すさま
)
じかつた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
日
(
ひ
)
は
茂
(
しげ
)
れる
中
(
なか
)
より
暮
(
く
)
れ
初
(
そ
)
めて、
小暗
(
をぐら
)
きわたり
蚊柱
(
かばしら
)
は
家
(
いへ
)
なき
處
(
ところ
)
に
立
(
た
)
てり。
袂
(
たもと
)
すゞしき
深
(
ふか
)
みどりの
樹蔭
(
こかげ
)
を
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
には、あはれ
小
(
ちひ
)
さきものども
打
(
うち
)
群
(
む
)
れてもの
言
(
い
)
ひかはすわと、それも
風情
(
ふぜい
)
かな。
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蚊
常用漢字
中学
部首:⾍
10画
柱
常用漢字
小3
部首:⽊
9画
“蚊”で始まる語句
蚊帳
蚊
蚊遣
蚊遣香
蚊遣火
蚊屋
蚊燻
蚊細
蚊針
蚊㡡