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うぬぼれ
ふりがな文庫
“
自惚
(
うぬぼれ
)” の例文
請う、
自惚
(
うぬぼれ
)
にも、出過ぎるにも、聴くことを許されよ。田舎武士は、でんぐり返って、自分が、石段を熊の上へ転げて落ちる
思
(
おもい
)
がした。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
といふので、男が持前の
自惚
(
うぬぼれ
)
から、みんな自分がその忘れられない男にならうと、せつせと通つて来るので、
甚
(
ひど
)
く全盛を極めたさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ことに、山野や桑田などの、燃ゆるような文壇的野心や、
自惚
(
うぬぼれ
)
に近い自信が、俺にもいくらか移入されていたせいかも知れない。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかし彼は、もし自分の価値が宮廷からもっとよく知られたら自分の方がいっそうよく相当していると、信ずるだけの
自惚
(
うぬぼれ
)
をもっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そいつが二年ばかり廃めてて返り咲き、今度はみっちりこの俺が仕込んだんだ、出来星の二つ目とは違うってこと、俺の
自惚
(
うぬぼれ
)
じゃないはずだ
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
▼ もっと見る
山嵐の鼻に至っては、
紫色
(
むらさきいろ
)
に
膨張
(
ぼうちょう
)
して、
掘
(
ほ
)
ったら中から
膿
(
うみ
)
が出そうに見える。
自惚
(
うぬぼれ
)
のせいか、おれの顔よりよっぽど手ひどく
遣
(
や
)
られている。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「惡智慧に
自惚
(
うぬぼれ
)
のある奴は、ツイあんな事をして見たくなるのだ。錢形平次の眼の前で、人一人殺して見せ度くなつたのさ」
銭形平次捕物控:177 生き葬ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さりとて気ざな咳払ひして
据膳
(
すえぜん
)
ならでは喰ひやせぬといふほどの
自惚
(
うぬぼれ
)
もなければ、まづ小当りに当つて出来やすきを取る。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「そうだ、そうだ。長屋の
嬶
(
かか
)
にお情もくそもあるものか。
自惚
(
うぬぼれ
)
ちゃいけねえ。」とすさんだ口調で言い、がたぴし
破戸
(
やれど
)
をあけて三人を招き入れ
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それも決して
自惚
(
うぬぼれ
)
でもなんでもなく、それに叶うところの腕と眼が、並び進んでいるということは、全く案外な進境と言わなければなりません。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
斯様
(
こん
)
なことを言った。私に字を書かして見て何うするつもりかあなたの心は分っています、なんて
自惚
(
うぬぼれ
)
も強い女だった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
知己の者はこの男の事を
種々
(
さまざま
)
に評判する。
或
(
あるい
)
は「
懶惰
(
らんだ
)
だ」ト云い、或は「
鉄面皮
(
てつめんぴ
)
だ」ト云い、或は「
自惚
(
うぬぼれ
)
だ」ト云い、或は「
法螺吹
(
ほらふ
)
きだ」と云う。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「君の方では、あれで、厳重な戸締りをしたつもりなんだろうねえ。人間なんて、
自惚
(
うぬぼれ
)
ばかりつよくて哀れなものだ」
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それは自分だけの
自惚
(
うぬぼれ
)
ではなく、小隊長からもたしかに賞められたので、隊の誰にもひけをとらないだけに大胆で勇敢であったのが、帰還した途端に
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
併し長官さえ
彼
(
あ
)
れ程に
賞
(
ほめ
)
る位だから谷間田は上手は上手だ
自惚
(
うぬぼれ
)
るも無理は無い、けどが己は己だけの見込が有るワ
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そこで働く女の一人一人が俺が俺こそが客を持つてゐるとの
自惚
(
うぬぼれ
)
がなくてはかなはないとだけではない、おきよにはおきよの古い思ひ出があつたはずだ
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
これも我には
心易
(
こゝろやす
)
だての我儘と
自惚
(
うぬぼれ
)
が
嵩
(
こう
)
じていましたから、
情人
(
おとこ
)
の為に嫌われると気の
注
(
つ
)
きませんで持ったもの。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ねえ、君、世間には恋愛、心痛、厭世、
怯懦
(
けふだ
)
、
自惚
(
うぬぼれ
)
、公憤から自殺する人があるのだね。併し僕はこんな動機の中のどれにも動かされて死ぬるのではない。
不可説
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
要するにあのお方は
丸袴
(
がんこ
)
の子弟さ。
自惚
(
うぬぼれ
)
の強い貴公子なのさ。自分の力を自分で過信し、勝手に幻影を描いている方さ。……名古屋の富豪を呼びつけて金を
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もはや少しの
自惚
(
うぬぼれ
)
もなかったが、今もなお彼女の若かりし時代の習慣をそのままに、二十年前の流行を固守した衣裳を身につけると、五十年前と同じように
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
ではないつもりだ。ポリネシア人の仮面——全く之は白人には
竟
(
つい
)
に解けない太平洋の謎だが——が斯くも完全に脱棄てられたのを、私は見たことがない。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
歌よみのいふ事を聞き候へば和歌程善き者は他に無き由いつでも誇り申候へども歌よみは歌より外の者は何も知らぬ故に歌が一番善きやうに
自惚
(
うぬぼれ
)
候次第に有之候。
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
銭は
家
(
うち
)
の銭だ、盗んだ銭じゃないぞと云うような
気位
(
きぐらい
)
で、
却
(
かえっ
)
て藩中者の頬冠をして
見栄
(
みえ
)
をするのを
可笑
(
おか
)
しく
思
(
おもっ
)
たのは少年の血気、自分
独
(
ひと
)
り
自惚
(
うぬぼれ
)
て居たのでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
と
瘡毒気
(
かさけ
)
の行渡る極み、津々浦々までペコンペコンとやっているが、太鼓の方はそうは行かない。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
は誰にもあるもので、この話でも万一ヨオロッパのどの国かの
語
(
ことば
)
に翻訳せられて、世界の文学の仲間入をするような事があった時、
余所
(
よそ
)
の読者に分からないだろうかと
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
が、しかし、あれほどまでに親しかったフロールでさえ、親しいと考えていたのは私の
自惚
(
うぬぼれ
)
で、フロールはただ
憐愍
(
れんびん
)
と同情とを一人の
不具者
(
かたわもの
)
に恵んでいたにすぎなかったのだ。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
かも知れないけれども、尾佐は根から寂しい男だったのを、自分だけがこの男に一時でも花やかなものを引き出してやった。尾佐に一生に一度の青春を点火してやったのだ。
唇草
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私が前に誤れる考を持っておったことも、今の考も、私の弱点も、私の
自惚
(
うぬぼれ
)
も、つまり私のすべての心を貴女は御存知でしょう。貴女は私を誤れる道から正しい方へと導いて下さった。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
友情の大切な謙抑などと云うことを彼女は考えず、空虚な胸を、ぐっともたせかけて来ようとするのか。そう云うところが彼女の所謂「失敗」の原因であろう。少し
自惚
(
うぬぼれ
)
がつよすぎるか。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
写真の裏に
種々
(
いろいろ
)
の
楽書
(
らくがき
)
がしてある。中には乃公の読めないのもあるが、「
自惚
(
うぬぼれ
)
かがみ」というのは鬚をピンと跳ねさせて鼻眼鏡を掛けている。「これでも申込んだのよ」というのがある。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
の強い私の
猜疑心
(
さいぎしん
)
は、そんな
途方
(
とほう
)
もないことまでも、想像するのであった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
肉と酒、食う程に呑む程に、この豚男の
自惚
(
うぬぼれ
)
話を聞いて、卓子の上は皿小鉢の行列である。私は胸の中かムンムンつかえそうになった。ちんやを出ると、次があらえっさっさの帝京座だ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
男でも女でも、そんな
肥
(
ふと
)
つちよの、弱蟲の、
自惚
(
うぬぼれ
)
の強い役に立たずを
背負
(
しよ
)
ひ込まうつて人が見附からないと、あなたは虐待されたとか無視されたとか
慘
(
みじ
)
めだとかつて喚き立てるのでせう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし今や彼は、無味乾燥な、ばかな、愚かな、無益な、
自惚
(
うぬぼれ
)
の強い、いやな、無作法な、ごく醜い男としか、彼女には思われなかった。将校の方では義務とでも思ってか彼女にほほえみかけた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いえ、それだけは、わたくしも承知してをりました。でも、そこは、奥さま、世の中で、自分が一番醜いと思ふ女はございますまい。
自惚
(
うぬぼれ
)
でもなんでも、さうは思ひたくないのが人情でございませう。
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
自惚
(
うぬぼれ
)
がきわまるとき、人は礼拝の中に優越を見出すものである。
安吾史譚:02 道鏡童子
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
あのノロマな
自惚
(
うぬぼれ
)
からの失敗だとしか思へなくなりました。
妾の会つた男の人人
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
胸なんと云うことはお
廃
(
よし
)
なさい。
自惚
(
うぬぼれ
)
だわ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
でも自分だけは
自惚
(
うぬぼれ
)
て満足していた。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
茶々風茶
(
ちや/\ぷうちや
)
に
爲
(
し
)
たらば女は
吾儕
(
われ
)
の物と
究
(
きはめ
)
てはゐるが手段に
困
(
こま
)
り其所で兄貴に相談に來たが
趣向
(
しゆかう
)
は
無物
(
なきもの
)
かと問はれて元益笑ひ出し世に
自惚
(
うぬぼれ
)
と
瘡氣
(
かさけ
)
のない者はないとぞ言に
違
(
たが
)
はずお光は未だ手に入ねば此
婚禮
(
こんれい
)
が
破談
(
はだん
)
に成てもお主の方へ來るか來ねへか其所の所は
解
(
わか
)
らぬが是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼らの
阿諛
(
あゆ
)
はハスレルに有害であって、彼をあまりに
自惚
(
うぬぼれ
)
さしていた。彼は頭に浮かぶ楽想を、少しも
検
(
しら
)
べないでことごとく取り上げた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
人間どう間違えても、
自惚
(
うぬぼれ
)
のないものはないとか言います……少くとも私は……人として、一生に一度ぐらいは惚れられる。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
當り前ですよ、殺し手がなきや、私が殺したかつたくらゐのもので、——あんな薄情でケチで、
自惚
(
うぬぼれ
)
と押しが強くて、始末の惡い男はありません。
銭形平次捕物控:201 凉み船
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、あいつが、自分の小説がすぐ林田の好意ある推薦を受けるとでも、思っているのは、彼の無知から出た
自惚
(
うぬぼれ
)
だ。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
無論戦争に関する演説で、
自惚
(
うぬぼれ
)
好きな英国人が、首相の口から直接独逸文明の、安物の外套のやうに裏は
襤褸
(
ぼろ
)
つ
切
(
きれ
)
であるのを聴くための催しであつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
遊女に迷うているものの
自惚
(
うぬぼれ
)
には誰もありそうな心持ですけれど、兵馬のはそれがいかにも
初心
(
うぶ
)
でした。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
莫迦莫迦
(
ばかばか
)
。
手前
(
てめえ
)
はなんて
唐変木
(
とうへんぼく
)
なんだろう。
自惚
(
うぬぼれ
)
が強すぎるぜ。まだ仕事も一人前に出来ないのに……
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それに加えて、お千代は若い時分から誰彼にかぎらず男には好かれていたという単純な
自惚
(
うぬぼれ
)
を持っている。
船堀
(
ふなぼり
)
の
家
(
うち
)
にいた
時分
(
じぶん
)
には近処の若いものにちやほやされた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
歌よみのいふ事を聞き候へば和歌ほど善き者は他になき由いつでも誇り申候へども、歌よみは歌より外の者は何も知らぬ故に、歌が一番善きやうに
自惚
(
うぬぼれ
)
候次第に有之候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
全躰
(
ぜんたい
)
何故
我
(
おれ
)
を免職にしたんだろう、解らんナ、
自惚
(
うぬぼれ
)
じゃアないが
我
(
おれ
)
だッて何も役に立たないという方でもなし、また残された者だッて何も別段役に立つという方でもなし
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
自
常用漢字
小2
部首:⾃
6画
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“自惚”で始まる語句
自惚家
自惚鏡
自惚心