茶話:02 大正五(一九一六)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
しかし彼は、もし自分の価値が宮廷からもっとよく知られたら自分の方がいっそうよく相当していると、信ずるだけの自惚をもっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「惡智慧に自惚のある奴は、ツイあんな事をして見たくなるのだ。錢形平次の眼の前で、人一人殺して見せ度くなつたのさ」
銭形平次捕物控:177 生き葬ひ (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それも決して自惚でもなんでもなく、それに叶うところの腕と眼が、並び進んでいるということは、全く案外な進境と言わなければなりません。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
もはや少しの自惚もなかったが、今もなお彼女の若かりし時代の習慣をそのままに、二十年前の流行を固守した衣裳を身につけると、五十年前と同じように
世界怪談名作集:03 スペードの女王 (新字新仮名) / アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン(著)
歌よみのいふ事を聞き候へば和歌程善き者は他に無き由いつでも誇り申候へども歌よみは歌より外の者は何も知らぬ故に歌が一番善きやうに自惚候次第に有之候。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自惚かも知れないけれども、尾佐は根から寂しい男だったのを、自分だけがこの男に一時でも花やかなものを引き出してやった。尾佐に一生に一度の青春を点火してやったのだ。
私が前に誤れる考を持っておったことも、今の考も、私の弱点も、私の自惚も、つまり私のすべての心を貴女は御存知でしょう。貴女は私を誤れる道から正しい方へと導いて下さった。
ファラデーの伝:電気学の泰斗 (新字新仮名) / 愛知敬一(著)
友情の大切な謙抑などと云うことを彼女は考えず、空虚な胸を、ぐっともたせかけて来ようとするのか。そう云うところが彼女の所謂「失敗」の原因であろう。少し自惚がつよすぎるか。
日記:09 一九二三年(大正十二年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
肉と酒、食う程に呑む程に、この豚男の自惚話を聞いて、卓子の上は皿小鉢の行列である。私は胸の中かムンムンつかえそうになった。ちんやを出ると、次があらえっさっさの帝京座だ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア (旧字旧仮名) / シャーロット・ブロンテ(著)
しかし今や彼は、無味乾燥な、ばかな、愚かな、無益な、自惚の強い、いやな、無作法な、ごく醜い男としか、彼女には思われなかった。将校の方では義務とでも思ってか彼女にほほえみかけた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
いえ、それだけは、わたくしも承知してをりました。でも、そこは、奥さま、世の中で、自分が一番醜いと思ふ女はございますまい。自惚でもなんでも、さうは思ひたくないのが人情でございませう。
自惚がきわまるとき、人は礼拝の中に優越を見出すものである。
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ファウスト (新字新仮名) / ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(著)
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
當り前ですよ、殺し手がなきや、私が殺したかつたくらゐのもので、——あんな薄情でケチで、自惚と押しが強くて、始末の惡い男はありません。
銭形平次捕物控:201 凉み船 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
茶話:04 大正七(一九一八)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
歌よみのいふ事を聞き候へば和歌ほど善き者は他になき由いつでも誇り申候へども、歌よみは歌より外の者は何も知らぬ故に、歌が一番善きやうに自惚候次第に有之候。