“脱兎:だっと” の例文
“脱兎:だっと”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治12
海野十三10
中里介山5
太宰治3
佐々木味津三3
“脱兎:だっと”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.7%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
二人は、そっと、チャンウーの店の屋根からすべりおりると、ビルディングの非常梯子を、脱兎だっとのごとくかけのぼっていった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と思うと、乱れた髪もつくろわずに、脱兎だっとのごとく身をかわして、はだしのまま、縁を下へ、白い布をひらりとくぐる。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
汗でぐしょぐしょになるほど握りしめていた掌中のナイフを、力一ぱいマットに投げ捨て、脱兎だっとごとく部屋から飛び出た。
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうなると奇妙にも勇気が出て来て、私は脱兎だっとの如く、駈けつける近所の人の袖の下をくぐって、喫茶店の中に飛び込みました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
博士は今度は少し心配そうに顔色を悪くしてそっと式場を見まわしました。それから、まるで脱兎だっとのような勢で結論にはいりました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「突進だ」古谷局長は、貝谷をうながすと、脱兎だっとのようにけだした。そして船橋につづく狭い昇降階段をするするとのぼった。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おれはあいつにあやまらなきゃならない」巌は脱兎だっとのごとくはだしのままで外へでた。そうして突然チビ公の前に立ちふさがった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
稽古が済むと、脱兎だっと何のそのという勢いでいきなり稽古場を飛び出したが、途中で父の組下の烏山からすやま勘左衛門に出遇ッた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
と、不安そうに見おくる少女たちの視界しかいをはなれて、とちゅうから、脱兎だっとのごとくけてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というとはねおきた一方の男は、脱兎だっとのごとく茶店ちゃみせのそとへ飛びだして、なにか大声で向こうの並木なみきへ手をふった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一つかみの酒代を持つと、さながら生れ変った人間のようになって、各〻脱兎だっとのごとく自分自分の仕事の持場へ駈け出していた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一番後に居た一人二人が、脱兎だっとごとく元来た道に逃げ出した。機銃は、その物音に再び火を吐いた。が、それは死角だった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
——知るや、退屈男は一散走り! 刄襖はぶすま林の間をかいくぐりながら、脱兎だっとのごとくに走りつけると、
なにをするうちか、誰の住いか、見さだめるひまもなかった。脱兎だっとのように三人は、小屋から飛び出して、その木戸の中へ駈けこんだ。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
静岡県……なにがし……校長、島山理学士の夫人菅子すがこ、英吉がかつて、脱兎だっとのごとし、と評した美人たおやめはこれであったか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はあたかも此の好機逸すべからずと、死の谷の方へ脱兎だっとの如くに早く駈け出して行ったのだった。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
と——弦之丞が、次の言葉をかける間もあらばこそ、怪しげな二人の侍——霏々ひひとふる雪のあなたへ、脱兎だっとのごとく逃げだしてゆく——。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちにお小夜の帯がバラリと解けました。銀の厚板の一と抱えほどあるのが、笹野新三郎の手に残ると、お小夜は脱兎だっとのごとく身を抜けて、
脱兎だっとの如く、兵馬は秋草を飛び越えたのです。そうして、仏頂寺の倒れたのを抱き起して見たのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
頭から掻巻かいまきかぶったお銀様が、内から戸を押開いて、脱兎だっとの勢いで、その燃えさかる火の中へ飛び出したのはこの時であります。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と侍を打据えにかかると、うるさくなったものか侍は大手を拡げて闘意のないことを示したが、それも一瞬、いきなり脱兎だっとのようにげだした。
四人の駕籠屋どもは、申し合わせたように同音にこう言い捨てるや、脱兎だっとの如く逃げ出しました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ヒルガードは一礼して脱兎だっとのように壇を下りただ一つあいた席にぴたっと座ってしまいました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
という様子で、脱兎だっとのように後へ駆け戻ったが、もう、むらがる人数が足もとを待ちかまえて、
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清澄の茂太郎はこうして竜燈の松のそばまで来た時、突如として脱兎だっとの如く走り出しました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もすそを乱して一旦は倒れたが又たちまね起きて、脱兎だっとの如くに表へ逃げ出そうとするのを、𤢖は飛びかかって又引据ひきすえた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
醤は、もう話はすんだと、卓子テーブルの下から脱兎だっとのようにとびだすと、部下のつめている部屋へとんでいって、金博士の死骸の取片づけ方を命令した。
匕首あいくちをつかみ、解けかけた帯の端を左の手で持ちながら、あざみの芳五郎は、脱兎だっとのように、木場きばの材木置場の隅へ逃げこんで行った。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骸骨同士が手をつないでおどりだした。もうたくさんだ! 正太はうしろの壁へ、白墨で自分の名前をかきなぐると、脱兎だっとのようにくぐり戸の外へとび出した。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は、蟇口を片手でおさえると、脱兎だっとのように、博士の研究室を逃げだしたのであった。
ことのここに及べるまで、医学士の挙動脱兎だっとのごとく神速にしていささかかんなく、伯爵夫人の胸をくや、一同はもとよりかの医博士にいたるまで
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じきの妹なんざ、随分脱兎だっとのごとしだけれど、母様の前じゃほとんど処女だね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言って、脱兎だっとのように兵馬の寝床へもぐり込み、夜具をかぶってしまいました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何だかもじもじしていましたので、私には兄の気持が全部わかり、身を躍らしてその花束をひったくり脱兎だっとの如くいま来た道を駈け戻り喫茶店の扉かげに、ついと隠れて
兄たち (新字新仮名) / 太宰治(著)
碌さんは腹の痛いのも、足の豆も忘れて、脱兎だっといきおいで飛び出した。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と叫ぶと覆面の武士すなわち葉之助は踵を返し、脱兎だっとのように逃げ出した。とたんに「かっ」という気合が掛かり、傘の武士の右手から雪礫ゆきつぶてが繰り出された。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下屋敷の騒音を後にして、弦之丞は今、脱兎だっとのごとく船蔵の方へ走ってきた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
典膳は落ちている自分の刀を拾うと、生きているはじに耐えられないように、惨たるおもてを両手でおおって、脱兎だっとのごとくこの家の門から外へ駈け去った。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、脱兎だっとのがした感じだった。だが、かれはみずからなぐさめた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声が近づくと、丑之助は、痛む腰を忘れて、脱兎だっとみたいに跳ね起きた。そして、十歩も駈けたかと思うと、その時、山門からはいって来たべつな者に、正面からぶつかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三蔵は、捨てゼリフを投げ、脱兎だっとのごとく、草の波を蹴って、逃げ去った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう云うT刑事の笑い声が終るか終らないかに、頭を下げていた私は突然、脱兎だっとのように若い刑事の横をスリ抜けて、二階廊下の欄干てすりに片足をかけて飛び降りようとした。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、道から林の中へ、脱兎だっとのように、駈けこんだ人影をみとめて、
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少年は、ニッと笑うと、そのまま脱兎だっとの如く駈け出して行った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不意に掴まれたのと、その引く力が可なりに強かったのとで、吉五郎は思わず尻餅をついて仰向けに倒れると、その隙をみて忽ち立ちあがったお冬は、いわゆる脱兎だっとの勢いで駈け出した。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かように法王が始めは処女のごとく終りは脱兎だっとのごとき意気込みを示した所以ゆえんは、ロシア政府と条約を結び必ず英国政府に対し一致の働きをるという約束が成立ちましたのと
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
隠れていた社殿のを押し開き脱兎だっとのように走り出て
始め処女の如きはやがて脱兎だっとの終を示す謎とやいふべき。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから内野君が脱兎だっとの如く天井裏へ駈け込んだ鋭さ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
清原、脱兎だっとのごとく、やや左手奥へ駆け下りて行く。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
一髪のかんにこういう疑いをいだいた次郎は、目の前が暗くなるような怒りを感じて、相手の太刀たちの下を、脱兎だっとのごとく、くぐりぬけると、両手に堅く握った太刀を、奮然として、相手の胸に突き刺した。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
真っ赤になってうなずいた私を見ると、つぶらにみはったの中から大粒な涙が、ころがり出たと思った次の瞬間、身を翻してスパセニアはたちまち脱兎だっとのごとく、階下へ駈け降りていってしまいました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
不敵にほほえみながら、懐中に隠し持った匕首あいくち、逆手に握ると見るまに、寄ってきた一人の脇腹をえぐるが早いか、櫛まきお藤は脱兎だっとのごとく稲荷の境内に駈けこんで、ほこらをたてに白い腕を振りかぶった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
処女は脱兎だっとになった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
返り血をあびた脱兎だっと
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のぞいてみると、意外! 脱兎だっとのごとく消えてなくなったはずのあの町人が、いつのまにかかいがいしいわらじ姿につくり変えて、身ごしらえもものものしいうえに、こしゃくな殺気をその両眼にたたえながら、じっと中のけはいをうかがっているのです。
茫然ぼうぜんと突っ立っている僕のそばを、何処どこに居たのかミチ子が脱兎だっとの如く飛び出して、螺旋階段を軽業のように飛び上って行ったが、ッという間にまた上から飛び降りて来たのであるが、どうしたものか、まるで音がしなかった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
迷亭もここに至って少し蹰躇ちゅうちょていであったが、たちまち脱兎だっとの勢を以て、口を箸の方へ持って行ったなと思うもなく、つるつるちゅうと音がして咽喉笛のどぶえが一二度上下じょうげへ無理に動いたら箸の先の蕎麦は消えてなくなっておった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夕食の少しまえに、私はすぐ近くの四十九聯隊の練兵場へ散歩に出て、二、三の犬が私のあとについてきて、いまにもかかとをがぶりとやられはせぬかと生きた気もせず、けれども毎度のことであり、観念して無心平生を装い、ぱっと脱兎だっとのごとく逃げたい衝動を懸命に抑え、抑え、ぶらりぶらり歩いた。
その時、木の間隠れの彼方かなたからチラチラと低く振りかざして来る提灯ちょうちんの光が、点々と七ツ八ツ見えて来た——人声、跫音、みる間にここへ近づいて来たので、すわ福知山の家中が助太刀に来たと見た一同は、どッと崩れ立って林の奥へまぎれ込んだので、大月玄蕃もすきを狙って脱兎だっとの如く逃げはずしてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう思うと、彼は脱兎だっとのように熔融炉の鉄梯子を、かけ上ったのだ。友人の一人が助けようとして、後から上ろうとすると、そこへ旦那どのが、飛び出して、彼をつきとばした。そして、旦那どのは、うらみ重なる男のあとにつづいて梯子を上って行ったのだ。これを見ていた人々は喝采かっさいした。それもそうだろう。いやたった一人を除いてはネ。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)