だね)” の例文
さてあのおしとやかなふうをした歌い雌犬めすいぬはドルス夫人ふじんです。あの子はイギリスだねで、名前はあの子のやさしい気だてにちなんだものだ。
が、間が悪い時には悪いもので、邸がまだ半分も出来上らない昨今、身代しんだいはまたバアクシヤアだねの豚のやうに留め度もなくふとり出して来た。
警察だねの記事を仕舞しまって帰りかけようとしている吾輩の処へ、眼をショボショボさせながら山羊髯編輯長がスリ寄って来た。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
額のあたり少し禿げ、両鬢りょうびん霜ようやくしげからんとす。体量は二十二貫、アラビアだね逸物いちもつも将軍の座下に汗すという。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
発戸ほっとは風儀の悪い村と近所から言われている。埼玉新報の三面だねにもきっとこの村のことが毎月一つや二つは出る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あなたは、甲斐源氏かいげんじの一つぶだね——世にもとうといでありながら、危地きちをおかしてお父上を求めにまいられた。孝道こうどう赤心せきしん、涙ぐましいほどでござる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨をはらんだ風の中に、竜騎兵の士官を乗せた、アラビアだね白馬しろうまが一頭、あへぎ喘ぎ走つて行つた。と思ふと銃声が五六発、続けさまに街道かいだう寂寞せきばくを破つた。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
無理に生木なまきをひきさいて、それがために又なにかの間違いでも出来て、結局は新聞の雑報だねになって、近所隣りへ来て大きい声で読売りでもされた日には
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
純粋外国だねだつてきつと俺達より勝れてるわけでは無い。「テリヤー」や「ターンスピツト」や「プードル」のやうな奴は何所が好いんだか俺達には解らぬ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「ところが、前科というほどの前科はないのです。こいつは僕が指紋を採った男で、よく覚えているのですが、変な奴ですよ。マア途方もない変りだねですね」
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ずそうです。それを毎日少しずつ使ったら少しずつこしらえてして行くと段々パンだねがなれて好くなります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わたくしは西洋だねの草花の流行に関して、それは自然主義文学の勃興、ついで婦人雑誌の流行、女優の輩出などと、ほぼ年代を同じくしていたように考えている。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
アメリカのパンだねなどに、たいして食欲を感じない五十雄君や百々子までが、いつの間にか、ひと旗の片棒をかついでいるかたちになっているのは、遺憾であった。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それはこの、力者ちからもち狐直きつねのあたひの四世の孫にあたる、大力女の、力くらべの話で、しかも、この狐の子孫の方が、一方の、まじりなし人間だねの力持ち女に負けた話なのである。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
くにも飛び廻るにも、この小さい連中が最も声高こわだかで最も活溌であるが、中にも目立って籠の数が多く、賑やかなのは、明るい黄いろな外国だねのカナリア共であった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「芸者に売れるからさ。此処は芸者の産地としては日本一だぜ。おきゃあせだねは名古屋コーチンと共にその名天下に鳴ると日本地理の教科書に載せても宜いくらいのもんさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夫婦としては餘り年が違ふと云ふこと、並びにお鳥がそこではおほハイカラに見えることが注意を引いて、たださへ新らしい話しだねを求めてゐる患者間に、おほ評判となつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
バケツだけは、ときどき裏までつれていかれるが、そのほかのなかまは、いつでもうちのなかでくらしている。わたしたちのなかまで新聞だね提供者ていきょうしゃは、市場がよいのバスケットだ。
貯金ちょきんだけをたのしみに、倹約けんやくにくらしているような人だから、人のいやがるこのふべんなみさきの村へきたのも、つきあいがなくてよいと、じぶんからの希望であったというかわだねだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
松前氏統治時代に於ける北海道のシヤモだねの類にして、邦人と雜居せしものを云ひしなるべく、從つて、右の堅穴式家屋は、到底蝦夷又は邦人と別種のものゝ遺物なりとは、認め難きなり。
僕の大学の理科にかわだね友江田ともえだ先生というのがある、と言えばみなさんのうちには、「ウン、あの統計狂の友江田さんか!」とうなずかれる方も少くあるまいと思うが、あの統計狂の一党に
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
余の郷里四国などにても東京だねの大根を植ゑる者がある。もし味の上からいへば土地固有の大根の方が甘味が多いのであるけれど東京大根は二倍大の大きさがあるから経済的なのであらう。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
市村座で『闇黒世界』という西洋だねの新狂言をやることになった。「本読ほんよみ」を聞くと、その中に、主人公の催眠術師が一人の男をその術にかけ、自由自在にそいつを飜弄するところがあった。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
帳場に坐つて居るおかみさんが、ぢろぢろ客だねを觀察しながら、不精つたらしく迎へるのをうしろにして、急な梯子段をあがると、右と左に一室づゝある座敷の往來に面した小さい方に通つた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「独逸だねじゃないかな。」と一人がいった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
幽霊——或は妖怪の書き方が変つて来ると同時に、その幽霊——或は妖怪えうくわいにも、いろいろ変りだねえて来る。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
明治の世の中に𤢖が出現したと云うすらも既に新聞だねであるに、ましれが人を殺したと云い、巡査と格闘したと云う。𤢖の牝が大石で頭を砕かれたと云う。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仰っしゃるにも、大義と国体です。権現さまの幾多のお子お孫たちのうちにも、たったひと方、とんでもないかわだねをおのこしになった——と申すしかございません
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西洋料理屋のはスープだねの肉だの客の残り肉をブラウンソース即ち先日お覚えになった黒ソースへ混ぜて塩胡椒で味をつけてパン粉へくるんでヘットで揚げるのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
読本は京伝きょうでん馬琴ばきんの諸作、人情本は春水しゅんすい金水きんすいの諸作の類で、書本は今う講釈だねである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然るに君、黒船以来毛唐の種が段々内地雑居を初めてから、人間様のなかでも眼色めいろの変つた奴が幅を利かしたが、俺達犬社会では毛唐だねらされてイヤモウ散三な目に遇つた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
御苑の植込に所嫌はず西洋だねの苜蓿が一面にへ繁つて、女子供が皇宮警手くわうきゆうけいしゆの眼に見つからないやうに、そのなかに蹲踞しやがんで珍らしい四つ葉を捜してゐるのを見掛けるだらう。
「あれで、犬といふ奴は中々役に立ちましてな、あゝいふところに参るには、護身のためにも必要で御座います——それに、馴れると可愛いもんでしてな。家内などでも伴れてあるくと、好い護衛になりますのです……。え? たねですか? ドイツだねです」
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
メリケン粉の半分入れて拵えたのです。本式のはパンだねのイーストがないと出来ませんから面倒です
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その以前に、前の玉日の前とのあいだにげた一つぶだね範意はんいは、京都で、父の顔を知らずに亡くなってしまったけれど——とにかく彼は今、一個の家庭の父としても幸福であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本で行われるのは多く英国風で先ずパンだね即ちイーストという物が第一の材料です。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
パンを焼くには第一にイースト即ちパンだねといってこうじのようなものがります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
麺麭種ぱんだね製法せいほう 冬 第三百九 パンだね
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)